コンポーネントの積極的活用で"Excelライク"なシステム化を実現
続く2つめのセッションには、システムコーディネイトの赤羽根雅樹氏が登壇。「"Excel業務"を"Excelライク"にWebシステム化した話」と銘打つ講演を行った。システムコーディネイトは1983年に設立され、2023年には40周年を迎える、いわば老舗SIerで、システムにかかわるコンサルティングから設計・開発、運用保守に至るトータルなフェーズを網羅したサービスで顧客のIT活用を支援している。
今回のセッションでは、同社がある顧客において取り組んだ、Excel業務のWebシステム化にかかわる事例が紹介された。この顧客がWebシステム化により実現したいと考えていたのは次の3つの要求からだ。すなわち、メールにより日々やり取りされているExcelファイルの授受にまつわる手間の軽減、それらファイルの取りまとめにより実施される集計作業の効率化、そして集計された情報のリアルタイムな共有である。
「これらはいずれも、基本的にはExcel業務のWebシステム化を実現することで、特別な工夫を必要とせず解決できるものだったのですが、一方でこのお客さまでは、既存業務における3つの点をWebシステム化後も継承していきたいと要望されていました」と赤羽根氏は語る。その1つめが、データ入力について従来Excelで行っていたのと同様の操作感を踏襲したい、2つめは各人が手元で自由に実施しているExcel上での集計・分析、シミュレーションを引き続き行いたい、そして3つめが集計結果にかかわる表やグラフを極力そのまま会議資料として配布したいというものである。
まず、1つめのExcelライクな操作感の実現についてシステムコーディネイトでは、グリッドライブラリを活用するという方針を固め、検討の結果、顧客が別システムで利用していたグレープシティの「Wijmo」の採用を決めた。
「Wijmo自体は、業務アプリケーションの広範な要件に応える各種UI部品を備えるJavaScriptライブラリのスイート製品ですが、そこに含まれる『FlexGrid』や『FlexChart』といったグリッド、チャート/グラフ部品も強力で、その活用により例えば右クリックによるメニューから行の追加や削除を行える機能や、ドロップダウンメニューによる項目選択などの機能を実装するなど、Excelに近いリッチなUIを実現することができました」と赤羽根氏は紹介する。あわせて、Webシステム上に表示された表やグラフを同形式でExcelファイルに出力できる機能もWijmoを使って実装。会議資料として即座に活用できるようにした。
一方、ユーザーによる集計・分析、シミュレーションの実施については、サーバーサイドのデータを使ってExcelファイルを生成し、ユーザーが必要に応じてダウンロードできる仕組みを整えた。そこではグレープシティの「DioDocs for Excel」を採用し、開発に役立てている。
「DioDocs for Excelは、Excelファイルの作成・編集にかかわる支援機能を備えるライブラリですが、プログラムで表やグラフのレイアウトを作成することができるほか、必要な構文をテンプレートファイルとして用意してセルに埋め込み、データソースからそこに所定のデータを適宜当てはめていくという使い方が可能。行や列の追加などもテンプレートファイルから判断してDioDocs for Excelが自動的に対応してくれます」と赤羽根氏は語る(図2)。
このようなライブラリ製品を活用するというアプローチを核に、顧客におけるExcel業務のWebシステム化を支援したシステムコーディネイトでは、工期、品質面でスクラッチ開発を凌駕する大きなメリットが得られたものと評価している。