12カ国から集まったメンバー、言語や文化の壁を打破するために実践していること
具体的にfreeeではどのようにD&Iを実現しているのか。freeeでは昨年、グローバルなメンバーで構成する開発チームを立ち上げた。参加しているメンバーの出身は日本をはじめ、バングラデシュ、フランス、インド、インドネシア、ケニア、ネパール、フィリピン、シンガポール、台湾、アメリカ、ベトナムの12カ国。中でもフィリピンには大きな開発チームがあるという。「これらのメンバーで会計事務所向けのサービス、給与や健康管理、インボイス、会社設立などのプロダクトを開発しています。新たにリサーチチームも設置され、翌年にはさらに多くのアイデアを展開していく予定です」(テジュ氏)
このような多様性のあるチームを作るのは、難しそうに思う人も多い。例えば多くの人が不安に感じるのが、「どのように言語の壁を打破し、自分の意見やアイデアを共有するのか」「言語が異なるエンドユーザーとどのように話し合ったらよいのか」「異なる地域のメンバーと働く場合、時差をどのようにマネジメントすればよいのか」などということ。freeeではこのような誰もが抱く不安をどのように解消したのか。
最初の事例としてテジュ氏が紹介したのが、日常業務の管理・調整について。テジュ氏が率いるチームのメンバーは日本とフィリピンの2カ国で働いている。「時差は約1時間ですが、私たちは時差に対応するため共通の時間を設定して、毎日30分のデイリースタンドアップを実施しています」(テジュ氏)
デイリースタンドアップはGoogle Meetで実施する。顔を見ながら話せるので、チームの一員である実感が湧くという。またコミュニケーションを円滑にする工夫もしている。ミーティング前には必ず、ウォームアップとしてアイスブレイクを行うという。「仕事に関連しない質問やトリッキーな質問などをすることで、話しやすい雰囲気を作るとともに、脳も活性化させることができます」(テジュ氏)
テジュ氏が紹介したのが、「一生、無制限にもらえるものがあるとしたら、何を選びますか」「アナタを不快にさせるモノは何ですか」という質問。このような質問で和やかな雰囲気を作った後に、その日に行う業務のゴールの認識合わせや何か困ったこと、障害などを報告し合うようにしているという。
またグローバルチームの生産性を向上するために行っていることとして、テジュ氏が挙げたのはレトロスペクティブである。レトロスペクティブとは振り返りのためのミーティングのことで、1週間や2週間で行った業務を振り返り、何が良かったのか、何が問題だったのかを特定し、どのように解決・改善するかを検討する。この振り返りのフレームワークはKPTとも呼ばれる。
KPTにおけるユニークな工夫として、テジュ氏が紹介したのはスプリントにアニメ「鬼滅の刃」に登場するキャラクターの名前を付けていることだ。「自分たちもキャラクターのようなスーパーパワーを使って、スプリントにモチベーション高く楽しく取り組める」と好評だという。スプリントで発見した良いことについては、すべてリストアップして表示する。また問題があったことについてはその理由を分析し、改善の余地があると感じた場合はその改善策を考え、次のスプリントに取り入れていく。このようにして、チームの生産性向上を実現している。