プラットフォームカンパニーであり、個人開発ツールとしてのPCもオープン化を強化
続いて登壇したのは、バイスプレジデント&チーフエバンジェリストのスティーブン・グッゲンハイマー氏。オープンソース化が進み、あらゆる企業がソフトウェア企業となる中で、Microsoftはコミュニティや開発者に対してどのような働きかけをしていくのか。また、Microsoftが何を作り、提供するものがどのような価値を生み出すのか。そして、テクノロジーを活用して個人としての開発やビジネスに何ができるのか。それぞれのテーマについて語った。
Microsoftはデベロッパーとともにビジネスを進め、近年ではモバイルファースト、クラウドファーストについて取り組んできた。今後どのように展開していくのかという答えの一つが「オープンプラットフォーム」だ。それを提供しながら、個人の開発環境としてWindows 10も推進していくという。
「Windowsのプラットフォーム」としてのWindows 10における進化として、最も大きい取り組みは、デバイス対応にあるという。プラットフォームとしてすべてを集約し、一つのプログラムであらゆるデバイスに横展開し、導入だけでなくデバイスの管理も容易になってきた。その上でIoTを意識した拡張性も担保、「Cortana」などによる「会話のプラットフォーム」も実現しつつある。グッゲンハイマー氏は「Windows PCを使えば、どんなアプリケーションも開発できるというのを実感してほしい」と語る。
そうした開発環境提供に加え、まもなく登場予定の「Windows 10 Anniversary Update」の新機能として3点が紹介された。それぞれ簡単なデモが行われた。
ペンタブレット機能とインクワークスペース
まず初めに紹介されたのは、ペン、ペンタブレット機能とインクワークスペース。ふせんやスケッチパット、新しくインク用に作られた定規などもユニークだ。そして、これらの機能をデベロッパーが作ったアプリケーションに追加できるようになっている。
Windows 10にUbuntu
また、Windows 10ではUbuntuのバイナリの投入によって、Linux系のコマンドをほぼすべて利用できるようになった。標準でEmacsやRubyなどを実行することができ、Ubuntu用のレポジトリからソフトウェアをダウンロードしてインストール、実行もできる。サードパーティソフトの活用でX Window System用のソフトを動かすことも可能だ。
デスクトップコンバータでUWPアプリに変換
また、自ら制作したデスクトップアプリケーションをパッケージングし、Windowsストアにアップできるのもユニークな取り組みだ。今回デモでは秀丸をパッケージングし、ローカルPCにインストールをした。これによりセキュアな形でインストール、実行できるというわけだ。
多彩な機能を持つアプリの開発
続いては、Windows 10で開発しブリヂストンで導入されたUWPアプリが紹介された。そこでは音声認識による操作や手書き認識などの他、デバイスの大きさでUIが変化することなどが示された。
なお、Visual StudioへXamarinが無償提供され、iOSのエミュレータも搭載された。通常はMacのXcodeが必要となるが、エミュレーションがあるのでWindowsからも実行確認でき、MacBookでは不可能なタッチ操作の動作確認も行える。
続いて2つめのプラットフォームとして、『Office365プラットフォーム』の詳細が紹介された。Officeは仕事の最前線に位置づけられてきた。Outlook、カレンダー、ExcelやWordなどは誰もが日々使っているのは今も昔も変わりない。
そこにAPIが使えるようになったことで、コンシューマ向けでありながら、フロントエンドとしての役割も担えるようになってきた。また、Skypeで会話による操作も可能になり、まさにプラットフォームとしてビジネスにおける共通言語となり、容易でフレキシブルな開発環境を提供していることが強調された。
Microsoftでは、さまざまな企業との連携により、セールスフォースや会計ソフト、Dropboxなど、あらゆるものがAPIとしてつなぎ込みができるよう、努力を続けるという。また、個人的に開発したものもAPIとして共有できる環境も整えていくという。ここでもさまざまなデモが行われた。
ワードクラウドをExcelで動かす
文字の色や大きさで値を表現する「ワードクラウド」をExcelのスプレットシートで実装するデモンストレーションが行われた。PowerShellの上でYEOMANを使ってジェネレートを利用してテンプレートを作成。
「Palmi」でメールの読み上げおよびデータ収集
AI搭載ロボットDMMの「Palmi」に音声で「メールを読むように」と語りかけると、「Palmi」がメールを読み上げた。
「Pepper」によるセールス
AI搭載ロボット「Pepper」がカメラ認識で、年齢や性別などを判断し、的確な製品をセールスした。どういう人がどういうものを好むか、データによる機械学習がベースになっている。
続いて、『インテリジェントクラウドプラットフォーム』についての具体的な取り組みが紹介された。クラウドファーストの今、大変ホットな話題ではあるが、事業のライフサイクルはそれぞれ。とはいえ、既存のバーチャルマシンの利用など、Azureが簡便に実現でき、さらにMicrosoftが提供する「Platform as a Service」で状況に応じた利用が可能になる。「まだ旅路は始まったばかり」という。
Azureのユニークな特徴は、世界中にある『ハイパースケール』だろう。キャパシティはAmazoneとGoogleを合わせたものより大きく、つまりはアウトソースにかかるコストが安い。2つ目が『ハイブリット』。長年クラウドサービスを構築する中で、新旧さまざまなAzureスタックを柔軟に利用できるメリットがある。そして3つ目が『エンタープライズカスタマー』だ。Microsoftでは、サポートやサービス、エバンジェリストなど、エンタープライズカスタマーのクラウドの利用をサポートする部隊として実現可能だ。その結果、多くの利用者がAzureに移行して行っているという。
グッゲンハイマー氏はAzure導入の概況として、1か月あたり12万以上の新規サブスクリプション、データ数140万以上、1週間で2兆以上のメッセージングなどの数字を紹介し、その勢いについて語り、さまざまな使い方や機能などについて羅列した。その中から、ユニークな利用例を紹介する。
機械学習、人工知能を活用した「キャプションボット」
写真を見て、それを分析してテキスト化する「キャプションボットAPI」のデモでは、3枚の写真を使用。それぞれ写された状況を機械が分析、判断し、写真に適切なキャプションをつけた。
画像認識AIでデモホテルのドアが開くFace API
ドアの前に立ち、Face APIで顔を写して待つ。認証されていない人はドアを開けることができない。承認されていればドアのカギがあく。
ほか、言語やスピーチなど22のコグニティブAPIが用意されている。今後は、デベロッパー側でそれらを「どのように使うのか」がポイントといえるだろう。
デモンストレーション盛り沢山のキーノートに見える、新生Microsoftのプラットフォーマーとしての決意
ナデラ氏自ら来日登壇しての基調講演に、多種多様なデモンストレーション、一種お祭り騒ぎも入りながらの「de:code 2016」に、かつての「WindowsとOfficeのMicrosoft」の頑な面影は残っていない。やや遅しの声もありながら、オープンソースへと舵を切ったことも多くのデベロッパーの賞賛を持って受け入れられた。企業の成長や社会変革を実現するデベロッパーを支援することを明確に示し、最新の「プラットフォーム イノベーション」を提供しようとする新生Microsoftに大いに期待感を抱かせるカンファレンスだった。
