「ネ申エクセル」賛成? 反対?
数年ほど前から、SNSなどで話題になりIT系メディアも取り上げたりしているので、説明するまでもないだろうが、「エクセル方眼紙」はExcelのセルを正方形のマス目にそろえ、けい線とセル結合によって任意の帳票を作るというアレだ。ネットでは「ネ申エクセル(かみえくせる)」などとも呼ばれている。役所や企業の社内文書、申請書類としてはよく見かけるし、自分の会社にもそういう書類が1通くらいはあるのではないだろうか。しかし、適当にセル結合されたエクセル方眼紙は、入力がしづらく、また入力データの抽出、再利用も困難だ。業務効率、生産性を下げるものとしてIT業界では忌み嫌われている存在だ。
討論会は、「エクセル方眼紙のどこが問題でどうすればいいのか、代替策はあるのか」といった視点での講演と、講演者と識者によるパネルディスカッションで構成された。最初の講演は、おそらくこの問題をSNSで最初に取り上げたであろう立命館大学 上原哲太郎教授が登壇した。同氏は当然エクセル方眼紙否定派の立場での参加だ。続く講演はプログラマーであり、どちらかというと肯定派の長岡慶一氏。問題の本質はセル結合やけい線ではないとの立場で講演を行った。
講演に入る前、会場で参加者アンケートを行った(QRコードを読み取り表示されるURLで投票)。講演開始時は肯定派が20.7%。否定派が79.3%とおよそ8割が否定派だ。
表計算ソフトの歴史からさぐる
上原氏の講演は、「ネ申タヒすべし:Excel方眼紙という時間泥棒」という、アカウント凍結の回避投稿のようなタイトルで会場を沸かせた。
まず、なぜエクセル方眼紙(上原氏は「神エクセル」と表現している)が生まれたのか。表計算ソフトの歴史と自身の経験から、その理由や背景の分析・解釈を試みることから講演が始まった。
表計算ソフトのルーツは、Apple IIというマイコンのキラーアプリのひとつだった「Visicalc」(1979年)までさかのぼる。1982年にはマイクロソフトがMS-DOS用の表計算ソフト「Microsoft Multiplan」を発表している。翌年、豊富なグラフ機能とマクロ機能を搭載した「Lotus1-2-3」が発表されると、この表計算ソフトが、オフィスのパソコンに瞬く間に広がった。
1985年、マイクロソフトがもともとはMac用のアプリだったExcelのWindows版を発表。Lotus1-2-3を意識して開発されたExcelは、GUIを強化し、より使いやすいマクロ機能やデータベース機能も充実させ、次第に市場を広げていった。文字修飾、けい線など印刷関係の機能もこのとき強化が始まっている。