レッドハットは5月17日、東京・恵比寿の自社オフィスにて、クラウド構築ソフトウェアの新製品発表会を行った。米国本社が4月20日(現地時間)に発表されたIaaS構築基盤ソフトウェア「Red Hat OpenStack Platform 8」と、プライベートクラウド構築向けソフトウェアパッケージ「Red Hat Cloud Suite」を紹介するとともに、OpenStackのビジネス概況やプライベートクラウドの必要性などが説明された。
OpenStackビジネスの概況について、レッドハット シニア・ソリューション・アーキテクト OpenStackチームリードの内藤 聡氏は、2014年はどの企業もOpenStackの検証にとどまっていたが、2015年になり本番導入が加速したと説明。同社の2015年度第4四半期(12月~翌2月)だけで、同年度第1四半期~第3四半期と同等の売上が立ったという。導入先は多数を占める通信系やインターネット系のほか、製造や社会インフラ、金融、官公庁、学術分野と幅広い。導入規模は5~100物理サーバーで、構成はシンプルなものから複雑なマルチサイトまで多彩。パートナーとの協業が進み、リファレンス構成を多数リリースできたことも一因に挙げた。
また、プライベートクラウドが必要な理由として、ローコストで素早く使用できるパブリッククラウドの利用が進む一方で、自社が保有するシステム内に置くべきシステムも残ることを指摘。パブリッククラウドとプライベートクラウドは相互補完する関係にあり排他的なものではないとした。また、コスト効率はオンプレミス環境でも向上しており、特に長期にわたって利用することが確実なシステムにおいては、オンプレミス(プライベートクラウド)環境も選択されると述べ、今回発表された2つのクラウド構築向け新製品の需要を根拠付けた。
新製品の1つ目「Red Hat OpenStack Platform 8」は、OpenStackの「Liberty」リリースをベースとし、同社内でテストや品質保証(QA)プロセスなどを実施して製品化した。3年間は製品サポートを行う。本バージョンで追加されたRed Hat CloudFormsは、OpenStack上で動作するLinuxとWindowsのワークロード管理を実現。ライフサイクル管理、使用状況モニタリング/レポート、マルチノードオーケストレーション、ガバナンス/ポリシーベースのアクセス制御を可能にした。また、同じく新規に追加された「Red Hat Ceph Storage」が、初期状態で64TBのオブジェクトおよびブロックストレージを提供する。
そのほか、環境のアップグレード/アップデートを容易にするツール(OSP director)の追加、IPv6対応の強化などが図られている。価格は従来バージョンから据え置きで、Standardサポートの1年間サブスクリプションが2ソケット単位で50万6000円から。
新製品の2つ目「Red Hat Cloud Suite」は、Red Hat OpenStack PlatformおよびRed Hat CloudFormsに、PaaS構築基盤ソフトウェア「OpenShift Enterprise by Red Hat」を組み合わせたパッケージ。プライベートクラウドの構築に必要な基盤ソフトウェアを全て提供する。OpenShift Enterprise by Red Hatは、OSSのコンテナアプリケーションプラットフォーム環境でのアプリケーション構築とデプロイを可能にするほか、標準Dockerフォーマット上に構築されるLinuxコンテナも同じカーネルに依存するため、消費リソースが低減され、可搬性が増大するという。
Red Hat Cloud Suiteは6月1日より提供開始。「戦略的な価格を設定」(内藤氏)したといい、Standardサポートの1年間サブスクリプションが2ソケット単位で166万3900円から。
なお、今回の発表会では、フリービット YourNet事業部 副事業部長の井口幸一氏と、エーティーワークス 取締役副社長の永井浩和氏が登壇し、井口氏はRed Hat OpenStack Platformの導入事例を、永井氏はレッドハット社とのRed Hat OpenStack Platform共同性能検証をそれぞれ紹介した。井口氏はテンプレートを用いて構築したストレージを、構築後に拡張する方法をサポートに質問したところ、通常の方法では不可能であったが、サポート担当者が方法を見つけて対応してくれたことを明かし、レッドハットの製品を採用する一番の魅力は技術力とサポートだと感じたと語った。
【関連リンク】
・Red Hat OpenStack Platform 8
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