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イベントレポート

【CEDEC2014】操作はどうする? 酔わないためには? ――先駆者たちが語る「Oculus Rift」のVRゲーム開発で注意すべきポイント

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 先週末に行われた東京ゲームショウ2014でも大きな盛り上がりを見せた「Oculus Rift」。眼前に初音ミクが現れたり、家にいながらスキージャンプができたりといったVR(バーチャルリアリティ)を活用したゲーム体験は、今後のゲームのあり方を大きく変えることとなるだろう。しかし、Oculus Riftのゲーム開発は、今までのゲームにはない様々な注意点が存在する。9月初旬に開催された、コンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス「CEDEC 2014」の、先駆者達によるパネルディスカッションの模様から、Oculus Riftゲーム開発の知見をお届けする。

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登壇者一覧

  • 渡邉成紀氏(SEGA 第一研究開発本部 プログラマ)
  • 石井勇一氏(Seeding Softech 代表取締役 社長)
  • 伊藤周氏(ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン 日本リージョン エバンジェリスト)
  • 近藤義仁氏(XVI Inc. 代表取締役 社長)
  • 井口健治氏(Oculus Festival in Japan エンジニア)
  • 桜花一門氏(Ocufes代表)

なぜ今、Oculus Riftがアツイのか

 Oculus Riftは、Oculus VR社が開発するバーチャルリアリティに特化したヘッドマウントディスプレイ。2013年4月に開発者向けデバイスの第1弾(Development Kit 1、以下DK1)がリリースされ、2014年に発売された、開発者向けデバイスの第2弾(以下DK2)は、DK1と比較して、画面解像度の向上やヘッドトラッキングのセンサーが追加されるなど、大きな進化を遂げている。9月19日、20日に開催されたOculus VR社主催の開発者向けイベント「Oculus Connect」では、市販前プロトタイプモデル「Crescent Bay」も発表され、Oculus Riftゲーム開発の需要も、今後高まっていくことが予想される。2014年3月には、Oculus VR社がFacebookに買収されたことも話題になった。

翔泳社で刊行予定のOculus Rift解説書、担当編集 小川がOculus Rift DK2をつけてみたところ。
翔泳社で刊行予定の、Oculus Rift解説書の担当編集・小川がOculus Rift DK2をつけてみたところ
DK1からDK2の主な変更点
解像度 1280x800(片目640x800)→1920x1080(片目960x1080、
ハイビジョンに対応)
パネル方式 液晶ディスプレイ→有機EL
リフレッシュレート 60Hz→75Hz
ヘッドトラッキング 外部カメラと赤外線LEDの追加
重量 330g→440g

 一方、今後の普及が期待されているとはいえ、VRゲーム開発には課題が多く残されているのが現状だ。例えば、VRコンテンツを長時間体験した際には、いわゆる「VR酔い」という現象が起こったり、ヘッドマウントディスプレイを被ることで視界がふさがれるため、コントローラーの操作や、手助けなしでの体験が難しかったりする。

 本セッションは「Oculus Panel Discussion~Oculus Riftを用いたゲーム制作~」と題し、今までのゲーム開発と異なる注意点やデバイスの特性を活かすための工夫について、Oculus RiftやVRゲーム開発を多数経験してきた先駆者たちが議論した。

VRで「酔わない」ためにはどうすればいい?

 近年のゲームの高画質化には目を見張るものがあるが、従来のゲーム開発において、1秒間に処理できるフレーム数である「フレームレート(単位:fps)」や、ディスプレイが1秒間あたりどれだけリフレッシュするかという「リフレッシュレート(単位:Hz)」は、画面の滑らかさの指標となる。VRゲームの場合もフレームレートが重要であるが、フレームレートが下がると画面がガクガクして見え、これが没入感の阻害やVR酔いを引き起こすといった、ユーザー体験にクリティカルな影響を及ぼすことがある。

