エンジニア向けセッション多数、レベル・目的に応じて選択しよう
毎年述べ数万人ものエンジニアが参加する「AWS Summit Tokyo(以下、AWS Summit)」、2023年は4年ぶりに幕張メッセでリアル開催となる。2日間で150を超えるセッションが予定されているため、同じ時間帯に多数のセッションが並行して発表される。
オンラインではなく会場参加なら、移動時間も含めてしっかり計画しておく必要がある。事前に「自分はAWS Summitで何を学びたいのか、何を持ち帰りたいのか」、目安を決めておくといいだろう。情報収集するにしても、自分の得意分野をさらに極めるのか、あるいは未知の領域を開拓するのか。限られた時間を存分に味わおう。
セッションは全部で150超。大きく分けてAWSのエキスパートが各種テクノロジーを解説する「AWSセッション」、AWSのパートナーが技術や取り組みを語る「パートナーセッション」、AWSの顧客がAWSの導入事例を語る「事例セッション」に分けられる。なかでもAWSセッションは58セッションが予定されており、コンピューティングやアナリティクスなど技術視点のもの、公共や製造業など業界視点のもの、Web系のデジタルネイティブビジネスのものが用意されている。
それぞれのセッションには、難易度に応じてレベル(数字)が割り振られている。クラウド初学者のための入門編が「200」、中間が「300」、上級者・実践者向けの詳細解説が「400」となる。また、AWSセッションでは「Ask the Speaker」として登壇者に直接質問できるコーナーを展示会場内のAsk an Expertブース内に設けている。
例えば、これからクラウドを使い始めたい方におすすめのレベル200のセッションは、次のようなものがある。
- Amazon EC2のイロハとコスト最適化のキモ(AWS-01)
- AWSネットワーク管理をステップアップしたい方に送る、次の一手(AWS-03)
- AWSでのデータ活用を加速するデータ連携のパターンとベストプラクティス(AWS-07)
セッションの中にはインフラエンジニアだけではなく、データエンジニア・アプリケーションエンジニア向けのセッションもある。
- データエンジニア向けセッション
- アプリケーションエンジニア
AWSセッションの企画をリードしているソリューションアーキテクト エンジニアチーム 本部長 千葉悠貴氏は「セッションにおいて、お客様の課題やニーズに対するソリューションをしっかり共有するということを意識しています。加えて、AWSをご利用のお客様やAWSに興味があるエンジニアだけではなく、世の中全てのエンジニアに価値あるコンテンツを発信しようと考えています」と話す。
それぞれのレベルや関心に応じて「見どころ」は異なるものの、興味深いのは昨年好評だった「アーキテクチャ道場」。このセッションは、AWSのソリューションアーキテクトが仮想のシステム要件に対して、AWSのベストプラクティスを前提としたアーキテクチャを提案し、どういった考慮事項を踏まえてこのアーキテクチャを選定したのかを解説するものだ。
他にもショッピングサイトとしてのAmazon.comの事例や、サステナブルなアーキテクチャをどう進めていくのかを紹介するセッションも見どころになりそうだ。
また、AWSを使っている/いないに関わらず参考になるセッションは以下の通り。
- Amazonの事例から学ぶObservability活用におけるベストプラクティス(AWS-06)
- サステナブルなアーキテクチャをはじめませんか? AWSが考えるサステナビリティジャーニーの3つのステップ(AWS-58)
千葉氏は「ここ数年はオンラインのみの開催でしたけども、実際に足を運んでいただくと、世の中のエンジニアたちのAWSに対する熱量を感じていただけるかと思います。オーディエンスの皆様には現在抱えている課題の解決方法や、関与している事業の成長を成し遂げるためのヒントを持ち帰っていただきたいです。翌日から使えるイノベーションのきっかけをつかむカンファレンスとしてぜひご参加ください」と呼びかける。
見て・触れて・学ぶ「デベロッパーラウンジ」、IoTや機械学習体験も
AWS Summitでは180もの展示コンテンツが予定されている。会場は、ホール5から8までを使った広いエリアが用意されている。展示というとAWSまたはパートナーのプロダクト紹介というイメージがあるものの、それだけではない。エンジニアの学びのために楽しめる空間もあり、リアルならではの交流も楽しめる。
展示エリアにあるエンジニア向け企画として挙げられるのが、「Developer Lounge」内の「builders.flash EXPO」「クラウド開発ミニセッション」「Community Kiosk」である。
Developer LoungeはAWS Summit初の試みとなる。本展示の企画に携わるシニア IoT スペシャリストソリューションアーキテクト 三平悠磨氏は「まだAWSを触ったことのない初心者のエンジニアの方から、既にAWSをも活用いただいているようなエンジニアの方まで、楽しみながらクラウド開発について学べるような展示」と語る。
