ワナその5「ステークホルダー間のコンセンサスがとれていない」
「HRT」が重要なのは、何も現場のチーム内に限ったことではありません。経営の立場でプロジェクトに責任を持つ人々とプロダクトチームとの間にも謙虚、尊敬、信頼がなければ、価値あるプロダクトを作って世に出していくことは難しくなります。
よくあるケースとしては、現場がユーザー体験の理解を通じて綿密に作り上げた「A案」が、経営陣のレビューを経て覆され、ビジネスモデルとしては壮大な、しかしどう考えてもうまくいきそうにない「B案」として承認されてしまうような状況が挙げられます。もちろん、現場としては「B案」に納得していません。心の中では「絶対にうまくいかない」と思いながらも、なぜか「B案」は「決定事項」と認識され、以降のプロダクト作りは経営陣に対する「完全服従」か「面従腹背」のどちらかのスタンスで、どんよりと進んで行きます。その結果として世に出るプロダクトに、どれだけの価値があるのかは容易に想像できます。
「もし相手のアイデアに納得できなければ、ちゃんと話をして、互いの考えを理解しあうプロセスが、プロダクトづくりをうまく進める上で不可欠です」(小野さん)
たしかに、会社の中でより強い立場にある人に意見をするというのは簡単なことではないかもしれません。場合によっては相手に「反抗的」と捉えられてしまう恐れもあります。しかし、もし「あの人は話が通じないから」「年寄りには若い人の気持ちが分からないから」といった思い込みで、対話を避けているのだとしたら「それこそ、HRTの欠如だ」と小野さんは指摘します。
「規模のある企業で、それなりの立場に就いている人というのは、ほとんどの場合、相応の人間力、コミュニケーション能力を備えているものです。まずはこちらが謙虚になり、相手の実績をリスペクトした上で向かい合えば、対話が成立しないことは、まずありません」(小野さん)
その際のポイントは、「なぜ、あなたはそう考えるのか?」という問いで、まず「相手の考えを聞く」ことです。先に相手の考えを聞き、その内容を受け止めながら、自分たちの考えを「カウンターパンチ」のように当てて、落とし所を探っていきましょう。その際、このプロジェクトで作ろうとしているものが「誰のどんな喜びに寄与するプロダクトなのか」という原則を、ぶれずに自分たちの意見の根拠とすることが大切です。
こうした「社内コミュニケーション」のスキルは、たしかに一朝一夕で身につくものではないかもしれません。しかし、自分たちの関わるプロダクトをより価値の高いものにしていくことに責任を持つPdMであれば、積極的に身につけていくべき能力とも言えます。
