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ITエンジニアのためのスパースモデリング入門

スパースモデリングの画像処理への応用~画像の再構成とノイズ除去

ITエンジニアのためのスパースモデリング入門

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 本連載は「これから機械学習に取り組みたい」「ディープラーニングや機械学習を使った経験がある」といったエンジニアに向けて、データ量が少なくても分析が実現できる「スパースモデリング」という手法を紹介します。前回はスパースモデリングの代表的な手法であるLASSOについて解説をしてきました。今回は、辞書学習と呼ばれる手法を紹介し、画像処理への応用について解説します。

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辞書学習とは

 LASSOとは、\(y\)と\(\Phi\)が与えられたとき、\(\frac{1}{2}\|y - \Phi x \|^2_2 + \lambda \|x\|_1\)を最小化するような\(x\)を見つける問題でした。これは、\(y = \Phi x\)に対して、観測値\(y\)は説明変数のうち少ないものの組み合わせで表現できるはずだという仮定に基づいています。

 今回紹介する辞書学習は、観測値が与えられたとき、これらの観測値は辞書と呼ばれる典型的なパターンが少数組み合わさることで表現できるはずだという仮定に基づいています。

 辞書学習では、観測値をいくつか集めてきて行列\(Y\)を作り、ここから、\(Y \approx DX\)となるように、典型的なパターンを意味する辞書の行列\(D\)と、辞書の少数の組み合わせ方を示すスパースコードの行列\(X\)に分解を行います。

 このような行列の分解を行うアルゴリズムはいくつか知られており、スパースコードを\(L_1\)正則化を使って求めるscikit learnに実装されている方法や、\(L_0\)正則化を使って求めるMODアルゴリズムやK-SVDアルゴリズムなどがあります。ここでは、シンプルで強力なK-SVDアルゴリズムを使ってみましょう。

K-SVDアルゴリズム

 K-SVDアルゴリズムは、scikit learnなどには実装がないため、筆者がコミッタをつとめるオープンソースのスパースモデリング用のライブラリであるspm-imageを使うことにします。

 まずは、ランダムな100 x 200の行列\(Y\)を作って、それにK-SVDアルゴリズムを適用してみましょう。実装の都合上、行優先(Row-major)で、\(Y \approx XD\)と扱われることに注意してください。つまり、\(Y\)は200次元の観測値を縦に100個並べたものと解釈します。

 そして、以下のコードを実行することで、100 x 50のスパースコードの行列\(X\)と50 x 200の辞書の行列\(D\)が得られます。

import numpy as np
from spmimage.decomposition import KSVD
Y = np.random.rand(100, 100)
ksvd = KSVD(n_components = 50, transform_n_nonzero_coefs = 5)
X = ksvd.fit_transform(Y)
D = ksvd.components_

 得られたスパースコードの行列\(X\)と辞書の行列\(D\)を可視化した様子です。\(D\)の各行を辞書といい、これが、観測値\(Y\)を構成するための少数のパターンを表しています。\(X\)はほとんどの値が0の疎な行列となっており、\(X\)の\(i\)行目は、\(Y\)の\(i\)行目の観測値を表現するための辞書の組み合わせ方を示しています。

スパースコードと辞書
スパースコードと辞書

 しかし、残念ながら、今回の観測値\(Y\)はランダムな行列であるため有益な辞書は得られていないようです。これは、再構成誤差\(Y - XD\)を計算してみると、その誤差が大きいことからわかります。実際、\(Y\)は各要素の値が0~1のランダムな値ですが、再構成誤差\(Y - XD\)について、MAE(Mean Absolute Error、平均絶対誤差)を計算してみると、

np.mean(np.abs(Y - X.dot(D)))
0.12821788379791452

 が得られ、これは無視できない大きさであることがわかります。

 辞書学習では、観測値は辞書と呼ばれる典型的なパターンが少数組み合わさることで表現できるはずだという仮定に基づいていますが、そもそもこの仮定に当てはまっていないものに対しては意味のある結果を得ることができません。では、どういうときに使えばいいのでしょうか。その一つとして、画像データへの応用があります。

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この記事の著者

増井 隆治(株式会社HACARUS)(マスイ リュウジ)

 中学生の頃からプログラミングに興味を持ち、鈴鹿高専で情報学の基礎を学び、その後京都大学に編入し、より高度な数学を学ぶ。大学の実験で仲良くなった大関先生の紹介でハカルスでアルバイトを始める。3年間のアルバイトの後、2019年4月にハカルス初の新卒として入社。データサイエンティストの仕事に邁進している...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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