コンピュータを強力な協力者に 異なるアイディアを組み合わせて解決に導く
岩切 続いてはリンダさんを紹介しましょう。学校教育、子どものテクノロジー教育に関して、斬新な活動をされているソーシャルハッカーです。
リンダ みなさん、はじめまして。私は絵本作家であり、プログラマ、そしてビジネススクールを中退（笑）しています。ハッカーと聞くと、多くの人は魔法使いのようなすごいスキルを持つ人を想像するかもしれません。でも、実際のところは異なる考え方やアイディアと組み合わせて問題に取り組むことができるなら、誰でもハッカーになれるんです。近年の社会の問題はコンピュータで解決できる部分が多いので、なんとなくそうした人がハッカーと呼ばれていますが、どんな方法でもいいと思います。
その辺、子どもたちは柔軟で、「こうあるべき」なんて定義しません。たとえば、「コンピュータを勉強してはダメ」なんて考えないし、JavaやRubyが世界の共通言語になれば、こぞって覚えようとするでしょう。でも、いまのプログラムの教え方は根本的に面白くないですよね。文法だけでなく、俳句や詩を作る方が何倍も楽しいはず。ハッカーだって、やりたいのはコードを書くことではなく、問題を解決する何かを作ることですから。
となるとハッカーは何か問題があったとき、何が問題なのかをすぐさま見抜く力が求められます。大きな問題は小さな問題が組み合わさってできていることが多いもの。そこをロジカルに切り崩し、分析する考え方を、早くから身につけるとよいでしょう。またコンピュータはその手助けとなることも多いので、協力して取り組むことが大切だと思います。
コンピュータが得意とするのは、分析や計算、パターンを見つけることなどです。それ以外は人間の方が優れています。たとえば「感情」はその１つ。ワークショップで子どもたちと「顔文字のお面」を作ってみると、複雑な感情を絵文字で伝えるのが難しいことに気が付きます。そして、自分の細やかな感情をオリジナルの絵文字を作ってみるんです。「いつもは1つのアイスクリームを2つ食べたときの顔」「親が自分の誕生日を忘れたときの顔」とかですね（笑）。それはコンピュータが解くことができない問題でしょう。
そしてもう1つ、大きな紙を用意し、一人ひとりに「●を描く」「その周りに線を描く」というアルゴリズムを持たせ、自由に絵を描かせます。そうした手法なら、コンピュータならあっという間に描けます。子どもたちはがっかりしますが、その絵から受ける印象となると生き生きと語り出すんです。つまり、コンピュータはアートを作成できるけど、解釈はできない。そのように、コンピュータが得意とするところ、人間にしかできないこと、それを切り分けて問題解決に取り組むのがハッカーというわけです。
もともとコンピュータは計算などを行う仕事を指していました。いわば世界で初めてのコンピュータは人間だったんです。そして最後のコンピュータもおそらく人間になるでしょう。
