ナデラCEOが語る、3つのプラットフォームへの「野心」
榊原氏からバトンを渡され、いよいよCEOのサティア・ナデラ氏が登壇した。同氏は榊原氏同様、「開発者重視」のスタンスを強調し、ポール・アレンとビル・ゲイツによるBASICインタプリタ製作がMicrosoftの起点であることを紹介。「開発者から始まり、開発者のためのものを作ったMicrosoftの使命は、地球上のあらゆる個人と企業がより多くのことを達成するようにすること」と穏やかながら力強く語った。
例えば、ユビキタスが到来しつつある今、Microsoftが実現しようとするのは、「体験のモビリティ」だ。どんな端末でも同じ体験ができる。さらに5年後はIoT技術なども進化し、世界は混沌とする可能性がある。
その中で重要なのは、ユーザーに「より良い体験」を提供できるかどうかだ。クラウドをコントロールプレーンとし、アプリやインテリジェンスなどが分散化された世界の中で、どう価値を生み出し、高めていくか。創造力を高め、そうした世界観を生み出すためとして、ナデラ氏はプラットフォームにおける3つの「野心」を上げた。
まず1つ目は『インテリジェントクラウドプラットフォーム』だ。「ハイパースケール」Azureによって、今後のIoTによるデータ量の爆発的増加にも対応し、かつ柔軟に拡張するプラットフォームを実現しようとしている。サポートやオープン性、柔軟性を提供し、開発の生産性アップに貢献するという。
さらにAzureの中には、AI(人工知能)技術から成る「コグニティブサービス」を提供し、その上で展開されるさまざまなサービスやフレームワークに自由に活用できる環境を整えるという。例えば、トヨタではAzureによって「テレマティックス」を実現し、生産におけるデジタルプラットフォームを構築しつつある。そこで生まれるのは、産業時代ではなく「デジタル時代」の製品だ。
その恩恵は大企業だけではない。ナデラ氏は日本のベンチャー2社を紹介。マルチな環境に対応する行動分析用ツールを開発するUSERDIVEの世界展開や、Skypeトランスレートを利用し、あらゆる言語での注文に対応する「コネクティドテーブル」を開発したPutmenuの東京オリンピックに向けた取り組みなどが紹介された。
そして2つ目は『Office 365プラットフォーム』だ。単にクラウドへの移行だけでなく、人と人との関係や予定表などをAPIとしてどう提供するかを課題としている。エンティティとして利用可能であると同時に、自らのエンティティを登録して他者に提供することができる。
そこに大きな価値を提供するものとして、特に期待がかかるのが「会話プラットフォーム」だ。Skypeなどによる会話、「Cortana」のようなデジタルアシスタント、会話アプリケーション「bot」などが組み込まれ、アイコンをクリックしたり、テキストを打ち込んだりして操作していたものが、会話でコンテキストを理解して動くようになる。
その価値を紹介するべく、日本で実証実験を行っている「りんな」のデモが行われた。「りんな」は、女子高生をイメージして開発した人工知能で、LINEやTwitter上にすでに300万人以上の「友達」がおり、彼らとのコミュニケーションの中で成長していくという。単なる音声のやり取りだけでなく、さまざまな情報が学習され、相手の状況を見越した感情を踏まえた「会話」が実現する。
最後の3つめは、PCについて『Windowsのプラットフォーム』が紹介された。これはスマートフォンからPC、大画面TV、さらにはIoTやHoloLens(3Dホログラフィック)といったデバイスまでを一つのOSでカバーし、デバイスを跨いだ「体験のモビリティ」を実現するというものだ。UIの調整は若干必要なものの、開発ソースコードは共通化でき、さらには流用も可能だという。
特にHoloLensなどのアプリケーションは、アナログと融合するための「ネクストリアリティ」のリッチメディアが容易に実現できるとして注目されている。開発者の表現に限界がなく、アイデア次第でさまざまなビジネスに活かすことができる。ゲームやエンタメ以外にも、教育や医療など活用の幅が広がりつつある。ナデラCEOは日本航空の整備や訓練にHoloLensが活用されていることを紹介した。
そして最後に、ナデラCEOは「これらの最新のIT技術は4度目の産業革命になる」と強調。開発者は今後を予測するものではなく、技術によって環境そのものを変えるものであると語った。そして「TOMODACHI」と名付けたコンピューター教育分野への支援活動を紹介し、「デジタル技術で社会の変革を進める担い手を支援すること。Microsoftのミッションはそこにあり、誇りに思う」と語り、講演の締めとした。
