はじめに
SEXYHOOKは、関数やAPIの挙動を一時的に書き換え、テスト用の接合部を強引に作成するライブラリです。
本稿では、SEXYHOOKがいかにして関数、APIフックを行っているかを説明します。SEXYHOOKの使い方については、SEXYHOOKで始めるテスト とある関数の接合部(1)をご覧ください。
対象読者
- C++、アセンブラを利用している開発者(ハカー)。
言語仕様の限界ぎりぎり? を説明しているので初心者は読まないほうがいいと思います。
必要な環境
- Windows
- Linux
Microsoft Visual C++ 6/2003/2005/2008
GCC 4.x(推奨) / 3.x
現状では32bitバージョンのみのサポートになります。SEXYHOOKはデバッグビルドのみで利用できます。
- gcc 4.x系では問題なく動作します(動作確認 4.3.2/Debian Lenny)。
- gcc 3.x系では一部警告が表示されます。動作は可能です(動作確認:3.2.3/CentOS3)。
- gcc 2.x系では動作しません。
SEXYHOOK本体
ご自由にご利用ください。
コンパイルオプションの注意
Microsoft Visual C++ 6~2003
このバージョンには、LINEの展開バグがあるため、デバッグ情報に標準のエディットコンティニュ(/ZI)オプションが利用できません。
エディットコンティニュ(/ZI)オプションの代わりにプログラムデータベースを使用(/Zi)オプションを指定してください。
詳しくは、マイクロソフトのナレッジをご覧ください。
gcc
デバッグビルド、最適化なしで実行してください。
-g -O0
ソースコードはSJISで記述しているため、--input-charset=cp932オプションを推奨します。
マクロ展開
SEXYHOOKでは、まずマクロを利用しユーザーが書いた構文をcppのインラインクラスに置換します。
//一時的にtime 関数をフックする。
SEXYHOOK_FUNC_HOOK_1_BEGIN(time_t,SEXYHOOK_CDECL,time,time_t * a)
{
//time が呼ばれたらここがコールされる。
//昔の時刻を返すようにする。
return 915116400;//1999-01-01 00:00:00
}
SEXYHOOK_FUNC_END();
↓
//プリプロセッサによりこのように展開されます。
class SEXYHOOKFunc72 : public SEXYHOOKFuncBase
{
public:
SEXYHOOKFunc72()
{
}
void Hook(void* inVCallThisPointer)
{
FunctionHookFunction(
SEXYHOOK_DARKCAST((gccCastHackDef)&time),
SEXYHOOK_DARKCAST( &SEXYHOOKFunc72::HookFunction),
inVCallThisPointer);
}
virtual ~SEXYHOOKFunc72()
{
FunctionUnHookFunction();
}
typedef time_t (__cdecl * HookDef)(time_t * a);
static time_t __cdecl HookFunction(time_t * a)
{
return 915116400;
}
typedef HookDef gccCastHackDef;
}
objectFUNCHook76;
objectFUNCHook76.Hook(0);;
自分で確認されたい方は、コンパイラに/E(マクロを展開したものを画面に表示)オプションでコンパイルしてください。
膨大な行数が出力されます。
さきほどのソースに、コメントをつけながら解説していきます。
//クラスに置換されます。
//72 は __LINE__ で置換された行番号です。
//これにより、複数回定義されてもぶつからない名前を作っています。
class SEXYHOOKFunc72 : public SEXYHOOKFuncBase //実際のフックは下位ライブラリが行います。
{
//SEXYHOOKFuncBaseは、クラスと関数のフックを担当します。
//APIフックは別の SEXYHOOKAPIBaseが行います。
public:
SEXYHOOKFunc72()
{
}
//フックを行う関数です。
//引数のinVCallThisPointer は、仮想関数をフックする時に渡されるクラスインスタンスです。
void Hook(void* inVCallThisPointer)
{
FunctionHookFunction(
//フックされる関数のポインタ
SEXYHOOK_DARKCAST((gccCastHackDef)&time),
//フックした後制御を飛ばす関数
SEXYHOOK_DARKCAST( &SEXYHOOKFunc72::HookFunction),
inVCallThisPointer);
//SEXYHOOK_DARKCAST は、どんな型でも void* にキャストする不思議な関数です。
//後で説明します。
}
//デストラクタでフックを元に戻します。
virtual ~SEXYHOOKFunc72()
{
FunctionUnHookFunction();
}
//フック数関数の型です。
typedef time_t (__cdecl * HookDef)(time_t * a);
//フックルーチンです。フックしたときに飛んでくる関数です。
//呼出規約をフックする関数とまったく同じにします。
//そうすることで ret したときのスタックのずれを考える必要がなくなります。
static time_t __cdecl HookFunction(time_t * a)
{
//ここをユーザーが自由に記述できます。
return 915116400;
}
//仮想関数のアドレスを取得するとき、gccの仕様?に対応するために定義しています。
//仮想関数のアドレス取得の時に説明します。
typedef HookDef gccCastHackDef;
}
//クラスインスタンスを作成します。
//フックを開始します。
objectFUNCHook76;
//0を渡しているのは、仮想関数でないからです。
//仮想関数であれば、クラスのインスタンスが渡されます。
objectFUNCHook76.Hook(0);;
