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Women Developers Summit 2023 セッションレポート(AD)

エンジニア急増中のクラスターが編み出したリモートワークのベストプラクティスとは?

【B-4】今だからこそ伝えたい、クラスターのフルリモートにおける生産性についてのお話

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 オフィス回帰が顕著になるなか、リモートワークの是非はなかなか結論が出ないテーマだ。リモートワークがいいのか、どういうことに配慮するといいのか。メタバースを運営し、エンジニアを多く抱えるクラスターの取り組みと現状について、クラスターのソフトウェアエンジニア asukaleido氏が自身の考えなどを交えながらリモートワークについて考える。

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これからは主体的、クリエイティブ、リアルとバーチャルが相互作用する世界で働く

 クラスター株式会社は2015年に設立、メタバースプラットフォーム「cluster」を運営している。今回登壇するのはソフトウェアエンジニアのasukaleido(大泉明日香)氏。同社内では日常的に使われているハンドルネームとアバターでの登場だ。同氏はクラスターに2023年7月に入社し、主にWeb開発環境改善を行いながら、Unityでの機能開発に従事している。

 誰もが実感しているように、オフィス回帰が顕著になってきている。IT企業のなかには積極的に出社を推奨しているところもあり、オフィス出社とリモートワークのどちらがいいか、いろんな観点で議論がなされている。

 生産性の観点だと「オフィス出社のほうが生産性が上がる」「アンケートでは二極化している」「職種による」「会社の規模や状況による」「リモートワークだと生産性が多少犠牲になるが、メリットもある」などの意見がある。asukaleido氏は「個人的にはどれも正しい」と同意する。一概にどちらがいいとは言い切れない。

 少し前に予測されていた「未来」も振り返ってみよう。総務省が2016年に発表した「働き方の未来 2035」によると「時間・場所にしばられない働き方が主流になる」「より充実感を求める働き方になる」「フリーランスに近しい働き方になる(有期・無期雇用の境目がなくなる)」などと記されていた。

総務省が2016年に発表した「働き方の未来2035」
総務省が2016年に発表した「働き方の未来2035」

 会社に所属するというよりは、何かの目的のために人が集まり、達成できたら解散するようなプロジェクト主体の働き方をイメージしているようだ。そうなると本業以外の副業、あるいは複数かけもちする復業にも寛容となり、会社への帰属意識が薄れ、コミュニティの場は他に移るとある。さらに(7年前に発表されたものだが)AIの台頭も想定にあり「クリエイティブな仕事が主体となる」との予測も記されていた。

 この「働き方の未来 2035」のポイントとしてasukaleido氏は将来は「主体性が現在よりも重要になる」と受け身では難しくなること、単純作業は機械やAIに代替されて「何かを創造する仕事が主体となる」こと、リアルとバーチャルが相互作用し「オンラインとオフラインの境目がなくなる」ことを挙げる。

 どちらがいいとは言い切れないものの、少なくともこの先は出社とリモートワークを柔軟に切り替え、より能動的に働く社会となると考えていいのではないだろうか。

遠方在住エンジニアと出社が必要な社員が混在するなか、出社日のルールを制定

 いったん現状に視点を戻そう。コロナ禍で半ば強制的に始まったリモートワークだが、定着してきたのではないだろうか。3年半も過ぎるとデスクや椅子、ネットワークなど自宅環境が整備され、自分なりのワークライフバランスのとりかたが確立し、チャットやWeb会議の作法にも慣れてきて、リモートワークでもこなせるようになってきた。勤怠管理のツールや運用も改善され、評価制度も追いついてきたところだ。

 しかしリモートワークの課題はまだ残る。asukaleido氏は「受け身の人はまだまだ残る」と指摘する。他にもコミュニケーションが不足すること、会社の空気感がつかめなくなる、書類のやりとりもある。また多くが頭を抱えているのがジュニア(若手)の育て方だ。しかし徐々に解決策が充実してきているところだ。まだ奥深いものは適応しきれてないところもあるが、時間と経験の蓄積が解決していくのかもしれない。

 asukaleido氏は「しかしながら我々は『今』を生きて、仕事をしています。来たる『将来』を先取りしながら、『今』の課題に立ち向かうリモートワークには意味があると思います。クラスターはエンジニアがフルリモートとなっていますので、その実態から何かしらの示唆を感じてほしい」と力を込める。

 あらためてクラスターだが、先述した通り2015年に設立した企業だ。コロナ以前の社員は35名ほどだった。スタートアップということもあり、意識合わせと意思決定のためにリアルベースのコミュニケーションを重要視し、週4日は対面勤務、疲労がたまる金曜は在宅で作業してもいいくらいの温度感だった。新型コロナウイルスの緊急事態宣言が発出されるとフルリモートとなり、それを越えると(社員は50名ほどに拡大し)週1日出社で一体感や結束力を高めていた。

