イベントを通じて、「効率」と「能率」を高める
イベントの場が、なんとなくの馴れ合いになってしまったり、行き当たりばったりのコミュニケーションになってしまってはせっかくの投資が台無しです。「何を高めるイベントなのか」を設計することで、イベントの効果を高めることができます。
ここでは、「効率」と「能率」という観点をご紹介します。
効率は成果創出の生産性を表しており、これを高めることで、チーム全体のパフォーマンスが向上し、より効率的に価値創出ができるようになります。一方能率は、個々人のモチベーションの高さを表しており、これを高めることで個々人の意欲が向上し、より前向き・前のめりに業務に取り組めるようになります。
効率と能率は、注意しないとトレードオフに陥りやすい構造にあります。組織成果を向上させるために過度に効率を追求すれば、個々人の負荷が大きくなり、モチベーションは低下しやすくなります。一方で、個々人のモチベーションを尊重して過度に能率を追求すれば、ひとりひとりの意欲は高まりますが、組織全体の統制がとれなくなり、生産性は低下します。
どちらも重要だからこそ、意識的に両者を高められるようにイベントを設計することが求められます。
実際に設計している4つのイベントを紹介
ここからは、私が所属している開発チームで実施しているイベントを紹介していきます。具体的に行っているのは、次の4つのイベントです。これらを期初のタイミングでミーティングを抑え、時間を確保。カレンダーに組み込んでいます。
- キックオフ:四半期ごと(効率70%/能率30%)
- 納会:四半期ごと(効率30%/能率70%)
- ビジネスKPI共有:月次(効率100%)
- エピソード共有:週次(能率100%)
キックオフ(効率70%/能率30%)
キックオフは、四半期ごとの期初に2時間程度実施しています。
会社全体および開発組織全体の戦略・方針をふまえ、プロダクトとして何に注力し、どのようなスコープ・スケジュールで開発を進めるかの認識合わせをする場です。
そのため比較的効率系のコンテンツが多く、戦略・方針の共有や、チームとしての注力ポイントのすり合わせ・議論に時間を使います。加えて、新規ジョイン者との相互理解や、3ヵ月間のコミットメントの共有などを、能率系のコンテンツとして組み込んでいます。
納会(効率30%/能率70%)
納会は、四半期ごとの期末に2時間程度実施しています。
ビジネス面での進捗や、3ヵ月間の開発を振り返ったうえでのGood/Moreの振り返りを効率系のコンテンツとして組み込んでいます。しかし、ここはあくまでも共通認識を作るための共有の時間で、メインとなるのは能率(=個々人のモチベーション)を高めるための時間です。
各人の成長にスポットライトを当てたり、チームメンバー同士で3ヵ月間の感謝を伝え合ったり。あるいは、セールスやカスタマーサクセスチームからメッセージをもらったり、顧客から届いた感謝の声を共有したりと、チームの頑張りを称え合う時間を長めに設けています。
ビジネスKPI分析(効率100%)
クライアントごとのサービス利用状況について、月次サマリを照らし合わせながら、プロダクトとしての価値探索や課題発見を行う時間です。
もちろん、各種KPIの測定・分析は日常的にも行っています。それに加えて、時間軸を伸ばした分析を定期的に行うための「イベント」として、こういった会議を設け、さまざまな角度からクライアント・ユーザーの声と向き合うための仕掛けを施しています。
エピソード共有(能率100%)
以前の「行動指針」の記事でもご紹介した、行動指針にまつわるエピソード共有の時間です。ここは、業務プロセスの改善や各種課題解決についてはあまり考えることなく、それぞれの取り組みや感じたことのシェア自体を目的にしています。
リモートワークが当たり前になり、それぞれの顔も見えない働き方が続いているからこそ、チームメンバーの努力や貢献、日々の成長を互いに理解するための時間を大切にしています。
いかがでしたでしょうか。
チーム単位で見ても、個人で見ても、モチベーションを高め安定させるのは非常に難しい取り組みです。とくに「前向きな気持ちで頑張る」といった各人の意識やマインドに頼ったソリューションは、機能しないことがほとんどです。
だからこそ「イベント」という節目を活用することが、チームに一体感と推進力を生み出すことにつながります。
ぜひ、ご自身のチームの状況を振り返りながら、参考にしてみてください。