Developer Loungeの中でも目玉となるのが、builders.flash EXPOのガジェットを使った展示だ。Raspberry PiやM5Stackなどの簡単に手に入る定番のデバイスにAWSサービスを組み合わせたガジェットが多数展示されている。例えば、クラウド経由でリモート操作できる小さなコミュニケーションロボット、戦隊ヒーローの変身ポーズがどれだけ決まっているかをモーションデータを用いた機械学習で判定する変身ベルトなど、楽しみながらAWSサービスを組み込んだガジェットを触ることができる。
大抵のガジェットの作り方やサービスの実装方法は全て手順が公開されているので、初心者でもその通りに作業することで、実装ができる。自分の手で作ることを体験すると、IoTや機械学習などでいろんな発見があり、これからのヒントになるだろう。
Community Kioskは、AWSコミュニティに参加しているユーザーが交流する場となる。AWSはコミュニティもすごく活発だ。コミュニティで活躍しているユーザーに直接会い、話しをすることでいろんな刺激をもらえるだろう。
なお、6月には開発者向けカンファレンス「AWS Dev Day」が予定されている。Developer Loungeでは、連動企画としてクラウド開発ミニセッションがあり、人気の高い技術領域のミニセッションやトークが開催される予定だ。他のエンジニアが何に注目しているかを肌で知るというのも面白い。また、ミニセッションの内容についてスピーカーに質問することもできるので、この機会に最新の技術領域について質問してみるといいだろう。
三平氏は「私もAWS入社前はソフトウェアエンジニアとして開発していました。エンジニアの皆さまは日々設計、開発、運用で忙しい日々を送っていると思います。そのなかでAWS Summitへ足を運ぶことにより、開発の学びや新しいヒントを得られると思います。ぜひ自分自身への投資としてAWS Summitへお越しください。そしてデベロッパーラウンジでは何でも質問してください。できる限り相談にのりますので」と話す。
カオスエンジニアリングを実体験できる「GameDay」
AWS Summitで注目の企画となるのがAWS GameDay。かつてのAWS SummitやAWS Startup Loft Tokyoで開催されたことがあったものの、近年ではコロナ禍で限定的な開催のみとなっていた。
一般的に「カオスエンジニアリング」と呼ばれる手法がある。わざとサイトに障害を発生させて、エンジニアが原因究明や対策を施す。こうした疑似障害訓練を通じてWebサイトの可用性やセキュリティを改善させるのが狙いだ。
AWS GameDayは、このカオスエンジニアリングを実体験するいい機会となる。AWSではアメリカの年次イベント「re:Invent」では一般参加できる競技として「AWS GameDay」を実施している。
AWS GameDayの準備に携わる、ソリューションアーキテクト DevAx 金森政雄氏は「AWS GameDayは、自分が持つスキルの確認になりますし、普段経験していないサービスを実際に稼働している環境で触れられる機会にもなります」と話す。
AWS GameDayでは、AWSが用意した環境で障害対応など何らかのシナリオがあり、チームを組んでミッションをこなす。例えばCI/CDのパイプラインの設定が間違っており、システムに正しく変更が反映されないというようなシナリオが用意される。与えられたミッションをできるだけ早く、有効に達成することでチームはポイントを獲得する。そのポイントで競う。
一般企業が自社の本番環境でこうした訓練をしようとしても、なかなかできない。細心の注意を払い、準備や計画をしなくてはならないからだ。勇気も要る。しかし、AWS GameDayでは、AWSが事前に疑似的なサービスが稼働している環境を用意してくれるので、安心して気軽に参加できる。
AWS Summitではこの「AWS GameDay」に参加できる。実際には2022年のre:Inventで実施したシナリオを翻訳したものになる。個人で参加できて、参加者はランダムにチームが割り当てられ、シナリオに立ち向かう。競技となっているので、優秀なチームには何らかの表彰がある。すでに満席となってしまっているようだが、当日キャンセルが出た場合は飛び入り参加も可能。もし興味があるなら当日キャンセル待ち状況をチェックしてみてはいかがだろうか。
ミッション克服に向けて当然ながら技術力が必要になるが、ランダムにチームが割り当てられるため、役割分担のリーダーシップ、コミュニケーションなどのソフトスキルを発揮する場にもなりそうだ。互いにいい刺激を与え合うことになるだろう。
金森氏は「ここ数年、対面での大きなイベントがありませんでした。ぜひ現場に足を運び、参加者同士のダイレクトなコミュニケーションを通じて、互いにコロナ禍の3年間で学んだことを共有しあえるといいと思います」と話す。
※本記事の内容は取材時点のものとなるため、開催までに内容を変更する可能性があります。