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Developers CAREER Boost 2023 セッションレポート(AD)

AWS Top Engineersが教える、クラウドサービスとコミュニティで織りなすスキルアップキャリア道

【B-3】クラウド時代の舞台裏~多彩なスキルアップ戦略とは?~

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 エンジニアのキャリアにとって、リスキリングは大きな転機だ。2007年にNECソリューションイノベータに新卒入社した佐々木航太氏も、オンプレ開発からクラウドへとリスキリングし、後に2021年・2022年のAWS Top Engineersに選出されるまでになった。そんな佐々木氏が、これまでキャリアアップのために実践してきた「スキルアップ」「アウトプット」「働き方」について紹介した。

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7年目の岐路──忙しさの壁を越え、能動的キャリアへ転換

 佐々木氏は札幌在住、全国各地の顧客を対象に各種ソリューションを提供するソフトウェア&サービスカンパニー、NECソリューションイノベータに勤務する。現在は、ビジネスプロデューサーとしてAWSを中心としたシステム導入やアーキテクチャの検討、改善などに主業務として取り組んでいる。

 NECソリューションイノベータは、NECグループの社会価値創造をICTで担う中核会社だ。1万人を超えるシステムエンジニア・ソフトウェア技術者を擁し、技術者の力を発揮することで顧客価値を高める「バリュープロバイダ」を標榜する。

 バリュープロバイダを実現するため、同社では人材育成に力を入れている。佐々木氏も活用した専門職のキャリア形成の推進を行う「高度専門職制度」や、社員が自身の意思で所属・部署の変更にチャレンジできる「ジョブチャレンジ制度」など、自立的なキャリア形成の環境づくりが強みだ。また、Udemy Businessなどオンデマンド学習やリモートワークも積極的に導入しており、場所を問わず学び・仕事をすることが可能となっている。

 近年は、旅行先で仕事をするワーケーション勤務も実施しており、海外研修も積極的に推進されている。佐々木氏も2023年11月に、AWSが主催する世界最大の学習型グローバルカンファレンス「AWS re:Invent」に参加した。5日間で2000以上のテクニカルなセッションが開催される大規模なイベントで、革新的な発表が行われるキーノートの他、さまざまなアプリケーションを作成するワークショップ、その場に集まった人と共に課題を解決するゲームやジャムなども実施された。

 人材への投資を積極的に行っている同社だけに、佐々木氏は恵まれた環境にあるといえるだろう。しかし、どんな環境下でも“自立的なキャリア”を実現するためには、自らの意思決定が重要なカギを握る。佐々木氏もまた自らの意思で現在までのキャリアを選び取ってきた。特にクラウドとの出会いは大きなターニングポイントだったという。

 佐々木氏は、学生時代から地元北海道のIT企業への就職を希望し、NECソリューションイノベータの前身である北海道日本電気ソフトウェアに新卒入社。首都圏の交通インフラや金融、通信などの大型案件に携わってきた。目の前の仕事をこなすことに忙殺されて7年が経った頃、「自分は何をしたかったのか」と考え始めたのがスキルチェンジのきっかけだった。佐々木氏は就職してからの自身の状態を感情曲線で紹介し、入社当初は受動的に仕事をしてきたものの、7年目ごろから能動的に自身のキャリアについて考えられるようになってきたという。

佐々木氏のキャリアと感情曲線
佐々木氏のキャリアと感情曲線

 「日々スケジュールとプレッシャーに追われ、徐々に気持ち的に追い込まれていたが、『自分がこれがしたいのだ』と考えるようになってからは結構楽しくキャリアを歩んできたのではないか」と佐々木氏は振り返る。そして、「キャリアで悩んだ時には原点に立ち戻ることで、もう一度『何をすべきか』を自分自身に問い直せるのではないか」と語った。

仕事のやり方が覆る! サーバレスアーキテクチャとの出会いを通した、スキルアップとは?

