PWApps、AMPでWebを再発明する
続いて及川氏の講演だ。及川氏は、アプリケーション、メディア、プラットフォームという3つの視点からWebを見た場合の機能や役割の変化について語った。その変化の中で、GoogleがWeb戦略をどのように考えているのかを示唆する内容でもあった。
まずアプリケーションとしてWebを見たとき、HTMLの進化や各種API、コンポーネントの実装が進んでいる。もうHTMLのAPIや機能拡張は十分ではないか、という議論がある一方で、マウスやキーボードに閉じたアプリから抜け出ていないという意見もある。「モバイルデバイスを前提として、新しい機能を盛り込んだアプリケーションはこれからどんどん増えてくる」と及川氏はいう。Progressive Web Apps(PWApps)やWebAssemblyが注目される所以である。
ブラウザで動作するWebアプリは、これからさらにネイティブアプリのような高度かつカスタマイズされたものになっていくはずだ。コードもJavaScriptではなくC/C++のネイティブアプリが書け、インストール不要なプログラムがブラウザで動作するようにもなるだろう。「そうなったら、Webはどんな意味を持つのだろうか。おそらくWebは汎用のアプリ開発技術になっていくのではないか」と及川氏は予想した。
メディアとしてWebをとらえたとき、及川氏は、ニュースのキュレーションアプリの存在が、これまでWebがサボっていたところ、やっていなかったところを浮き彫りにすると主張する。人々はなぜニュースをブラウザではなくアプリで見るのだろうか。それは、ブラウザによるWeb環境では、ユーザーが広告や読みたくないコンテンツを読まされている現実があるからだ。特に画面リソースの限られているモバイルWebにおいて、従来型サイトのモデルは否定されている(及川氏)」という。見たくない広告や余計なページ遷移を強いられるだけでなく、それによって表示が遅くなったりもする。UXは最悪の状態だ。
Googleは、ビジネスモデルの転換も含めてモバイルサイトに対してAccelerated Mobile Pages(AMP)を提唱している。AMPの機能はこれまでのWebの反省、特にモバイルフレンドリーでなかった部分の反省が込められている。GoogleというこれまでWeb検索や広告市場において寡占状態にあったプラットフォーマ―が主導するプロジェクトに警戒する声もあるが、少なくともユーザー満足度での効果が期待できる技術である。
ただし、PWAppsやAMPの普及には現実的な壁も存在する。これらに対応するサイト/ページにはガイドラインがあるが、CMSやツールによってはPWApps対応、AMP対応の障害となる。また、タグの使い方やサイトの構造が整理されておらず、セマンティックが正しくないサイトもAMP対応の問題となる。
3つ目の視点、プラットフォームとしてのWebは「再投資、再発明が必要だ」とする。「Webを再発明したい」とは、WWW(World Wide Web)の生みの親であるティム・バーナード・リ―氏も今年の6月に発した言葉だ。
及川氏は、モバイルやIoTの時代といわれる現在、あらためてWebの安心・安全・スケーラブルな特徴を振り返るべきではないかという。そのためW3Cでは、HTTP/2、UDPによる高速化、SSL/TLSといった技術が議論されている。前述のWebAssembly、PWApps、AMPのような技術により、アプリやメディアも新しいフェーズを迎えている。リ―氏の再発明したい発言は、政治的にコントロールされたインターネットへの反省という意味合いも含まれているが、及川氏は、モバイル時代にふさわしいWebのために、これらの分野への再投資、再発明の必要性を説いた。
