男性が多い職場で働く女性のメリットとデメリット
では実際に女性が管理職や活躍を目指した場合、どんな姿があるのか。具体的に見ていこう。ワークポートが実施した調査によると、30代女性はプレイヤー、スペシャリスト、エキスパートを目指している人が多い。何らかの専門性や競争力を高めて活躍したいという意向がうかがえる。
宇留野さん自身もスペシャリスト志向を持っていた時期があったが、今は「どちらかというとプレイングマネージャー志望」だという(なおプレイングマネージャーとは野球で選手兼監督を務めるプレイヤーを指していたのがはじまりで、現場業務とマネジメントの両方を担う人を指す)。とはいえ「完ぺき主義なのでプレイヤーとマネージャーの両立を困難に感じる」という不安を抱えつつも「どこで妥協するか、妥協した自分を許せるかが今の課題」と話す。
管理職の先に何が待っているかも分からないという暗中模索のなか、宇留野さんは「なぜ私?」の答えを自分なりに探そうとしている。まずは同僚たちに宇留野さんの魅力を聞いてみたところ「愛嬌がある」「優しそう」という人間的な魅力が並ぶ。ほかにも「意志が強い」「忖度しなさそう」「行動が早い」「激務に耐えられそう」などの職場のリーダーに向いていそうな強さを挙げる人もいた。後者については「男性だらけの環境でキャリアを積んできたから」と自負している。
IT業界にいれば言わずもがなだが、男性が多い環境だ。徐々に女性の比率は高まっているものの、情報サービス産業協会(JISA)の調査によると、女性のITエンジニアは20%。ITエンジニアが5人いたら、男性が4人、女性が1人となる。
ここで宇留野さんは男性が多い職場で働くメリット・デメリットを考えた。Webメディア「にじいろ」の記事で紹介されているものを挙げると、メリットには「大事にしてもらえる」「良くも悪くも目立つ」「女性社員という強みを使える」(先述した政府の女性活躍推進の追い風を受けることも含まれる)、デメリットには「少なからず男尊女卑がある」「女性特有の体調不良を理解してもらえない」「衛生観念の違いが気になる」などがある。宇留野さんは「どちらも共感できます」と言う。
宇留野さんは自身の経験として、社内のゴルフコンペで幹事をした時のことを挙げた。参加者10名が全員男性だったため、宇留野さんは完全に紅一点となり「とてもかわいがられている」と実感した。そのため宇留野さんは自分を「男性が多い環境を拒絶するなど、男性が多いからこそ生まれるメリットをあえて活用しないタイプではない」と言い、同時に「デメリットを黙って認めるタイプでもない」と言う。
実は宇留野さん、負けず嫌いの一面もあるようだ。年上の男性社員との議論で女性蔑視的なものを感じとり、ホワイトボードの黒板消しを投げつけてしまったことがあると告白した。男尊女卑的な空気には敏感だ。とはいえ「とてもよくないことですので、皆さんはまねしないでほしいのと、私も反省してます……」と肩をすぼめて言う。
最も答えを知っていそうな人はどうだろうか。宇留野さんを抜擢した社長は「女性ならではのメリットを活かせて、デメリットへの突破力がありそうだよね」と言ったそうだ。この両軸があるからこそ「(U30となる)29歳で管理部長を任せてもよさそうで、かつ顧客には組織変革などのミッションを与えてもいいだろう」と。
当の宇留野さんは管理職や出世の近道として大切なことは3つあると考えている。1つ目はフットワークの軽さ。(年上の男性ばかりが並ぶ)ゴルフコンペに参加しようと思える行動力がある。2つ目は業務のプロフェッショナルとなり、普段の業務では手を抜かない、きちんと結果を出していくこと。3つ目は嫌なことがあっても会社を休まない・辞めないこと。根気強さ、タフさも大事だ。
チェンジモンスターにも負けず、クライアントの満足度を追求
ここからは管理職に就任した以降の話。新しい管理職が若く、しかも女性だということで本人には「総スカン状態」(皆から嫌われて孤立する)と感じられるところもあった。抵抗勢力はいわばチェンジモンスターだった(ボストンコンサルティングが変化や改革を妨害する人間心理をモンスター風に表現したもの)。
原典によるとチェンジモンスターには6種類以上あるものの、宇留野さんが「こういう人、いたかな?」と思い当たるのが「ノラクラ(言い訳をして変革を回避)」と「カコボウレイ(従来のやり方をやめない)」の2つ。改革や変化はフラストレーションがたまるし、適応に時間もかかるし「気持ちはすごく分かる」と宇留野さんは同情を示しつつも、抵抗は打開していかなくてはならない。
宇留野さんなりの作戦はいくつかあった。直接対決するのではなく、「ノラクラ」には迂回したり、「カコボウレイ」にはメンバーを増やしたり、大きなルールから変えていく。つまり「(変革)せざるを得ない状況を作る」ようにしていった。
加えて「クライアントが一番大事」と強調する。クライアントとは顧客はもちろん、社長も加わる。なぜかというと「誰をグリップすべきかが大切」だからと言う。仕事で優先度を高くすべきところを見極め、そこに集中することと言い換えられそうだ。宇留野さんの仕事でいうなら「顧客満足度の追求」があり、ここに必要な施策を次々と行う。
こうした努力のせいか本人には「総スカン」と見えたかもしれないが、クライアントから厳しい評価はなく、離れたクライアントもいない。むしろ喜ばれているそうだ。「クライアントが一番大事」を貫いたからだろう。
「社外評価も大事」と宇留野さんは言う。今回のようなイベント登壇、社外でも通じる資格試験も重要だ。実は宇留野さんは新卒2年目でMicrosoft MVPも受賞している。かなりの努力家だ。最後はそんな宇留野さんからのメッセージで締めくくろう。
「(管理職となり)やっぱり周囲からの風当たりは強かったです。自分の判断で決まることもあるので孤独かもしれません。ただ大事なことに気づけました。なぜ自分が管理職になったのかを考えると、社員や社長からどう思われているか気づくことができて、いい機会となりました。今日はネガティブな話もしましたが、今は本当にやってよかったと楽しい気持ちでいっぱいです! ぜひ皆さんも希望を持ち、管理職女子を目指していただけたらと思います」
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