IssueHuntで目指す世界観とは
──IssueHuntで目指している世界についてお聞かせください。
横溝 三つの段階があると考えています。一つはOSSをサステナブルにするということですね。OSS開発が生活を担保させる手段の一つとして確立させるというのが一つ目です。
二つ目は雇用の在り方を変えるチャンスになるのではないかということ。OSS型の開発スタイルは、Issueが上がってきたらそのIssueに対して何かしらの貢献をしていくことが多いのですが、IssueHuntではそこに報奨金をつけるチャレンジを行っています。もしそれが確立されたら、時間でいくら、1か月でいくらなどといった報酬での雇用形態を変えられるチャンスになると考えています。
三つ目は会社のビジョンでもある、実力で評価される社会をつくるということ。この三つのチャレンジをやっていきたいですね。
──松本さんは、BoostIOに対して具体的にどのような支援をしているのでしょうか?
松本 現状では投資だけではなく、外部に対しての文化作りに向けた広報戦略、プロダクトの方向性をこれからどうしていこうかという相談に乗っています。エンジニア組織をどうやって拡大していくかや、マネジメントについての相談も多いですね。
横溝 本当に何でも相談に乗ってもらっています。
松本 チャットで相談に応じることが多く、2~3か月に一度、ランチに行きながら話を聞いています。僕もあまり口うるさく言いたいタイプでもないので、必要だったらいつでも呼んでというかんじで。

──松本さんは、横溝さんが目指している世界についてどのような印象を持っていますか?
松本 最近はスペシャリストがどんどん個人で動く時代になってきています。日本国内で見ても、2~3年で会社を変える人やフリーランスも増えているし、プロジェクト単位に個人が集まることも多くなってきた。その中で個人が新しい働き方を見つける上でも、BoostIOやIssueHuntが作ろうとしている文化はとても重要です。
今やOSSなしで開発できる世界ではなくなってきているので、まだまだOSSの利用者側であるという企業であっても、OSSを支援するという意味で、このツールは非常に重要になっていくと思っています。法人がアクティブにOSSを支援していくという世界がこれで作れるんじゃないかというところに惹かれたのが、投資を決めた一番大きい理由ですね。
──有償プロダクトで質の良いものを使うことと、OSSを支援しながら使うことでは、何が違ってくると思いますか?
松本 一番重要なのは、OSSが共通の解決策にできることですね。例えば、Kubernetesがコンテナマネジメントのデファクトスタンダードな規格としてOSSで公開されることで、そこにアジャストしたさまざまなミドルウェアやコンポーネントを出していくことができる。そのことでより加速していろんな開発ができていくというような。
これまでは利害の関係で自分たちの解決策しか載せられなかったんですけど、OSSはそれを自由に載せられる。みんなが自分たちの思っている解決策を提案し合いながら、それを集約していくのがOSSの場と考えると、今までのパッケージウェアを買い切っていく世界とは違ってくるのではないでしょうか。
BoostIOがグローバル向けに起業した理由
──BoostIOはグローバルを意識していますが、なぜグローバルを志向しているのでしょうか?
横溝 共同創業者CTOが外国人なのが一番大きいですね。昔あるアメリカのVCのプログラムに参加してたんですけど、その時にグローバルを本気で目指すならLP(ランディングページ)から日本語を消せと。それから明確にグローバルを意識するようになりました。チームメンバーも日本人より外国人の比率としては多いので、特に意識もせず作ってることもあります。
──グローバルをターゲットにすることにより、差別化できていると思うことは何ですか?
横溝 よかったと思うことは、コミュニティが圧倒的にグローバルであること。Issueを立ててくれるのも海外の方です。これを日本語で日本のコミュニティだけでやっていたら、ここまではできなかったのではないかと考えています。
OSS全体を見渡してもまだ日本のプレゼンスは低く、貢献している人も多くはないので、海外を対象にしていてよかったなと思っています。だからこそこれからはそれを逆輸入して、日本でも増やしていかなきゃという想いがあります。ターゲットは世界とはいえ、僕は日本人なので使命として感じているところです。
とはいえ、僕らの存在感がまだまだ小さいので、単体でやるのはまず無理。松本さんのように声が大きい人に啓蒙していただいて、日本のIT企業全体として変えていかないと確実に変わらない文化だと思っています。これが2~3年でできるかというとそんなことはないので、ちょっと長い戦いにはなりそうです。
今のOSSのエコシステムは持続可能性にかけるところがあるので、そこは変えていきたいと思います。また、OSSのメンテナンスってめちゃくちゃ大変なので「飽きた!つらい、やーめた!」って辞めていくプロジェクトって少なくはないと思うんです。仮にOSS開発だけで生活が担保されるようになって、そうした人たちを1万人くらい作ることができたら、たぶん変なAI開発をするより、世界は進むんじゃないでしょうか。今世界最先端の技術はOSSだと僕は思っているので、そこにフォーカスする人を増やしたいというところです。
ここ数年はOpenCollective等、OSS向けのスポンサードサービスが増えており、とても良い風潮だと思います。世の中に対して素晴らしい貢献をしてくれているOSS開発者が受動的にスポンサードを得ることができ、彼らの貢献に値する報酬を得ることができる文化は作らなければならないと思いますし、啓蒙し続けようと思っています。
