Java EE 6やOSGiをはじめとした新APIを提供する「WAS V8」
――ところで、Javaの開発者が頭を悩ませる問題の1つに、モジュールやライブラリのバージョン問題があります。例えば、アプリケーションサーバーで利用するライブラリとアプリケーションが使うライブラリのバージョンがぶつかってしまうような問題がよく起こると聞きます。
田中氏 そうした問題を解決するポテンシャルを秘めているのが、「OSGi」という技術です。OSGiは「OSGi Alliance」という非営利団体が策定する、Javaモジュールの管理技術ですが、Java開発者にとってこの技術を採用する最大のメリットは、アプリケーション全体の停止やバージョンアップを行うことなく、モジュールを動的に追加できる点にあります。Java VMとモジュール(バンドル)との間に「OSGiフレームワーク」という層を設けることにより、これを可能にしています。
――実際にOSGiが製品に採用されている例はあるのでしょうか?
田中氏 Java開発者の皆さんが普段使われているEclipseのプラグイン機能も、バージョン3以降ではOSGiの仕組みが使われています。また、IBMが提供するエンタープライズシステム向けアプリケーションサーバー製品「WebSphere Application Server」(以下、WAS)にも、OSGiの技術が実装されています。
もともとWAS自身のアップデートの仕組みはOSGiの仕組みに基づいていたのですが、2011年6月から提供開始される最新バージョンの「WAS V8」からは、その上で動作するアプリケーションでもOSGiが使えるようになりました。
――WAS V8では、先ほど説明していただいたJava EE 6の新機能も利用できるのでしょうか?
田中氏 WAS V8はJava EE 6に対応していますから、先ほど挙げたようなJava EE 6のさまざまな機能はすべて使うことができます。また先ほど述べたように、OSGiもサポートしています。さらにはこれら以外にも、Java開発者にとっては魅力的なAPIが数多く追加されています。
例えば、オンライン処理だけではなくバッチ処理もJavaで記述・実行できる「Javaバッチ」やSOAで使用されるコンポーネント技術「サービスコンポーネント・アーキテクチャ(SCA)プログラミングモデル」、XMLデータの処理コードを容易に実装できる「XMLプログラミングモデル」などがそれです。
今回のインタビューに対応いただいた田中氏は、2011年7月14日(木)に東京都内で開催されるWebSphereブランドの年次カンファレンス「IMPACT 2011」でも、「WebSphere Application Server V8.0変わるところ・変わらないところ」と題した講演を予定しています。詳しくは公式サイトをご覧下さい。
<WebSphere Application Server V8.0 アナウンスメント・ワークショップ>
また、8月4日(木)と5日(金)の2日間、WAS V8.0の新機能を紹介する技術者向けワークショップの開催を予定しています。1日目は、新機能の概要とWASインフラ構成を、2日目は、Java EE 6仕様の更新部分や、WAS V8.0のアプリケーション関連の新機能など、アプリケーション開発に関する内容を紹介する予定です。