「マネジメントは楽しい」と断言できる理由(2)
2.人を評価することについて、どう考えるか?
「初めてピープルマネジメントをするときに、評価することに対する恐怖感がすごかった」と振り返る山本氏。その危機感から評価制度をしっかりと読み込み、どうすれば納得感を持ってもらえるかと考えたところ、定期的な中間評価を自然と行うようになったという。
試行錯誤の中でたどり着いたのが、“評価の本質とは給与を決めることではなく、期待値と現状認識のすり合わせである”といった考え方だった。人事考課は、あくまでも結果にすぎないのだ。
「評価は、個人の成長やキャリアを支援する行為の1つ。役割分担にすぎないと思えば、心が軽くなりました」(山本氏)
3.マネジメントの中で達成感や成長を感じる瞬間は?
山本氏の考えでは、プロダクトやプロジェクトに対して感じるユーザーが増えた、納期が守れたといった達成感は、プレイヤーとマネージャーの間に差はないが、個人として感じる達成感には少し違いが生じるのだという。
パフォーマンスの方程式を分解すると、プレイヤーとマネジメントでは、成果の出しどころが異なることがわかる。プレイヤーに求められるのは、自身の生産性を上げることであるのに対し、マネジメントに求められるのは、共同作業によるシナジーの最大化である。
「成果の出しどころは違えど、課題を解決する意味では何も変わらない。ただマネジメントの達成感においては直接的な貢献ではないのがもどかしいところではあると思います。とはいえ、マネジメントの達成感や成長は、自分の分だけでなくメンバーの数だけ濃くなる。プレイヤーよりもマネジメントのほうが、達成感や成長を感じるサイクルは早いと思うくらい、楽しい仕事です」(山本氏)
ヤフー流、成長支援で大切にしている2つのポイント
そんなマネジメントの仕事をもっと楽しくするためには、メンバーの成長支援が欠かせない。山本氏は成長支援において大切なこととして、「学ばざるを得ない状態を作ること」と、「成長に気づいてもらうこと」の2点を挙げた。
そもそも成長支援がなぜ必要かといえば、“成長の実感がある”といった理想の状態と、現状の間にギャップがあるからだ。つまり、「1.何をどう学べば良いかわからない」「2.学んでいるはずなのに成長の実感がない」といった状態に陥っていると言い換えられる。
まず「1.何をどう学べば良いかわからない」悩みを抱えがちなのは、組織に新しく入ったメンバーであり、ティーチングが有効であると山本氏は説く。しかし、ティーチングだけでは自発的な行動につながりづらい。そこで学ばざるを得ない状態を作って自らの行動をあおるのだ。
「人は危機感を抱くと行動します。僕もスクラムマスターに進んで手を挙げてしまったときに、相談する相手が周りにおらず、社外のコミュニティに助けを求めました。そんな行動をとったのは初めてです。『自分が勉強しないとみんなに迷惑がかかる』状況になれば、人は必ず行動を起こす。あえてその状況を作ることが大切です」(山本氏)
ただし、その際に注意しないといけないのは、危機感による行動は持続性がない点だ。“学んだことがすぐに仕事に生かせた”といった即効性のあるポジティブな体験を作ってあげることも、同じくらい大切だと山本氏は強調する。
次に「2.学んでいるはずなのに成長の実感がない」のは、ベテランで同じ案件に長くいる人が抱きがちな悩みだ。これにはコーチングが有効であると山本氏は話す。
0→1の変化はわかりやすいが、10→11の変化は差分が小さくわかりづらい。このジレンマを解消するため、ヤフーではエンジニア組織だけでなくすべての部門で1on1を採用している。成長に対する気づきを加速させるためだ。
さらに、エンジニアがアウトプットできる環境作りにも全社で積極的な取り組みを進めており、全国で技術コミュニティを立ち上げ、エンジニアの成長へとつなげている。興味のある人は「connpass」でヤフーのアカウントをウォッチすると良いだろう。
最後に「マネージャーという言葉が悪さをしていると思っているので、今日もなるべくマネージャーという言葉は使いませんでした。僕は、あくまでもマネジメントをするプレイヤーだと思っている。マネジメントの楽しさにフォーカスを当てることで、マネジメントというキャリアを選択肢から外す人を減らしていけたら」と語り、山本氏は講演を締めくくった。
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