Webアプリケーション関連技術はどう変化し、どこへ向かっているのか? 2006年のDevelopers Summitで講演に立ったグリー株式会社 藤本真樹 氏は、前回出演からの5年間で何が変わり、そしてこれから新たにどんな変化が起こってきそうかを予測。さらに自分が役員を務めるGREEを具体例にとって、1つのWebアプリケーションを長期間にわたって継続する場合に発生する、技術面での問題点や課題について語った。
過去5年間で得た教訓は「常に 10倍、100倍、1,000倍を考え続けること」
まず藤本氏は、この5年間のWebアプリケーション関連技術の変遷をふり返って、「5年前を見ると、LinuxやMySQL、Apache、言語ではPHPやRubyなどオープンソース系がいっせいに出てきたのがわかる。またサービスという側面からの移り変わりを見ると、ブログ期からソーシャル期、そしてリアルタイム期へと変わってきた。こうしてみると、当時の多くの技術要素は5年後の今も継続しているし、この間の技術トレンド自体が必ずしもテクノロジードリブンではないことがわかる。おそらくその背景には、インターネット接続数の増加で情報発信者数が増え、ユーザーとインターネットとの距離が縮まったことがある。そのことがサービスを変化させ、あわせてテクノロジーも変化してきたのだ」。
そうした具体例に、藤本氏はGREEのビジネスとサービスの変化を挙げる。2006年と2011年の比較を規模で見ると、ユーザー数は100倍、ページビューは1,000倍、バーチャルホスト数は10倍、そしてサーバ台数は100倍にそれぞれ増えている。この急激な規模の成長の中で、スケーラビリティ確保への多大なコストやソフトウェアのカスタマイズ、管理手法の限界など、さまざまな課題が発生してきたと藤本氏は明かす。
「これらへの対応を通じて、私たちはいくつかの教訓を得た。それは垂直方向への思考~つまり常に 10倍、100倍、1,000倍を考え続けることだ。具体的には例えば『このディレクトリレイアウトでサービスが100個増えても大丈夫か?』『このフレームワークで1,000人のエンジニアがコーディング可能か?』『このtable schemaとsqlで10倍のトラフィックが出ても耐えられるか?』といったスケーラビリティや可用性の問い。『またそうなったときに、この言語に依存し続けても安全か?』といったことがらまでを含む問いを、つねに自分たちに向けて繰り返し投げかけてきた」。
さらにインターネットの可能性が拡がる5年間に想像力を向けよう
加えて最近は、水平方向へも思いを馳せつつあると藤本氏は変化を語る。
「PCだけでなくフィーチャーフォンやスマートフォン、さらにそれ以外の端末の可能性を考えなくてはならない。またサービス展開において日本だけでなくグローバルでの発想もますます重要になってくると考えている」。
それらを踏まえて藤本氏は、「2016年に想いを馳せてみよう。きっと多くの技術は継続しているし、さらなるインターネットユーザーの増加、ハードウェア性能や回線速度の飛躍的な向上といった状況変化が引き起こす新たな動きを想像しなくてはならない」と今後の展望を語る。例えばモバイルデバイスへのサービス集約や、ユーザーが発信するデータの増大、またモバイルデバイスの常時接続性が生む新しいサービスといったことが考えられる。一方でサーバ側のアーキテクチャの多様化や、アプリケーションの複雑化の進行などの課題にも、開発者は取り組んでいかなくてはならないだろう。
「だが、いずれにせよこれからの5年間は、私たちがインターネットでできることがさらに増え続ける5年間に違いない。どんなテクノロジーを使い、また作って、どんな人たちに向けたサービスを創造していくか。互いに研鑽し合いながら、また5年後にお会いしよう」と藤本氏は呼びかけてセッションを締めくくった。
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