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イベントレポート

無料のLinuxをベースに有料ビジネスを構築するためのヒント

「Linux /OSS Business Summit 2007」レポート


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Linuxによるユーティリティ・コンピューティング

 新日鉄ソリューションズの宮辺裕氏は、同社で開発/運用している、Linuxを活用したグリッドコンピューティング技術のビジネスモデルと今後の計画を紹介した。

新日鉄ソリューションズ株式会社 システム研究開発センター所長 取締役 宮辺裕 氏
新日鉄ソリューションズ株式会社 システム研究開発センター所長 取締役 宮辺裕 氏

 同社は、基盤系ソリューションが売上の多くを占めている中立系のマルチベンダで、中期戦略支援や先端技術開発、人材育成のためにシステム研究開発センターを開設している。主な特徴として、顧客に直接使ってもらえる環境を提供することに研究開発の成果が注力されていることを挙げた。

 ITシステムに対する要求は、「アクセス数・データの増加」「セキュリティ要求」「ビジネスへの俊敏性な対応」「コンプライアンス対応」など厳しくなっている。一方で、企業の情報システム部門の運用コストが拡大し、ダウンサイジングしても必ずしも運用コストが減るとは限らない。また、既存システムは複雑化し有効利用が難しい。

 これらの問題を解決するには、インフラストラクチャの個別最適化では限界があるため、ユーティリティ化を考えるとよいという。アプリケーションにし、グループで管理することによって、TCOを削減してROIを最大化し、変化への対応力が向上する。

 これを実現する考え方には2通りあり、大型マシンを分割して利用する「パーティション型」と、小型マシンを必要に応じて集約する「グリッド型」がある。同社では、初期投資が少なくてすみ、メーカー依存度が低い(LinuxやWindowsなど標準的なOSが使える)ということで、後者を採用している。これには、UNIXサーバの場合、Core数が増えてスケールアップしていくとコストが大幅に増大するのに対し、コストパフォーマンスの高いx86系サーバをグリッド技術でスケールアップすることで、コストを抑えつつ大規模な処理系を構築できるという理由もある。

 実際に額面どおり運用できるかについて、様々な研究開発が進められている。ユーティリティ・コンピューティング環境の実用化に向けた詳細な内容が、同社の坂井氏により語られた。

新日鉄ソリューションズ株式会社 システム研究開発センター 坂井良文 氏
新日鉄ソリューションズ株式会社 システム研究開発センター 坂井良文 氏

 同社では、ユーティリティ・コンピューティングを検証するため、NSGUC(NSsol Grid/Utility Computing center)というセンターを立ち上げ、複数種類のサーバ、サーバ間通信、ストレージによるネットワーク環境(合計で125ノード、250CPU)を構築している。

 大規模グリッド環境に複数のシステムが共存できるか、一つの環境に統合できるか、機器増加による管理コストの押さえ込んだコストメリットが出せるかなどが検証され、研究所のゴールは「次世代のデータセンター構想の具現化」に設定されている。

 ユーティリティ・コンピューティングにおけるOSS/Linuxへの課題と期待感として、まずLinuxが「サーバサイズ、ベンダーに依存せず選択できる唯一のOS」であることを強調した。数年前まではLinuxをどこで使ってよいか迷ったが、今はカーネルの性能が向上し、大型サーバのスケールアップモデルに対してもかなり追従できるようになってきていて、安心して使えるという。

 その他に、OSSの利用する上でのメリット・デメリットを自覚し、すべて商用ソフトかLinux/OSSにするのではなく、用途に応じて使い分けることで、最大の効果が得られるとも述べた。

 また、ユーティリティコンピューティングを実現するための具体的な技術要件として、「標準プラットフォーム」「共有リソースプール」の整備の他、次のようなものを挙げた。

  • プロビジョニング
  • 柔軟にあてがう機材を調整。
  • グリッド技術
  • 自由にノードをする。
  • 仮想化
  • 物理的なものをもっていると柔軟性が落ちる。
  • ワークロード管理
  • ハードウェア資源をいかに細かく把握して管理できるか。
  • 統合管理
  • 柔軟性を求めるが故に複雑になり人に管理させるのは危険。自動化/自律化を目指す。

 最後に、ユーティリティコンピューティングが向かない環境の一例に、BtoCを挙げた。例えば、株の売買など、短期間に集中するアクセスなどは、まだ仕組み的についていけないようだ。

Linux技術者認定資格の現況

 LPI-Japan理事の鈴木敦夫氏より、LPIC最新情報と今後の展開が説明された。

LPI-Japan理事/NECソフト株式会社 ITシステム事業部 事業部長 鈴木敦夫
LPI-Japan理事/NECソフト株式会社 ITシステム事業部 事業部長 鈴木敦夫

 LPIでは、「GLOBAL」「NEUTRAL」「STANDARD」を掲げ、国際的で中立・共通標準のLinux技術者認定試験LPIC(Linux Professional Institute Certification)を実施している。

 近年、Linuxが企業/業務システムといった高度な領域で利用されるようになり、大規模なシステムや複合システムにも適合できる技術者が必要が増している。そのような背景を受け、従来のレベル1(基本操作・システム管理が対象)、レベル2(システム構築・ネットワーク構築が対象)に加え、エンタープライズ向けのレベル3が増設された。

 レベル3は、キャパシティプランニングやファイルシステムなどを中心とした「レベル3 Core」の上に、「レベル3 Speciality」が用意され、現在は「Mixed Environment」(LinuxやSambaなどの混合環境を構築できる)が実施されている。その他は現在開発中だ。

 最後に、世界最初のLPIC レベル3 Coreの認定者となる、株式会社クエスト システムサービス事業部 市川和史氏の表彰式が執り行われた。

左:市川和史氏(受賞者)、右:成井弦氏
左:市川和史氏(受賞者)、右:成井弦氏

Linuxへの期待

 Linuxのエンタープライズ領域への適用は今後も加速していきそうだ。今回のビジネス適用例を見る限り、Linux技術者の最上位資格LPIC Level3が新設されたのは、ごく自然の成り行きのように思える。特に、Linuxのメリット/デメリットを把握し、Linuxとそれ以外の複合システムを構築・運用する技術の必要性が増してくると考えられる。

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