顧客企業の課題を解決するために、コンサルタント教育を実施
Adecco Groupの一員として、ITやR&D領域のエンジニア派遣・請負・およびコンサルティング事業を手掛けるModis。「人財の創造と輩出を通じて、人と社会の幸せと可能性の最大化を追求する。」を理念に掲げ、IT・情報システムやメカトロニクス、エレクトロニクス、バイオ・ケミストリーと領域を絞らず多彩なテクノロジーソリューション事業を展開する、エンジニアにおけるスペシャリスト集団だ。①基礎技術の向上、②コア技術のマルチ化、③先端技術の習得を育成方針とし、エンジニアスキルに応じてセキュリティ、ネットワーク、サーバ、ソフトウェア、データサイエンス等、さまざまな技術領域における研修を提供している。
そんなModisには、コンサルティング力と技術力を備えたエンジニアが問題を解決する「バリューチェーン・イノベーター」というユニークなサービスがある。技術を身に着けたエンジニアが、顧客の課題を見つけ出し、改善提案から実行までを一貫して担うというものだ。
この課題解決のためには、コンサルティングやマネジメントの知識が必要となるが、Modisでは中小企業診断士の試験範囲について社内研修やeラーニングで学べる環境を整えているという。倉田氏は「Modisは多くのエンジニアを擁し、その人財育成を重視している」と強調した。
開発エンジニアとしての改善提案を機に、ITコンサルタントとして参画
現在ITコンサルタントとして活躍する惠 英里奈氏も、そうしたModisの研修カリキュラムを受けた一人。開発エンジニアとして2017年に入社し、ソフトウェア分野のエンジニアとしてプロジェクトリーダーを担い、要件定義からリリースまでを一貫して対応してきた。2019年下期からはITコンサルタントとして、不採算部門の立て直しやIT部門における経営課題を解消する業務に従事している。
惠氏は、事務職を希望して就職活動をはじめたものの、リーマンショック後の就職氷河期で募集がなく、たまたま募集のあったIT企業に入社。当時はWordが少々使える程度でITの知識はなく、テスターとしてキャリアをスタートしたという。しかし、任されたのは誰でもできるようなテストばかり。「このままではスキルが身につかない」と危機感を覚えた惠氏は、システムの詳細設計ができる場を求めて転職。その後、上流工程を担える環境を求めてModisに入社したという。
「1社目・2社目とも、教育環境がなかったため、自分でなんとかするしかなかった。当時から上流を担えるエンジニアになることを志向していた。Modisにはそうした案件が豊富にあったこと、そしてキャリアプランナー制度で自分が目指す方向へ支援してくれることが、入社の理由となった」と惠氏は振り返る。さらに面接官が「話を聴いてくれる人」であり、エンジニアを大切にしてくれそうだという確信が得られたことも大きいという。
その後、開発エンジニアとして、スマホアプリ開発においてベンダコントロールを行い、要件定義以降を全て請け負ってリリースまで完遂するというプロジェクトに参画。その際に、顧客側の開発本部長が子会社の代表取締役社長に就任し、プロジェクト時の上長とともに事業の立て直しから経営コンサルティングまでを実施することとなった。
惠氏は「コンサルタントになろうというより、縁が重なってコンサルタント的な仕事をすることになった。それもエンジニアとしてだけでなく、小さなものから大きいものまで数年に渡ってさまざまな課題を解決することに尽力してきた。役務提供のみならず、コンサルティングもできるのだという認識と信頼感を持っていただけたことが大きい」と経緯について語る。中でも印象に残っているプロジェクトとして、人事給与システムなど基幹システムのリプレースと人事BPOの立ち上げ支援をあげた。
プロジェクトには、システムを導入する部隊とは別に、ユーザー側の立ち位置で参画し、必要となる人事のインプット情報の整理、全体的な業務の設計、問い合わせ窓口の整備を手掛けた。これらは、顧客とともにプロジェクトを進める中で課題として発見されたものだという。さらにシステムが変わると同時に使う人も変わること、プロジェクト自体が1年も遅延していることなど、課題の多い状況だった。
しかしながら、ユーザー側と開発側で主張するポイントが異なっており、意思疎通ができなかった状況下で、惠氏は間に立って橋渡し役としての存在感を発揮。ITについて知る人がユーザー側に立って、業務とITの仲立ちをすることの価値を実感したという。
業務とITの橋渡し役として、地道な姿勢と関係づくりが重要
一方で、コンサルタントとして活動するポイントとして、惠氏は「立場の難しさ」を挙げる。コンサルタントになることで警戒されてしまい、エンジニアとして開発側にいた際は得られていた情報が得にくくなった。特に新しく着任した代表によるトップダウンでのプロジェクトでは、そこに紐付いたコンサルタントとして反発されるなど、社内的な軋轢にも苦しんだという。
「情報を得るための関係構築をしっかり図る必要があることを実感した。そのためには、言葉遣いについても専門用語を使わないように留意するなど、細やかな配慮が求められた。意見や見方が異なる中でさまざまな方面から情報を得つつ、本当のところを見極めることも難しかった」と惠氏は振り返る。
多くの苦労がありつつも、惠氏が「やりがいある仕事」と言い切るのは、経営課題だけでなく現場の課題解決にも貢献でき、大きな充足感が得られるからだという。
その1つとして惠氏は、キャッシュレスのシステムインフラの再建を担った事例を紹介した。当初は監視・運用業務だけを依頼され、改善活動をしなくてよいという前提で参画したが、ビジネスの伸長にも関わらず会社と組織の対応が追いついていない状況で、問題が顕在化していた。そこで、監視の外注化という改善提案を行い、クレームの多かった監視レベルの向上、担当者の業務負荷の軽減などを実現。サービス品質の向上に加えて、労働環境の改善による離職率低下にもつながり、経営だけでなく現場の課題解決を実現できた達成感があったという。
こうした惠氏の経験を踏まえ、倉田氏は「エンジニアからITコンサルタントになるために必要なこと」として、次の3つをあげた。
- 情報のインプットが大事、信頼関係の構築がベースに
- 複雑な問題を整理するには、目が行き届かない領域にも目を向けて対応していく
- 地味で泥臭いことでも、地道にコツコツ最後までやること
そして、「派手な提案をするという仕事ではなく、どうすれば解決できるのかの小さな要素を地道に見つけて整理していくことが大切。コンサルタントだからというだけでなく、これらの基本的な姿勢をもって取り組んでいくことが重要」と評した。
そして、最後に惠氏は、「いきなりITコンサルタントになって大きなプロジェクトを任されているわけではない。エンジニアのときから小さな問題を解決し、コツコツと積み重ねていくことで、大きな成果を得られるようになってきた」と語り、「これからITコンサルタントを目指す方は、ぜひ小さな課題解決からチャレンジしてみてほしい」とメッセージを送った。