開発環境はUnityが人気
最後のパートでは、Oculus RiftのVRゲーム開発経験者だからこそ言える、有効な開発手法や工夫、苦労している点について語られた。
開発環境は、パネリスト全員がUnityと答えた。Unreal Engineを使う場合もあるが、パッケージや情報の豊富さからUnityが好まれている。近藤氏は初期はネイティブで開発していたようだが、パフォーマンス面が多少劣ったとしてもやはり「Unityの方が圧倒的に楽」だと言う。
井口氏は、UnityのPro版でないとOculus Rift開発ができないという制約があり、今後のバージョンアップでフリー版でもOculus Rift開発ができるようにならないかと期待を寄せた。ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの伊藤氏は、今すぐ実現できるとは言えないが、調整中であると回答(注1)。井口氏によると、有志によって開発されたソフト、OVRAgentを使えば、速度は落ちるが、フリー版でもOculus Rift開発が可能になるとのこと。
Oculus Connectにおいて、フリー版のUnityでもOculus Rift用アプリケーションの開発が可能になったことが9月20日(現地時間)に発表された。
Oculus Rift DK2の登場で、さらなる高解像度や高いフレームレートの維持が要求されるようになったが、フレームレートをキープするためには高速化にも気を配る必要がある。高速化について何か工夫している点はあるのだろうか。
桜花氏は「過去にコンシューマーゲームのソフトを使った経験が生きており、見えないものは動的に消したり、LOD(Level of Detail、モデルの精度を切り替える技術)をよく使う」などの工夫を行っているという。
井口氏は、高速化のボトルネックになるのはCPUよりむしろGPUであるとする。しかし、GPUの能力を高くするため、SLI(Scalable Link Interface)などビデオカードを複数枚刺したものを使おうとすると、映像を送り出すタイミングに遅延が生じてしまうため、問題があるそうだ。「GPUを強化する場合には複数枚刺しではなくて、1枚で高性能なカードにした方がいい」と井口氏。
近藤氏は、PCの性能に応じて、動的に映像を同期したり、アンチエイリアスを切ったりするなど、実行時にフレームレートをキープする工夫をしている。フレームレートを維持しないと、はじめてOculus Riftをつけた人が、「気持ち悪い」という感想を持ち、今後Oculus Riftに親しんでいく機会を失ってしまう。そうなるよりは、多少画質を落としてでもフレームレートをキープしたい、とした。
作って終わりではない、体験してもらうまでがOculus RiftのVRコンテンツ
最後に、こうして苦労して開発したOculus RiftのVRコンテンツを人々に見てもらうために、Oculus Riftの作品展示時の注意、また広くOculus Riftを普及させるための工夫についての話題になった。
CEDEC 2014で「Hiyoshi Jump」という実写映像を使ったスーパージャンプ体験ができるVRコンテンツを展示した伊藤氏は、Oculus Riftの体験には付き添って操作を手助けする人が必要だという。「座ってやるのが一番いいが、それだとコンテンツに縛りがある。立ってやる場合は、ユーザーが予想外の挙動をする場合があるので、付き添いは絶対必要」(伊藤氏)。
今後のOculus Riftコンテンツの市場性について近藤氏は、まだプラットフォームが整備されていないと言う。マネタイズの仕組みがまだ無いため、予算をつけたり、研究したりといったことは難しい。すでに他のコンテンツのために作っているキャラクターデータ、背景などをうまく活用し、低コストでデモを作り、普及させることが必要だとした。
司会の渡邉氏は「VRゲーム開発はまだ始まったばかり。まだ知見も少ないが、先人の意見を参考に、ぜひ一緒にVRゲーム開発をやっていきたい」と呼びかけ、セッションを締めくくった。
Oculus開発の一番詳細なドキュメントは、Oculus VR社の「Best Practices Guide」があり、有志による日本語訳も公開されている。本日の登壇者、近藤氏が中心となってまとめている「楽しく使う Oculus Rift DK2」は、DK2の設定における注意点が詳しく説明されている。
また、本セッションで登壇した桜花一門氏らOculus Festival in Japanのメンバーを著者に迎えた解説書『Oculus Riftで俺の嫁と会える本(仮題)』が、翔泳社から2014年内に刊行予定。Oculus Riftの楽しみ方や、UnityとMMDモデルを使ったコンテンツ開発を紹介する。