Heroku上でユーザー管理とForce.comとの連携を一括して担うライブラリを導入
続いてもう1社、株式会社chatbox 代表取締役であり、株式会社タンバリンで技術顧問を務める後藤知宏氏が登壇した。タンバリンはモバイルやクラウドを使ったカスタムアプリケーションを提供している。後藤氏は、オープンソースのECパッケージをHeroku上に展開し、Force.comとHeroku Connectで統合する事例、およびその際に生じる課題を吸収するライブラリを紹介した。

後藤氏によれば、顧客企業からはCRMの提供後、ECの導入を希望されるケースが多いのだという。そこで、ECを簡単に提供できるように、オープンソースのECパッケージである「EC-CUBE 3」をHeroku上に展開することを考えたという。ECでは機能が充実してくると、セールの際にサーバーがダウンするなど、インフラ周りの問題が多く発生する。Herokuを使えばそういった問題を解決でき、さらにForce.comとHeroku Connectで統合して顧客データを連携し、Force.comのCRM機能も活用できる。EC-CUBE側ではHerokuの各種アドオンを使い、画像管理、ログ監視、データベースのバックアップなどをWeb上の画面で実行可能だ。

ただ、こうしたメリットがある半面、EC-CUBEなどの既存のアプリケーションとHeroku Connectとの間で双方向に同期を行うのが難しい場合もあるということが、課題として判明した。原因は、アプリとForce.comとの間にあるデータ構造のギャップ。とはいえ、データの同期を手動で行ってギャップを解消する仕組みにはできない。そこで、データ構造のギャップを吸収し、アプリとForce.comの連携を可能にするソリューションとして考えられたのが、PHPライブラリ「TAMOPACK[1]」である。
TAMOPACKは、Heroku上でユーザー管理機能を提供する。ECサイト、クーポン配信、コミュニティなどのアプリケーションを個別に作成し、ユーザー管理の部分はTAMOPACKを使って実装すると、TAMOPACKがユーザー管理処理とHeroku Connectによるデータの同期を行うため、各アプリケーションがHeroku上でまとめられた形でForce.comとシームレスに連携する。
「TAMOPACKを使うことで、ユーザー管理を一括で行い、Force.comのCRM機能を活用できる。それにより、お客様に価値を提供できるアプリケーションのフロント部分により注力した開発が可能になる」(後藤氏)

この一年間のプラットフォーム提案の動きを見ると、開発パートナーが主導するソリューション提案、セールスフォース・ドットコムが主導する提案の双方で、Force.comとHerokuの両方を使ったシステム構築の案件が大きく増えているという。デベロッパーにとっては、特性の異なるこの2つのプラットフォームをいかに組み合わせて新しい価値を創造できるかが今後のカギとなるだろう。