はじめに
Silverlightはバージョン2以降 .NET Frameworkの機能がサポートされ、単なるリッチなWebサイトを作成するためのものという認識から、業務アプリケーションを作成することができるプラットフォームとしての期待が高まっています。特に2009年11月に米国のロサンゼルスで行われたProfessional Developer Conference(PDC)で、Silverlightのバージョン4が発表になりましたが、多くの機能が追加されているなかで、業務アプリケーション開発向けの機能が多く含まれているのは注目に値するべきポイントです。
業務アプリケーションを開発する上で非常に重要となるのがデータの処理だというのは、異論はないかと思いますが、Silverlightで実装するためには多少の決まりごとを認識することが必要です。Silverlightにおける、この性格を紹介するために、マイクロソフトでは、簡単なサンプルのシステムとソースコードをトピックに絞った作成手順と共に公開しています。
本連載では、Silverlightを使用したデータの取得、更新、バインディングなどを、前述したサンプルシステムを用いて紹介していきたいと思います。加えてバージョン4の新機能のうち、上記の処理に必要な部分も併せて紹介します。
対象となる読者
非常に基本的な部分に触れていく予定ですので、以下の方を対象と考えています。
- .NET Frameworkの仕組み、開発言語をある程度理解している方
- Silverlightアプリケーション開発をこれから始めたいと考えている方
サンプルシステムの紹介
前述したサンプルシステムを紹介します。ポイントは以下です。
- データ処理を伴うSilverlight 3アプリケーション
- Visual Studioのみで作成可能(Expression Blend未使用)
- 見た目の考慮は最小限
- Silverlightを用いた業務アプリケーションを構築する場合の典型例として提示(今回はWebショッピングサイト)
特に重要であるのは、見た目の考慮が最小限である点です。従来のこうしたサンプルは、あるいはリッチな見た目が、理解の障壁になっていたかもしれませんが、このサンプルは業務アプリケーションを構築するために必要最低限な処理に絞って構築してあります。
開発環境としては、以下を用意することが必要となります。
- Visual Studio 2008 Service Pack1
- Visual Studio 2008 SP1 用 Microsoft Silverlight 3 Tools
- Silverlight Toolkit
- Microsoft SQL Server 2008(Express以上のエディション)
こちらのサンプルシステムは、Visual Studio 2008とSilverlight 3がターゲットとなっています。現在Visual Studio 2010とSilverlight4対応のサンプルも作成中ですが、基本的な考え方の変更はありませんので、今後も十分活用可能なサンプルシステムです。
サンプルアプリケーションの公開サイト
ソースコードと実行ファイルがダウンロード可能になっており、さらに次のような手順も公開されています。
- データモデル、データサービスの作成
- データ取得
- ToolKitの利用
- データ表示(コンバーター)
- 画面のナビゲート
- データバインド
- 入力データの検証
- ADO.NET Data ServicesとSilverlightによるエラーハンドリング
- 関連のある複数エンティティからのデータ取得
- オンデマンドな認証処理の実装
- データ処理(追加更新)
- EDMを利用したWCFサービス呼び出しによるストアドプロシージャ実行とトランザクションの実装
ただし、上記の手順の中に示している解説は最低限の物に過ぎません。従って本連載は、上記の手順の中から特徴的なポイントをピックアップして解説する形をとっていきます。