市場環境の激変に「戦略的分散」で立ち向かう
1979年創業で今年37年目を迎えるジャストシステムは、IT業界の中では老舗と呼ばれている。日本語入力のATOK、ワープロソフトの一太郎を中心に、パソコンで日本語をどう扱うかについて取り組んできた会社だ。今では当たり前になっている「スペースキーを押してカナ漢字変換」という操作も同社が生み出したものだ。
ベンチャーから始めて大きく成長した同社であるが、Microsoft Wordとの戦いや、パソコンからモバイルへのシフトなどがあり、従来型のビジネスでは非常に難しい面が出てきた。
ジャストシステム 取締役 最高開発責任者(CDO)の三木雅之氏は「単独の商品やビジネスに依存して、会社が沈んでからもがくのは避けたい。会社を継続成長させるために何を取り組むか、という課題に直面した」と語る。
そこでジャストシステムが選んだ方針は、「選択と集中」ではなく「戦略的分散」だった。継続成長を実現するため、複数の事業をしっかりと確立していく。目指したのは、一太郎やATOKのようなキーワードにとどまらない“ひとことで言えない会社”だ。
特に「個人の事業と法人の事業の両輪を作るのは大変だった」と三木氏は振り返るが、懸命に取り組み、現在、売上の構成比率は、個人向けが50.9%で法人向けが49.1%だ。
ようやく継続成長する基盤ができてきた。売上は177億円で、原価や経費を引いた営業利益は45億円。直近18四半期連続で営業最高益を更新中だ。「この成長カーブをより加速していきたい」というのが現在の同社の目標だ。
こうした継続成長を訴求する経営方針に対して、商品開発が直面する課題とは何か。ポイントは「価値を生み出し続けられるか」「多様性に対応できるか」の2つである、と三木氏は言う。
特に多様性については、市場がB2BとB2Cで異なっており、同じB2Bでも、民間企業、官公庁、病院、文教(学校と教育委員会)相手の商品では、売り方も市場もまったく違う。
この多様性は開発面にも影響する。パッケージソフトとWebサービスでは形態が全く違うので、使わなければいけない技術も異なり、もちろん開発プロセスも異なっている。パッケージソフトは1年かけてしっかりとバージョンアップし、そのメリットで購入してもらうが、一方Webサービスは、どんどんデプロイし、DevOpsで回していかなくてはならない。