視覚情報の共有という技術
物事を伝達する場合、伝える内容が多ければ多いだけ、文字や言葉で伝えることは困難になってきます。特に、日本語は発音や意味を取り違えるケースも多く、加えて音声による伝達では、言い間違いや聞き間違いも起こり得るからです。
私が東日本大震災から得られた教訓の一つに、大規模災害での情報収集や伝達には、音声や文字では限界があると痛感したことが挙げられます。これは、ラジオやTVでは発声や表示する情報量に限界があることを意味します。臨時災害放送局により、地域ごとに必要とされるローカル情報の収集配信という素晴らしい取り組みも行われていました。しかし、現地の被災状況を大量に一度で共有する手段として、デジタル写真によるネットワーク共有が有効であったことを記憶しています。
今回私が震災に影響を残す場所を訪れる際、記録として数多くの全天周写真を共有・保存を行っています。
理由としては余震で移動も困難な状況において、インターネットから広く参照可能な状態で現地の状況を示すデータを共有することで、これから現地へ赴く可能性がある災害復旧の作業担当者への支援と、災害を正確な記録として残しておくという2つの側面がありました。
しかし、状況はそう単純ではなく、撮影された被災地の情報が独り歩きすることで、より深刻な風評被害へと繋がる可能性もありました。そのため、いくつか今年まで公開を控えていた全天周データもあります(図15)。
私も多々悩むところではりますが、災害情報の共有にはすべてにおいて正解はなく、都度ごとにその担当者が行動で示していかなければならないという点を痛切に感じるばかりです。
しかし、当時の全天周データを再検証することで得られた知見も多くあります。災害復旧に向かう作業担当者は業種ごとに見るべき箇所が異なっており、それら要求を全天周写真は満たすことができるという点です。土木関連の災害復旧であれば地面や建物を、通信関連であれば電柱や土管を見るというようにです。
今回の全天周写真の撮影にはMicrosoft社のPhotosynthとOccipital社の360 PanoramaをiPhoneアプリケーションとして利用しましたが、複数枚の写真を合成してできる全天周写真はデータ量自体も多く、容易に見たい視点を拡大縮小できるという利点もありました(図16)。また、Google社より今年からAndroid向けにPhoto Sphereがリリースされ、さらにRICOH社より全天周撮影専用のカメラであるTHETAも発売されました。全天周を撮影・共有する環境は十分に整っていきていると感じています。
今回までは、ITを使った東日本大震災の全容把握と、災害復旧に向けた情報共有の実例を見てきました。
次回は私が現在までに体験したさまざまな災害と、ITを使った情報支援のあらましについて、順番に情報共有を行っていく予定です。





