機能要件に応じてForce.comとHerokuを使い分け、Heroku Connectで統合
Force.comとHerokuの機能面の違いは、相澤氏が解説したとおりである。しかし、ユーザーが実際に2つのPaaSをどのように使い分け、また統合して開発を成功させているかをまず知りたいところだろう。相澤氏はここでセールスフォース・ドットコムの開発パートナー企業2社から招聘したスピーカーを紹介。Force.comとHerokuの具体的な利用方法や使い分けなどを、それぞれ語ってもらった。
最初に登壇したのは、株式会社フレクト IoT部チームマネージャーの佐伯葉介氏。フレクトは、Heroku、Force.comなど複数のクラウドを利用したインテグレーションに主眼を置き、コンシューマ向けWebアプリケーションなどの開発を行っている。佐伯氏は、Heroku ConnectによりO2Oカスタマーエンゲージメントを実現した事例を紹介した。

あるとき同社は、インテリアショップを展開する企業から、「オフラインだけでなくオンラインを含めた活動により顧客の囲い込みを行いたい」という案件を受託した。顧客エンゲージメントを高めるには、顧客とより高い頻度で質の高いコミュニケーションをとらなければならない。店舗だけがタッチポイントになると顧客との関わりが限定的になってしまうので、Webやモバイルを活用し、顧客に来店や商品予約などのアクションを促すように、新商品やセール、メンテナンスといった情報を配信する必要がある。また、来店時の接客からその経緯や嗜好などの情報を記録し、顧客自身の情報、顧客に配信した情報と合わせることで、さらに質の高いサービスの提供につなげていく。
システムの構築にはHerokuとForce.comの両方を使用した。Herokuでは、ブランドに即したリッチなUIデザインを持つアプリケーションをスクラッチで開発。その企業独自の強みを表現した。また、数十万に及ぶ会員のアクセスログの記録やトラフィック対応も行う。一方、顧客の情報や契約、顧客に発信するコンテンツ、問い合わせへの対応履歴の管理などバックエンド業務のプラットフォームとしてForce.comを活用。そして、Heroku Connectで稼働中の2つのプラットフォームをシームレスに統合した。
「異なる機能要件をそれぞれ特性の異なる2つのプラットフォームで実装し、Heroku Connectで統合できることは、デベロッパーにとって他にはない強みになる」(佐伯氏)

ただし、Heroku ConnectでHerokuとForce.comを統合する際にはデータを置く場所に注意が必要だと、佐伯氏は指摘する。たとえば、会員数に比例して増加するアクセスログなどは、コスト、パフォーマンスの観点からForce.comに置くのは得策ではない。大量の詳細なデータはHeroku上で分析し、顧客の価値創造につながる価値の高いデータを可視化してForce.comで参照できるようにする。そのほか、アクセスログや来店ログを特定の条件で集計したデータのみをForce.comに保持し、商品の展示箇所の訴求改善などに活かすことも可能である。