 佐々木氏にとって最初のスキルアップ戦略は、現状のやり方を根本から覆すことだったという。オンプレミスサーバーにミドルウェアを入れ、監視やセキュリティ設定、さらにアプリケーションの開発まで行うとビジネスとして成り立たなくなる。加えてウォーターフォール型の開発では、漠然とした課題に取り組むDXには対応できない。そう感じた佐々木氏は、業務に関わらずスキルアップが必要と考え、本やインターネットなどで情報を検索し、考えても見なかった新しい世界に出会うことになる。

 まず斎藤昌義氏著『システムインテグレーションの崩壊』(技術評論社)を読み、「就職するまでも就職してからも全然考えたことがなかった」というSIerビジネスの限界を知り、衝撃を受けた。さらに、倉貫義人氏著『納品をなくせばうまくいく』(日本実業出版社)から、継続的にシステムをアップデートしていくことで、要件定義が決めきれない顧客でも互いにWin-Winでシステム開発やプロジェクト推進がかなうことを知った。佐々木氏は、「それまで一括請負しか契約したことがなかったため、要件定義で決められた通りにつくることが当然だった。プロジェクトが進むにつれ、『こうしたほうがいいのに』と後から思っても、契約上の問題もあって、一度決められたものの変更は許さない。ジレンマを感じていたが、それを解決する手段を見出したように感じた」と語る。

 そんな時に出会ったのがAWSだ。佐々木氏がAWSを初めて触ったのは2013年の4月であり、当時は社内でサービスを知る人はわずかだったという。Web上の情報を探し試してみたところ、ものの数分でサーバーが立ち上がり、OSも整った状態でログインができた。「この感動は今でも覚えている」と佐々木氏は語る。作成に1カ月ほどかかっていたデータベースが20〜30分でできたこと、非機能要件などもすべて網羅されていること、あらゆることが衝撃だった。そこから興味を持ってAWSを触るようになり、その度に今までの考え方を覆され、無我夢中でさまざまなサービスを試すようになった。

 また佐々木氏は、キャリアに最大の影響を与えたものとして「AWS Lambdaを中心としたサーバレスアーキテクチャ」を挙げた。2014年のAWS re:Inventで発表されたAWS Lambdaに出会い、「必要なのはプログラムだけ。動く時間だけ費用がかかる」という説明に、疑問と同時にワクワクとした気持ちを持ったという。それまで夢中だったEC2を忘れ、Lambdaでの開発を試すようになった。

 その結果、たどり着いたのが「サーバレスアーキテクチャ」だ。佐々木氏は「インフラのコストが画期的に安く抑えられ、これを使えば、今まで難しかったお客様にもさまざまな可能性を提示できるとワクワクした」と語る。当時はまだ手探り状態で顧客の要望に応えるには苦労も多かったが、現在は、佐々木氏が手掛ける案件の殆どがサーバレスとなった。

 佐々木氏は、「サーバレスアーキテクチャに出会えたことがエンジニアとしてのキャリアにおいて最大の岐路となった」と振り返り、「スキルアップは決して簡単なことではない。私も意気揚々と取り組んだが苦労も多かった。だからこそ印象に残っており、その経験が変化の時代にあっても学習を楽しみ、困難に立ち向かう原動力になるはず」と強調した。

新たなキャリアへの扉を開く、コミュニティとキャリアの相互効果とは?

 こうした佐々木氏の挑戦やスキルアップが成功したのは、自身の努力だけでなく、新しいチャレンジを認めてくれる周りの環境があってこそ。幸い佐々木氏の上司は、佐々木氏が熱心に語るサーバレスアーキテクチャや新しい仕事の仕方について耳を傾け、理解をしてくれたという。しかし、人によってはそうでない場合も少なくはない。その際は環境を変えることも1つの手段と言えるだろう。

 佐々木氏は「わかってくれる人は世界に必ずいるはず。共感できる仲間を見つけることも重要であり、それは社内に限らない」と語り、2つめのスキルアップ戦略として、ユーザーコミュニティを活用することを挙げた。

 ユーザーコミュニティとは、特定の商品やサービスのユーザーが集まり、意見やノウハウを交換し、情報を共有する場のことだ。佐々木氏は「JAWS-UG」と「SORACOM UG」のそれぞれ札幌支部に運営メンバーとして携わる。現在、SORACOMではあまり活動できていないものの、「いつか札幌でイベントを開催したい」と語る。他にもPHPやOffice 365などさまざまなコミュニティが活動中であり、佐々木氏は、「転職経験がない人や社外の情報が欲しい人は、ぜひとも興味のあることのコミュニティに参加することをおすすめする」と語った。

佐々木氏のJAWS-UGでの活動
佐々木氏のJAWS-UGでの活動

 なお「JAWS-UG」は、全国各地の支部の他、特定分野に特化した専門支部で構成され、その数は2023年時点で60を超える。世界的にも活発に活動しており、年間約450回以上の勉強会がオン&オフラインで開催され、誰でも参加できる。AWSを業務で触っている人はもちろん、触り始めたばかりの人、これから触ってみたいという人など、参加動機はさまざま。AWSを軸に自身の活動への賛同・共感を得たり、思いもしない活用法に驚いたり、仕事や趣味の悩みまで多様な交流が行なわれている。