 最初のパートでは、VRゲームを制作する上で特に注意すべき点について「ゲームデザイン」の観点から議論された。

考慮すべきゲームデザイン・ポリシー
考慮すべきゲームデザイン・ポリシー

 Oculus RiftのVRゲームでは、フレームレートをどうすればいいのか。桜花氏は「75fps以上は死守」と言う。リフレッシュレートがDK1では最大60Hz、DK2で最大75Hzとなっており、DK2で新たに追加された、残像感を抑えるモードを使うために、極力75fpsで開発すべきとのことだった。「製品版の第1弾である次のモデルでは、リフレッシュレートの値が更に大きくなる可能性もある。フレームレートが可変であることを前提に、ゲームエンジンを組んでおいた方がよい」と桜花氏。

 近藤氏は「VR酔いを防ぐにはフレームレートのキープに尽きる」としたのち、VR酔いの原因は他の観点もあるという。「自分の体が動いていないのに、コントローラーの操作で視点だけが移動してしまうと、気持ち悪さを感じる」と言う。これを克服するための方法については、椅子に座って体験するコンテンツや、例えばジェットコースターのように、レールが見えるなど、進行方向が予測できるようなコンテンツがよいとのことだ。「自動車を運転する人が酔わないのに、助手席だと酔うことがあるが、これと同じことがOculus Riftでも起こっている」(近藤氏)。

渡邉成紀氏。CEDEC当日に体験会が行われた「Project Morpheus」も、
同じVRヘッドマウントディスプレイとして話題になりながらもセッションは進められた。
渡邉成紀氏。CEDEC当日に体験会が行われた「Project Morpheus」も、同じVRヘッドセットということで話題に上がりながらセッションは進められた。

 一般のゲームでは、ユーザーが操作不可能になるムービー(カットシーン)を挿入することがよくあるが、これも注意してカメラ演出しないと、没入感の阻害やVR酔いを引き起こしてしまう可能性がある。

 石井氏は「自分の視点、例えば左側を向いているのに急に映像だけ上に持っていかれると激しい酔いを感じる。プレイヤーの気持ちにあった演出にする必要がある」と言う。上下に揺れるのもご法度のようだ。しかし、歩行の演出は困難ではないとのこと。まっすぐ進み、自分が目的地に向かっているとはっきりわかっている場合は、そこまでに大きな酔いを感じないのだそうだ。重要なのは見せ方だ、と石井氏は説明した。

 VR酔いがなぜ引き起こされるかについて、人体の特性から、桜花氏は次のような説明を加えた。「人間が歩いている時には、視覚の移動だけでなく、胃の中の動き、耳の前庭で感じる加速度という3つで歩いていることを自覚する。Oculus Riftで視覚だけで歩いていると、感覚の衝突が起き、それがVR酔いになる。例えば、その場で足踏みするだけでも胃が動くので、酔いの軽減になる」(桜花氏)。

 没入感を向上させるためには、視覚以外にも音響デザインが重要となる。近藤氏は「立体音響は、ユーザーをナビゲーションするのに非常に有効。後ろから歩いてくる音を聞かせると、ユーザーが実際に後ろを振り向く」と言う。360度自由に見渡せるOculus Riftにおいて、ユーザーが意図しない方向を向くということがありうる。音でユーザーの視線をナビゲーションすることができるのだ。

 伊藤氏は「おすすめは、耳の中にマイクを仕込んで録音するバイノーラル録音。耳元でささやかれた音を録音して、Oculus Riftの音響に組み合わせると、かなりすごい。いい感じのエロスが出てくるんじゃないかと……(笑)」と言い、会場を沸かせた。

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この記事の著者

近藤 佑子(編集部)(コンドウ ユウコ)

株式会社翔泳社 CodeZine編集部 編集長、Developers Summit オーガナイザー。1986年岡山県生まれ。京都大学工学部建築学科、東京大学工学系研究科建築学専攻修士課程修了。フリーランスを経て2014年株式会社翔泳社に入社。ソフトウェア開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集・企画・運営に携わる。2018年、副編集長に就任。2017年より、ソフトウェア開発者向けカンファレンス「Developers...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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