これからお話しすることは、本稿の筆者である森 龍二の個人的意見であり、筆者が所属または関係する企業・組織や関係者の意見を代表するものではないことをご承知おきください。
『システムテスト自動化 標準ガイド』の翻訳を引き受けた経緯
テスト自動化研究会(略称:STAR)の森 龍二と申します。『システムテスト自動化 標準ガイド』(以下、ギア本[1])の第1章の翻訳を担当しました。
ギア本の原著『Software Test Automation』が書かれたのは1999年。筆者はちょうどそのころ、あるプロジェクトで製品品質の問題を経験しました。それ以降、テストや品質について独自に調査したり、セミナーやWACATEなどのコミュニティに参加したりしてきました。テスト自動化研究会に参加するようになったのも、そうした活動の中でのことです。
筆者の現在の主な仕事は、開発成果物(仕様書、ソースコード)の第三者レビューです。テスト自動化は直接の業務ではなく、アドバイスを求められる程度です。そのため、デモや事例紹介という形でテスト自動化研究会にお返しすることができません。後ろめたいというか、内心忸怩たる気持ちで参加を続けていました。
そんな中、ソフトウェアテストシンポジウム(JaSST)東京 2013での招待講演のため、ギア本の作者の一人であるDorothy Grahamさんが来日されました。テスト自動化研究会に参加していたことで、筆者は実際にDorothyさんに会う機会に恵まれました。このとき、『Software Test Automation』を翻訳する話が持ち上がりました。テスト自動化研究会にあまり貢献できていなかった私ですが、自分の勉強も兼ねて、あえて第1章の翻訳に立候補してみました。あとでこれがとんでもない目に遭うことになろうとは思いもしませんでしたが、いろんな意味で勉強させてもらいました。
特に、開発の現場におけるテスト自動化の役割、あるべき姿に疑問を抱いている方には、新たな気づきをもたらしてくれる本だと思います。とりわけ第1章は刺激的な言葉が多いです。
本書は基本的に「飛ばし読み」に向いていると思います。書いてあることの粒度が細かすぎる傾向があるからです。これは細部にまでこだわる原著者のプロ意識という見方もできますが、自動化担当になってから考えても問題ないことまでが本文に出てきます。ですので、ちょっとこれは話が細かすぎるなと思ったらどんどん飛ばしてください。
ただし、第1~3章は全体に関わる内容なので、ゆっくり読むことをお勧めします。
[1] 昨年12月に開催されたテスト自動化研究会の年次イベント「システムテスト自動化カンファレンス 2015」の最中、どなたかのつぶやきから、先行発売されていた同書に付けられた通称。