エバンジェリスト 長沢智治氏

ソフトウエア開発を巡る関心事は『ビジネス価値』へ
開発チームの共同作業をサポートするものとして、多くのプロジェクトで使われている「Team Foundation Server & Service(TFS)」。長沢氏は「すでにメジャーバージョンも4つめで十分に成熟し、価格が下がって、クラウド版も出たためにさまざまなプロジェクトで使われ、成果を上げている」と胸を張る。
そんなTFSが活用される背景も含め、長沢氏は「『今』を表すものとして『Actionable(実行力のある)』というメッセージが色濃く出ている」と語る。『Actionable』なフィードバックを受け取って、ビジネス価値を高めるソフトウエアをどう企画し、開発し、運営するのか。ALMやアジャイルのリーダーが参加するALM Summitでも、今はビジネス価値をどうするか、顧客の開発をどうするかという議論がなされているという。
長沢氏は「とはいえ、根幹にあるのはソフトウエアの開発であり、我々日本人は改めて『ビジネス価値に対して何ができるのか』を見つめなおす必要がある」と訴えた。
クリエイティブな仕事に注力できる環境を提供するTFS
それでは『ビジネス価値を提供し続ける』とはどのようなことか。長沢氏は顧客との関係性の在り方について『過去』と『現在』をイラストイメージで紹介し、「以前は既存の確立したビジネスにITを役立てるという発想で、ITの貢献する割合は高くはなかった。しかし、現在はITとビジネスが融合しており、必要される価値をタイムリーに提供すべき存在になっている」と解説する。それを実現するのが『Actionable』な開発であり、そのために顧客、そしてチーム内のエンゲージメントが不可欠だというわけだ。
『Actionable』な開発環境、そこではアイディアがスピーディに実現される。それを支えるのは綿密なフィードバックの仕組みだ。フィードバックに迅速かつ的確に対応できる環境では、すべての成果物が透明性とトレーサビリティを担保している必要がある。しかし多くの場合、関係性が複雑で表現する手段も異なるために実現は難しく、各自が情報収集に明け暮れる状況がずっと続いていた。
長沢氏は「かつては『仕方ないこと』と諦められていたが、TFSなら、人や情報の流れや関係を統合し、どの起点からも遡って関連性を見ることができる。つまり、考えるのではなく、直感的に関係性が分かるようになる」と語る。TFSなら、各自が使い慣れた“いつものやり方”で関係性を把握し、部門を越えた連携が可能になり、LinuxやMac OS、JavaやPHPなど異なる開発基盤でも情報共有できるという。バージョン管理、バックログ管理、バグトラッキング、テスト管理、自動ビルドといった各要件も容易かつ的確に実現できるという。
『Actionable』な開発環境を実現するTFSの透明性とトレーサビリティ
長沢氏はTFSのレポートの一つを例に出し、機能単位で作業がどれくらい進んでいるのか、テストの状態はどうかといった情報が視覚的に把握できることを紹介(図2)。また、1つのリソースから、タスクやその状況がどのようにつながっているかをグラフィカルに可視化する様子も紹介された。
ここで長沢氏はTFSのダッシュボードを開き、デモを行った。ダッシュボードでは「それぞれのタスクがどのくらいの時間を割り当てられているのか」「顧客からのFBが何件返ってきているのか」「テストがどのくらい完了しているのか」といった情報が視覚的に表示される。優先順位などもドラッグアンドドロップで変更ができ、過去の情報から作業工程を変えた場合のシミュレーションもできるという。
また、あるソースからさかのぼると、それが行われたタスク、そして親に当たる要求仕様とソースコードの変更項目が分かり、さらに誰がいつどのタスクを行ったのかなどが連なって見えてくる。なお、こうした情報は自動的に取得されており、開発者は開発環境に入った後は、ただ普通に作業を実行し、変更したソースコードをコミットするだけでよい。進捗情報の登録などの別作業は不要だという。このようにあらゆる情報を辿れるような環境が構築できると、前出のようなレポートも自動的に取得することができる。
こうした開発環境を実現するTFSの最新版は、それぞれインストール版とクラウド版が紹介された。いずれも5ユーザーまでは無償利用が可能とのこと。また、TFS 2008ではアップデート単位が10週だったのが、TFS 2012では3週となっていることが示された。そして、これまでのデリバリーサイクルも2年だったところ、2012では四半期1回の3ヶ月に短縮された。つまり、TFSがTFSを活用して継続的な価値提供サイクルを実現している、という証明でもあるわけだ。
長沢氏は、ここで再びTFSによる現場での開発基盤のゼロからの立ち上げから、計画、タスク実行、コードのコミット、CIそして手動テストまでの流れをデモで紹介し、その扱いやすさを訴求した。特にユニークなのは「顧客が使うツール」で、ビデオキャプチャや音声を拾い、ダッシュボードへと転送して共有することができる。そのため顧客がどのような状態だったかのFBが容易になり、的確な対応が可能になるというわけである。
なお、分散開発にさらに対応するための手段として、そしてデプロイメントのプロトコルとしても増えてきていることから、Gitにも対応しはじめた。また、1つのモデルとして、GitとTFSの中央中枢型のソース管理を併用するということも可能になるという。
そうした対応も含め、TFSをベースにした開発基盤はますます広がっているという。また、System Centerと連動することで DevOpsシナリオをシームレスに提供する。例えばSystem Centerでの運用監視時に問題が起きた時にTFSへとつながり、迅速に対処できるようになるという。開発と運用が程よい距離感でビジネス価値にベストをつくることができる環境を提供する。
最後に長沢氏は「これからの開発に不可欠な『ビジネスを交えた開発環境』の基盤としてTFSは最適だと思う。ブラウザ版は特に手軽に利用ができるので、ぜひ使ってみてほしい。楽になり、きっと本業に注力できるはず」とアピールした。
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