新リリース「Adobe AIR 3」の特徴
ここまで紹介したすべてのFlash事例は、3日にリリースされた「Adobe AIR 3」で動作していると述べた後、中でも特徴的な新機能が2つ紹介された。
1つ目は「Captive Runtime」。これはAIRランタイムとアプリケーションを1つにまとめて配信する機能だ。既にiOS向けで実装されているが、今回このフィードバックを得て、iOS以外でも利用できるようになった。ランタイムのバージョンの差異を検証する負荷が減るといった開発面でのメリットのほか、エンドユーザーにとっては1回のシンプルなインストールのみで完結するといった利点もある。
2つ目は「Native Extension」。ネイティブAPIを使って、AIRアプリを独自拡張できる機能だ。ポータビリティが犠牲になるものの、Adobeによる標準採用を待つことなく新しいセンサーに対応したアプリを開発したり、既存のソースコード資産を活用したりと、やれることの幅が広がった。
また、統合開発環境の「Flash Builder」にも触れ、最新版のver 4.5ではモバイル、特にスマフォ対応にフォーカスしたものだったが、年内リリースが予定されているver 4.6では、Flash Player 11/Adobe AIR 3対応のほか、タブレットPCのサポートが予定されていることを説明した。
UX実装のカギは「ツール」「フレームワーク」「ブラウザ」
続けて、Adobe Systems社 製品開発インタラクティブデザイン担当副社長のPaul Gubbay氏が、開発者からよく聞く声として「Web制作の技術・フレームワークがあまりに多くて、どれから始めてよいかわからない」という意見を掲げた。これのヒントとしてGubbay氏は「ツール」「フレームワーク」「ブラウザ」の3つを挙げた。Adobeでは、それらにどう取り組んでいるのだろうか。
まず、代表的な「ツール」として、昨年の基調講演で発表された「Adobe Edge」が紹介された。ウェブ標準技術ベースのアニメーションやインタラクションを効率よく作成するためのHTML5向けオーサリングツールで、コミュニティのフィードバックを取り込むスタイルで開発が進められている。Preview 1はリリース初日で5万ダウンロードを記録し、先日Preview 3がリリースされたばかりの現在は、累計ダウンロード数が15万以上に及ぶ人気製品となっている。
「フレームワーク」には、昨年の基調講演で開発協力が発表された「jQuery」を取り上げた。既にjQuery Mobile 1.0がリリースされ、Dreamweaver CS 5.5と統合されていることは、ツールとフレームワークが一緒にうまく使われているいい例だとの見解を示した。配色管理ツール「Adobe Kuler」と連携して、簡単にカラーテーマを設定可能にする「ThemeRoller for jQuery Mobile」のプレビューも行われた。
ウェブで何ができるかという限界を決めるのは、ブラウザの実装による部分も大きい。AdobeからW3Cに、近頃提案を行った2つの事例として「CSS Exclusions」(テキストを自由な形状で回り込ませる機能)と「CSS Regions」(複数のテキストボックスをつなぎ、いわゆるテキストの流し込みを行う機能)を紹介した。Chromiumの最新バージョンで使えるほか、マイクロソフトもIEでサポートする予定であることを補足した。
また、よくある疑問として「新しい仕様はいつから使えるようになるのか」がある。それに答える人物として、Google社のウェブプラットフォームディレクター Ian Ellison-Tayler氏が招聘された。Tayler氏はブラウザへの実装速度について、「HTML5のさまざまな実装が基盤を作ってくれたので、今後は従来よりも早い速度で普及が進むだろう。CSS Regionsは実装が速く進んだ典型的な例と言える」と述べた。
ここでGubbay氏は、Flashがウェブの先進性を常にリードしてきた歴史を振り返り、Flashを単純にブラウザの標準実装に戻してしまうというような短絡的な考えはどうなのだろうか、という問いかけをTayler氏に提起。密かに開発を進めていた「CSS Shader」(Pixcel Blenderのブラウザ版)によるいくつかのデモをサプライズ的にプレゼンし、「すばらしい、ゴージャス」というコメントを引き出していた。