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【夏サミ2016】セッションレポート

社会的な問題に「パッチを当てる」ハッカーになるためには?――リンダ・リウカスさんと及川卓也さんが考えること【夏サミ2016レポート】


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政治的な活動にハッカーとして関わるべき?

写真奥より、翔泳社 岩切、通訳 岩尾はるかさん、リンダさん、及川さん

岩切 会場から、ハッカーとしての政治に関する取り組みについて質問がありました。日本人はそうした活動を苦手とするようですが、いかがですか。

及川 私自身は既にいろいろ取り組んでいて、「税金はどこにいった?」などにも関わっています。地方自治体の公開されている税金の使い道予算を引っ張ってきて、自分の収入を入力するとその割り振りが分かるというサイトです。

 冒頭に出てきた岩切さんの「パッチを当てる」という表現はまさに政治や社会の問題に対するハッカーの姿勢そのものです。たとえばソフトウェアを使っていて不具合があれば、パッチを作成して送ったり、それができない人はイシュートラッカーに問題点を知らせたりしますよね。わざわざそれをするのは、そのソフトを愛していて、よりよくなってほしいという気持ちがあるからでしょう。政治に関しても同じであると思います。そしてITでというのはいい切り口といえるでしょう。

リンダ 私自身は取り組めていませんが、政治を変えていくことはたくさんの人に影響を及ぼすのでよいことだと思っています。近年、能力のある人材はスタートアップなどに行きがちです。小さな問題を解決することはもちろん必要ですが、もっと大きい課題にも取り組むべきでしょう。例えば、イギリスでは政府のシステムやツールの構築をオープン化し、さまざまなコミュニティやジャーナリストなどが参加しました。結果、イギリスの成功を見て、他国が参考にし始めています。それは大きな変化といえるでしょう。

岩切 日本は政治の話を公の場でしないことが暗黙の約束になっています。そこは私たち世代の責任としてITの力を使い、生きている間に何か実現できればと思っています。

これから社会の中でやってみたいことは?

岩切 最後の質問として、これから社会の中でやってみたいこと、挑戦してみたいことについて伺ってみましょう。

及川 先ほどちょっと教育について触れましたが、もっと日本で、次世代の子どもたちがプログラミングをできるようになればいいなと思います。ただ、そのためには、日本のプログラマの地位をもっと上げなくてはいけません。世界的に見ても低すぎるというのはかなり懸念すべきだと思います。というのも、ITの力が弱くなれば日本の力も低くなるだけでなく、世界のさまざまな問題がITで解決できるにも関わらず、その動きに参加することすらできない。文系・理系という分け方ではなく、もっと基礎的でロジカルな考え方ができることが重要なのではないかと思います。デベロッパーマインドを持ち、プログラミング的な思考の持ち主を増やすべく、そうした活動に取り組んでいければいいなと思っています。

リンダ 及川さんのおっしゃることに全面的に同意します。やはり、大切なのはマインドセットでしょう。例えば、学校教育では「努力をすること」が評価されます。しかし実生活ではコンピュータの方が優れていることも多く、それを上手く使いこなして「怠惰に過ごす」ことも大切であることを知らせる必要があります。

 もう1つ、「繰り返し覚える」学習だけに集中することは変えたいですね。IT業界がこれほど早く発展したのは、オープンソースの考え方のおかげでしょう。人々がそれぞれの成果をシェアし合ってその上に新しいものを作ってきたからです。オープンソースではPull Requestを送ったり、Issueを立てたり、そのようなことが普通に行われます。でも、学校ではそれを「カンニングだ」と言うわけです。でも、それは考え方によっては危険といえるでしょう。私はプログラミングに関する教育的なワークショップでそれを変えていきたいと思います。

岩切 お二人とも、たいへんユニークな発想で目からウロコがたくさん出ました(笑)。確かにプログラミングに関する教育が少しずつ、小学生から始まっています。プログラミングが必要と思われるから、そんなふうに変えようとしているわけですよね。持続するための社会活動の中に、ハックすべきことがあるのではないかと思っています。そして、それを体現しているのがお二人なのだと思います。

 そして、どうしてハックするのかといえば、人間とITの可能性を信じているからではないかと思います。ソーシャルハックで思い出すのは、黒澤明監督の映画「生きる」です。若い頃には理解できなかった主人公の思いが今は分かるという人は、きっと多いことでしょう。ぜひとも、お二人のお話を参考に、Hack the Realに挑戦していただければと思います。本日は皆さんありがとうございました。

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/9640 2017/04/14 21:30

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