大人の言葉遣いがあれば、仕事も円滑になる
続いて行われたビジネス書のプレゼンは、『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』の著者である吉田裕子氏からスタート。普段は大学受験用の塾で国語講師をしている吉田氏が、この本を書いたきっかけは、「現実に“使える”言葉を集めた語彙力本を作りたい」という思いからだったという。
語彙力本はこれまでも多数出版されているが、故事成語の成り立ちを説明するなど、言葉の雑学に関するものが大半だ。そのため本書では「仕事の場で実際に使え、かつ身に付けておいた方がいい言葉」に徹底してこだわり、語彙を収集したそうだ。
ITエンジニアも、取引先企業にプロジェクトの進ちょくを説明したり、テクノロジー解説をしたり、外部の人と話す機会は決して少なくない。そうした時、ちょっとした言い回しや、言葉の遣い方ひとつで、よりスムーズに意思を伝えられるようになる。実は吉田氏の家族にもプログラマーがいて、普段社内ではチャットツールで略語を駆使してコミュニケーションを取ることが多いそうだが、「いざ外部の人と話す時、しっかりした言葉を遣わないといけない」と戸惑うこともあるそうだ。
そのため本書では、仕事で使う語彙へのこだわりに加え、例文や反対語、類義語を豊富に載せることで、その言葉が持つ意味や、会話のシーンを説明している。これにより、ちょっと大人で気の利いた言い回しを日常生活でスムーズに使えるようになるという。
言葉はコミュニケーションの手段として、なくてはならないもの。自分の考えや技術について、ほかの人にわかりやすく説明して仕事を円滑に進めるためにも、ITエンジニア必読の書といえそうだ。
プレゼンでは、本書内に出てくる語彙の読み方クイズも行われた。登場したのは、「膠着」「慧眼」「寛恕」「拙速」「鑑みる」「矜恃」の6つの漢字。一見読めなくても、実はどれもがITエンジニアの仕事の中で使われるものばかりだ。もし読めない漢字があれば、ぜひ本書で確認してほしい。
ITエンジニアの問題解決力はすごいんです!
続く『職場の問題地図』は、2016年9月に出版されたビジネス書だ。Amazonや書店のビジネス書大賞をいくつも受賞したので、書店で見かけたことがある方も多いだろう。
働き方改革が注目されている現在、著者の沢渡氏も講演やコンサルティングに忙しい日々を過ごしている。だがそんな佐渡氏は、「実は人事業務の経験はまったくないのです」という。もともとはIT運用管理や認証基盤エンジニアとして、日産自動車やNTTデータ、製薬会社で勤務していたそうだ。
なぜ人事経験がないのに、職場の働き方の問題を指摘・解決する本を出版したのか。それは「ITエンジニアのやり方が、職場で生じる問題を解決できることが多いからです」(沢渡氏)という。
職場で生じる問題の根底には、杜撰なスケジュール管理、コミュニケーションの齟齬、情報共有の不備など、さまざまな要因がある。こうした課題を解決するためには、ITエンジニアが普段当たり前に行っているプロジェクト管理の方法論や、ITサービスマネジメントのやり方を持ち込むことで、ほとんど解決できてしまう。つまり本書は、「職場の問題解決策を、IT用語を使わずに説明した本」ともいえる。
沢渡氏は、「IT業界で、ITエンジニアが当たり前にやっていることが、実は普段のビジネス現場でも大きな価値があることを本書で示したいと考えました」と語る。
たとえばWBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)の描き方や、インシデントへの対応力などを見ると、やはり普段からそうした作業に慣れているITエンジニアの方が、一般のビジネスマンに比べてスマートに業務を進められるという。こうしたITエンジニアにとって当たり前のやり方を応用し、「IT出身者やエンジニアの価値を一緒に高めていく」ことが沢渡氏の大きな目標だ。そのため、ITエンジニアにこそこの本を読んでもらい、「やはりITエンジニアはすごい!」といわれる問題解決力を発揮してくれることを願っているそうだ。