必要な環境
本記事のサンプルコードは、以下の環境で動作を確認しています。
- Windows 11 Pro(22H2)
- ActiveReports for .NET 16.0J(16.2.0)
- .NET SDK(6.0.413)
- Node.js(18.17.1)
- Visual Studio 2022(17.6.5)
- Windows Subsystem for Linux 2(Ubuntu 22.04.2)
対象読者
- Webページに帳票出力機能を実装したい方
- バックエンド開発が得意な方
- クラウドサービスで帳票アプリケーションを公開したい方
概要
行政サービスのデジタル化推進のために日本政府が提唱するのが、クラウド活用を前提とした大規模なIT基盤であるガバメントクラウドです。国の全ての行政機関や地方自治体が共同で行政システムを利用できることを目指しています。現在もバラバラである業務システムの開発・運用を標準化し、クラウドサービス上で共通化して運用することによるシステム間の差異を軽減し、インフラ導入や管理のコスト削減などのメリットが期待されています。
行政システムで大きな位置を占めるのが、各種の申請や届出のための帳票です。帳票は、デジタル庁が「地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化」で各種業務と対象帳票を定めており、業務システムの開発においてはこれに準拠することが求められています。「国民年金」や「国民健康保険」など私たちの生活に関係の深い帳票類も、「国民健康保険システム標準仕様書(第1.1版)【厚生労働省】」や「国民年金システム標準仕様書(第1.1版)【厚生労働省】」で定められています。
このような環境下では、Webシステムやスタンドアロン環境で帳票コンポーネントを導入できるグレープシティの「ActiveReports for .NET」は有効な選択肢の一つです。最新バージョンの16.0Jでは、縦書き、均等割付、長体、角丸、PDF外字など、日本の帳票作成には欠かせない機能が多数提供されています。
ガバメントクラウドでは、パブリッククラウドとしてAWS(Amazon Web Services)、Azure(Micrsoft Azure)、GC(Google Cloud)、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)の4つのサービスが採用されています。今回はAWS、Azure、GCの3クラウドに関して取り扱っていきます。この3つのクラウドを扱う理由として、Iaas市場でのシェア率が高いためです。
本連載の目的はこれらのクラウド上にIaaS環境(Linux)を構築して帳票アプリケーションを公開することですが、本記事ではまず手元に開発環境を構築してアプリケーションを開発する手順を示し、Linux環境で動作させるまでを紹介していきます。
ローカルで開発環境準備
まずは、手元にある開発環境を準備していきましょう。本記事では、.NET 6とNode.jsがインストールされた環境でVisual Studio 2022を用いた開発を行っていきます。これらのダウンロードとインストールは下記を参照してください。
- Visual Studio 2022:「無料の開発者ソフトウェアとサービス - Visual Studio」
- .NET 6:「.NET 6.0(Linux、macOS、Windows)をダウンロードする」
- Node.js:「ダウンロード | Node.js」
ActiveReports for .NETをインストールする
ActiveReports for .NETをインストールします。「トライアル版 - ダウンロード | Developer Tools〈開発支援ツール〉」からダウンロードしたactivereportsnet16.zipファイルを解凍してできるフォルダにActiveReportsNET16_16.2.0.exeファイルがあるので、それを実行してインストールします。利用にはライセンスキーが必要なので、「GrapeCityライセンスマネージャー」を起動してトライアルキーかライセンスキーを設定してください。なお、本記事はProfessional版のライセンスキーを設定したものとして解説しています。
WSL2とLinuxをインストールする
WSL2(Windows Subsystem for Linux version 2)をインストールします。最終的にデプロイする環境はLinuxであるため、あらかじめWS2L上で動作検証しておくと、デプロイ作業をスムーズに行えるでしょう。WSL2は、Microsoft Storeから入手できます。その前に、Windowsの「設定」の「Windowsの機能の有効化または無効化」から「Linux用Windowsサブシステム」と「Windows仮想化プラットフォーム」を有効にしておきます。
Microsoft Storeアプリを起動して「Windows Subsystem for Linux」をインストールし、さらに「Ubuntu 22.04 LTS」をインストールしておいてください。詳細は「Windows Subsystem for Linux に関するドキュメント」を参照してください。なお、Linuxの起動時に「WslRegisterDistribution failed with error: 0x800701bc」というエラーが発生することがあります。この場合は、ターミナルから「wsl --update」コマンドを実行してWSL2をアップデートしてください。
フォントをインストールする
環境準備の最後は、フォントのインストールです。本連載の目標は、各クラウドでLinux環境を構築し、そこで帳票アプリケーションを公開することです。このため、開発環境であるWindowsと公開環境であるLinuxで利用フォントを合わせておかないと、文字化けやレイアウトの崩れが発生する可能性があります。
ここでは、WindowsでもLinuxでも利用しやすいオープンソースのフォントであるIPAフォント(IPAexフォント)を利用することにします。「IPAexフォントおよびIPAフォントについて」からフォントファイルをダウンロードし、記載されているインストール手順にてWindows環境にインストールしてください(WSL2上のLinuxでは、このフォントを利用できます)。公開するLinux環境へのインストールについては、それぞれの環境にデプロイする際に取り上げます。