はじめに
前回は、物理設計において考えなくてはいけない内容のうち、「電源」について考えました。今回は「空調」や「耐加重」の基本、そのほかにも検討しておいた方が良いと思われる内容について、考えていきたいと思います。
空調を検討する
電源の検討と同様、「空調」の検討についても重要となります。最近は高性能な機器が多く登場している代わりに、各機器は大量の熱を発生する場合があります。各機器の発熱量はメーカーが提供しているスペックを確認し、設置予定箇所の空調設備で対応可能かを確認しておく必要があります。
余談ですが、ラック内のケーブルの長さ(LANケーブル、電源ケーブル)を短くし、必要な長さだけで構成すると、通気性が良くなり、あるデーターセンターでは大幅にコストダウンできたという話もあります。そのように機器の設置だけでなく、ケーブルの配置次第では通気性を良くすることも可能となります。
最近では、エコの観点からグリーンITという言葉も一般化してきましたが、日本フォームサービス株式会社では、図1のグリーンITラックのようなものも販売されています。このラックは、床下空調を上手に利用して、サーバーやネットワーク機器などから発生する熱を冷やし、効率的にラック外に排出する方法を用いています。
耐加重を検討する
電源や空調以外にも、床、ラックなどそれぞれの「耐加重」を考える必要があります。耐加重とは、その床やラックがどのくらいまでの重さ・負荷に耐えられるかを示す値です。
床の耐加重については、よく家を借りたり購入したりする時、ピアノの設置可能場所などを決定する際に話題にのぼります。ピアノの設置が難しい場所に設置してしまうと床が抜ける、といった話もあります。
床の耐加重は、同じフロアでも支柱場所やラックの配置によって異なる場合があります。また、ラックやラックに設置する機器、ラックに設置する際の機器の重さ、人間の体重、極論機器を運ぶための台車なども意識するようにしましょう。
ラックの耐加重については、ラックメーカーが提供しているスペックを確認します。棚板を利用する場合には、棚板にも耐加重が取り決められているので、確認してください。
また、ラックの耐加重自体は、あくまで4つの支柱に対して重さがかかった場合と考えてください。設置するにあたって、長いLANケーブルや多くのLANケーブル、4点止めになっていない機器(ネットワーク機器など)は、ラックの耐加重まで設置できるとは考えないようにしましょう。鉄はあまりにも負荷がかかりすぎると折れることもあるため、注意が必要です。
その他の注意点
その他の注意点としては、普段は見えないかもしれませんが、床の中にあるLAN配線と電気の配線は干渉しないように注意をして業者に配線してもらう必要があります。もし、これらが干渉すると、ネットワークの通信が遅い、不安定などということでなく、既存のシステムに影響を与えてしまうこともありえるため、注意しましょう。
また、ラックを設置するにあたっては、作業をするスペースの確保にも注意を払います。ラックはさまざまなサイズがありますが、最近のサーバ、ストレージやテープライブラリといった奥行きの長い機器は、1メートルラックでないと設置できないものがあります。さらに、ラックにはネットワークラックとサーバーラックなどもあるため、選定には注意が必要です。
最後に、大体のフリーアクセス(二重床)は50センチサイズのものが多く、90センチラックにしてしまうとフリーアクセスを一部加工する必要が出てきてしまい、将来的に現状復帰をして返す場合には費用が高くなる可能性があります。そのため、1メートルラックを導入する場合もあります。
また、データーセンターへ搬入などを行う場合は、トラックから直接おろすことができるのか、データーセンターの搬入口、エレベータの高さなども確認をしておいた方が良いでしょう。他システムの機器搬入時期と重なって、エレベータがなかなか利用できないといったこともあるので、データーセンターの管理者に確認しておく必要もあります。
まとめ
空調を適温に保つことや、耐加重をきちんと考えることは安全にシステムを設置し、構築、運用して行くうえで大切です。1つ間違えると大切なハードウェアを壊したり、運用中に突然システムをダウンさせたりといったこともあり得るため、手を抜かずにきちんと検討することが必要です。