 2021年12月以降になると採用強化で社員が100名を突破し、遠方の社員も増えてきた結果「週1日出社は厳しい」という声が顕在化してきた。エンジニアならフルリモートでもいいが、企業向けビジネスをしている部門では来客対応があり、メタバース関連では専用スタジオでの勤務が必要になり、管理部門では書類の処理もある。全社で勤務形態を統一することは難しかった。

 とはいえ、完全に裁量に任せて自由にしてしまうと問題も出てくる。せっかく出社しても、出社していない人とは認識を合わせにくい。1人でもリモートワークがいると会議はオンラインにせざるをえず、(会議室が足りず)オフィススペースでWeb会議をする人が増えると騒音が発生してしまうことにもなる。出社のタイミングがバラバラでは、出社のメリットが薄れてしまう。

 そのため現時点での出社は、クリエーター(エンジニア・デザイナー・CG)は月1日(最終水曜日)、法人部門は週3日(毎週月・水・金曜日)、その他は週1日(毎週水曜日)というルールとなり、月末の水曜日には全員がそろうようになっている。なお交通費は都度精算する。

現在の勤務制度
現在の勤務制度

リモートワークのメリットを最大化するためのツール活用術と意識の持ち方

 クラスターの勤務実態をエンジニアにフォーカスして深掘りしていこう。フルリモートではなく、月1日出社を残したのは対面でのコミュニケーションを重視しているためだ。asukaleido氏は「人は表情やしぐさから想像以上に情報を得ている」と指摘する。それは会社全体の空気感でも同様だ。オンラインだけでは「会社の今」の雰囲気が分からなくなる。

 月1の出社日は午前中に全社会があり、ランチには全員に弁当が配布され、午後はチームなどでミーティングを行う。終わると飲み会などに行くなど、リアルでしか得られないものを集中して吸収する日となっている。

 この月次の出社日がある前提で、普段の働き方を非同期と同期に分けて解説する。まず非同期はSlackを用いた文字ベースのコミュニケーションだ。なお(限定的なコミュニケーションになりがちな)個人チャンネルは禁止とし、できるだけパブリックな形で会話するようにしている。それからメンションも積極的に付けることで、見落としを避けるようにしている。また「後からすべてわかる」ように、議事録や設計などドキュメントを徹底的に残す。また(働き過ぎないように)打刻を細かくする。

 一方、同期ではGoogle Meetを軸としたWeb会議としていて、カメラオンを必須としている。ただしアバターはOK。カメラオフだと、そこにいるのか分からなくなるためだ。asukaleido氏は「単純ですが、徹底したほうがいい」と推奨する。なおクラスターがメタバースをやっていることもあり、アバター参加はおよそ半数以上で多い。asukaleido氏は「アバターだとメイクしなくてもよくて楽」と言うものの、伝わる情報は減るので「オーバーなリアクションをとったり、それが反映されるようなものを選んでいる」と話す。

Meetの風景
Meetの風景

 加えて、話しかけやすい場を作ることをチームで意識している。asukaleido氏のチームはDiscordの音声チャットで常時ミュートにしていて、話しかけたい時にミュートを解除して会話するそうだ。スピーカーはオンにしているので、常にラジオのように聞いていて、呼びかけがあればすぐに答えられるような状態にしている。

 asukaleido氏は「とにかくメリハリ。それから妥協。リアル並(のコミュニケーション)は追求しない」と述べる。

 役職別に意識していることをまとめると、asukaleido氏によると「プレイヤーは自身の働きは成果でのみ会社に伝わること、発言しなければ存在感が出ないことを意識する。加えて文字だと固くなるので柔らかさを心がける」。一方マネージャーは月次の出社の最大化を目指し、1on1や雑談を意識的に作りながら、チームの共通認識を常に持ち続けられるようにしている。また週次で共有会を行い、Slackで出ていても大事なものは口頭で伝達するようにしているそうだ。asukaleido氏は「同期の重要性を意識するが、安易に同期へは逃げない」と話す。

 実際のところ、生産性はどうなったのか。現在クラスターでは50人を超える規模で品質を両立したうえで週に1度のリリースを継続できている。エンゲージメントのサーベイでも高めの数字が出ており、asukaleido氏は「定量的、定性的に悪くない判断できる」と評価している。特にワークライフバランスではいい数値が出ていて、リモートワークという選択肢の恩恵と言えそうだ。

 最後にasukaleido氏は、リモートワークを成功させる鍵として「出社を意味のあるものにすること。チームで同じ働き方をすること。そして日々改善していくこと」とポイントを強調して講演を締めた。

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提供:クラスター株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://codezine.jp/article/detail/18746 2023/12/21 12:00

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