ゲーミフィケーションで、面白さを伝える×面白く魅せる
「今からみなさんに3枚の画像を見ていただきたいと思います」
ゲーミフィケーションエバンジェリストの仲氏はセッション冒頭、3枚の静止画を会場スクリーンに表示させた。
「みなさん、頭の中で何が起きていたでしょうか? 私は『見てください』としか言っていませんでしたが、画像の間違い探しをしていませんでしたか?」
仲氏の問いかけにうなずく来場者たち。本セッションでは、仲氏の質問に対して来場者がスマートフォンで回答し、その回答がスクリーンに表示されるという会場参加型アンケートが使用された。
「このようにゲーミフィケーションの要素を使って、ストレスなく楽しみながら人を誘導していく手法を紹介していきたいと思います。『準備ができた! OKだ』という方はスマホ画面のハートをタップしてください」
会場の期待を表すかのように、スクリーンにハートが次々と舞う。
まず仲氏は、「おもてなしとは、お客さまの心に寄り添い、期待以上のサービスを提供することによって、心地よくなっていただくこと」であると語った。
そしてサービス開発で「おもてなし」を実践している、ゲーム業界を例に挙げ解説した。
ゲーム業界ではサービスの継続率を上げる「おもてなし」研究がかなりされてきた。なぜならゲームは娯楽であり、人々の生活に必須ではない。だからこそ、いかに手にとってもらうか、手にとってもらった上で続けてもらうためにはどうすればいいか、ゲームはこうした「おもてなし」をかなり研究して作られている。
この「おもてなし」を見落としていると、ユーザがアプリやサービスの「使い方がわからない」「魅力が伝わらない」ということに陥ってしまう。
ゲーミフィケーションはゲームではない!?
「ゲーミフィケーションはゲームではありません」
まず、仲氏はゲーミフィケーションの核心に触れた。ゲーミフィケーションとは、ユーザを熱狂させ、サービスの活性化を実現する動機付けの仕掛けである。
ただし、ゲーミフィケーションを入れただけでサービスがより魅力的になったり価値が上がったりするわけではない。「サービス自体に価値がなければ、ユーザはそれに気づくと利用しなくなります」と、仲氏は念押しする。
サービス提供者はその価値をしっかりと理解してから、ゲーミフィケーションを適用しなければならない。サービスの「価値を正しく理解」し「ユーザをもてなし」て、価値に到達させることが重要なのである。
ゲーミフィケーションを構成する3要素
一般的なゲーミフィケーションは「課題」「報酬」「交流」の3要素で構成される。
「ラジオ体操も実はゲーミフィケーションです」と仲氏は紹介する。以下のように3要素に当てはめてみるとわかりやすい。
- 課題:毎日行く。夏休みの生活リズムの調整と体力づくり。
- 報酬:皆勤表彰。出席カードに「スタンプ」や「シール」を付与。
- 交流:休暇中の友だちとの交流。1人だとなかなか続かないが励まされる。
また、ゲーミフィケーションの成功例としてよく挙げられるのが、2012年のアメリカ合衆国大統領選挙で使われた「マイ バラク オバマ・ドットコム」。バラク・オバマ大統領を応援しようというサービスで、ソーシャルでの展開や過去最高とされる11億ドル(内5億ドルがデジタルからの献金)を集めた支援金やグループ活動の仕組みなどが話題となった。
- 課題:支援者の拡大。オバマ氏のことを誰かに話そうといったミッションが課される。
- 報酬:サービス内での「レベル上昇」貢献度合いの「ランキング」。
- 交流:グループでのチーム活動。
面白いサービスをつくるゲーミフィケーション10の要素
仲氏が所属するナノコネクトでは、独自研究によってゲーミフィケーション10の要素を導き出し、サービスやアプリの企画・設計段階から組み込んでいる。
このゲーミフィケーション10の要素の中から、面白さを伝えるために欠かせない要素が紹介された。本記事では、セッションで掘り下げられた3要素を解説する。
1つ目は「ファーストキャッチ」である。ファーストキャッチの目的は「サービスを知らないユーザに対し、基本的な使い方を教えてサービスの魅力を理解してもらい、ユーザ自身に使用継続を選択させること」である。
ナノコネクトが導き出したファーストキャッチのタイムリミットは160秒。その間にサービスの基本的な使い方を文章で説明するだけではなく、実際に「体験をさせること」、例えば「体験型チュートリアル」を組み込み、愛着を持ってもらうことが重要だ。さらに、今後サービスを続けていく上で重要なアイテムや情報をユーザに展開することで、「ここで終わるのはもったいない」と感じさせることも有効な手法のひとつである。
続いて、仲氏が面白さを伝えるために欠かせない要素として紹介したのは「平均ユーザレベル」だ。例として挙げた「ソースの絡まったスパゲティ」「秘伝のたれ」という言葉から、来場者に何を想像するか問いかけた。
デブサミの来場者は多くが開発者だ。そのため、「ソースの絡まったスパゲティ」や「秘伝のたれ」から連想されるのは「食べ物」ではない。仲氏は「このように、ターゲットユーザの知識レベルや習熟度等を踏まえた具体的なペルソナを設定し、サービス内での伝え方や機能調整の判断を行うことが必要です」と語った。
最後に紹介したのは、「ゴール設定」について。ゴール設定には「フロントゴール」と「ミドルゴール」の2要素がある。「フロントゴール」とは直近でユーザがとるべき行動を迷わないように配慮すること、いわば受動的な目標設定である。そこから徐々に能動的な「ミドルゴール」へ拡張させ、ユーザ自身に目標を設定させるように設計するのだ。
「指示ではなく、暗示するというのが重要です。指示は嫌がられますが、自分でコントロールしているかのように演出すると面白いと感じます。受動的な活動から徐々に能動的な活動へ拡張するようデザインすることで、継続利用やサービスへの愛着感を持たせることができるのです」
最後に仲氏は、このセッション自体にゲーミフィケーションが組み込まれていたことを明かした。仲氏が登壇してから冒頭3枚の画像を提示し終えるまでの時間が、まさに160秒であった。ちなみに、冒頭の3枚の画像の間違いは、1枚目はキャベツの中にレタス、2枚目は数字の9が混ざっていたが、3枚目は全て同じイラストだった。
ゲーミフィケーションが大いに活用され、会場を盛り上げた仲氏のセッション。次回の「Developers Summit 2019 KANSAI」でも開催される予定だ。興味のある方はぜひ参加されてはいかがだろうか。
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株式会社ナノコネクト