世界はあまりに速く変化を続けている
Alistair Cockburn博士は、1991年からソフトウェア開発の方法論を研究している人物であり、2001年に「アジャイルソフトウェア開発宣言」の共同執筆に参加した、アジャイル開発の第一人者だ。博士は、最近になってアジャイルのアイデアをソフトウェア開発以外の分野でどう生かせるのかという議論が面白くなっており、世間の注目を集めているという。そして博士自身も2015年頃から、アジャイルのアイデアをより凝縮してシンプルにすることで、ソフトウェア開発以外の現場に応用する方法を探していたと語る。
ここで博士は、アジャイル(agile)という言葉の意味を再確認する。辞書によると「素早くかつ容易に行動し方向転換する力」(Ability to move and change direction, quickly and with ease)ということになる。博士は、ソフトウェア開発現場以外でアジャイルを活用するときは、アジャイルという言葉の本来の意味が基礎になるという。「アジャイルソフトウェア開発宣言」はソフトウェア開発のために書いたものであり、ほかの職種の人たちがアジャイルを活用する場面には合わない、アジャイルという言葉の意味が分かれば本質をつかめるということだ。
さらに博士は、アジャイルがさまざまな職種の人々から注目を集めている理由として、世間が変動しやすく(Volatile)、不確実で(Uncertain)、複雑(Complex)、そして曖昧に(Ambiguous)なったからだと指摘する。これら4つの言葉の英語の頭文字を取った「VUCA」という言葉を耳にしたことがあるという方は少なくないだろう。
博士は「2年先まで計画を立てて、計画通りに進むと思えた時代もあったが、そのような時代はとっくに終わっている。そのことを端的に示しているのが、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大だ」と指摘する。そしてあまりにも速く変化を続ける世界に対応するには、すべての企業、組織、部署、そして個人が「素早くかつ容易に行動し方向転換する力」を高めなければならないと強調する。つまり、アジャイルを理解し、実践するということだ。