JAWS-UGの支部は全国に
JAWS-UGの支部は全国に

 基本的には、勉強スタイルや事例発表などのライトニングトーク(3〜5分程度の短いプレゼンテーション)がメインで、「ハンズオン」や「もくもく会」と呼ばれる自分で集中的に作業に取り組む会もある。業務後の参加が難しい人でも、朝会や昼の開催もあるので、参加してみると良いだろう。

 佐々木氏は札幌での開催の様子を紹介し、「アウトプットをしないのは“知的な便秘”と聞く。参加してインプットしたら、ぜひ自身の体験を発表してみてほしい。成功事例だけでなく、失敗も大事なアウトプット。上手に発表する必要もない」と語った。

 なお佐々木氏の場合は2015年に初めて登壇し、拙い説明だったものの温かい声をかけてもらったという。そして、登壇したことでメインセッションの講演者と交流する機会が得られ、その後の再会を機に一緒に仕事をすることもあるとか。他のコミュニティでも登壇や発表の機会を得たり、ハンズオンや外部講師などで活動したりするようになった結果、2021年と2022年には「AWS Top Engineers」に選出された。優秀なエンジニアとAWSから認められたことで、社内でもトップエンジニアとして現役職についたという。ユーザーグループでの活動とキャリアが密接に結びついた結果だ。

佐々木氏の登壇実績
イベント登壇の様子

 なお「AWS Top Engineers」は所属会社がAWSパートナーネットワークへ参加していることが認定条件のため、条件に合わない場合は、「AWS ヒーロー」「AWS コミュニティビルダー」などの認定制度に注目するとよいだろう。特にAWSパートナーネットワークに参加する企業の採用では、これらの認定が有利に働くことが多い。当然、社内のキャリアアップにもプラスになるといえる。他業界からのジョブチェンジにも有効であり、佐々木氏の知人は、IT未経験のテレビ局勤務から4年後に「AWS HEROES」認定を取得し、現在はエンジニアとして活躍中だという。

未来を楽しみながら築く:楽しさとスキルアップが導くキャリアの可能性

 スキルアップ戦略として、「現状のやり方を根本から覆すこと」と「ユーザーコミュニティを活用すること」について語った佐々木氏だが、今後のエンジニアのスキルアップについてはどのように考えているのだろうか。入社7年で自身のキャリアを自立的に考えるようになってAWS Lambdaに出会い、社外コミュニティに参加、AWSのイベントに登壇、ユーザーグループの立ち上げやサーバレスの講師活動など外部的な影響力を見認められ、プロフェッショナル、さらにシニアプロフェッショナルへと昇格した。

キャリアとコミュニティでの活動を振り返って
キャリアとコミュニティでの活動を振り返って

 この経緯について、佐々木氏は「決して特別なことをしたわけではなく、ただ自分の好きなことを追いかけ続けてきた結果」と評し、「社内での評価は会社が変わるとリセットされるが、社外の評価は変わらない。ぜひとも自分のキャリアのためにも新しいことに挑戦しよう。インプットとアウトプットでキャリアアップする方法があることも知ってほしい」と語った。

 確かにIT業界は日々アップデートしており、その進歩は凄まじく速い。AWSだけでも年間1000以上のアップデートがなされ、全てをキャッチアップするのは難しい。さらにLLM(大規模言語モデル)やChatGPTなどが登場し、革新的なサービスが生まれるなど、IT業界は急速に変化し続けている。それらへの追従もかなりの困難が生じるだろう。佐々木氏は「もともと勉強は好きではなく、これらを仕事として勉強していたら息切れしていた。遊びの延長線上だったからこそスキルアップすることができた」と振り返りつつ、「英語が苦手なので効率的な勉強法を知りたい」と語った。

 そして最後に、11月開催の「AWS re:Invent」で登壇したAmazon CTOであるWerner博士のキーノートから、エンジニアのキャリア形成に重要な3つのポイントを紹介した。まず1つめは「Learn and be Curious:学び、好奇心を持ち続けよ」、そして「There's never been a better time to be a builder:開発者になるのにこれほどいい時期はない」。スキルチェンジやキャリアアップをするのに、これほど良い時期はないとも捉えられ、エンジニアのキャリアに無限の可能性が秘められていることが示されている。そして、3つ目は「If I can do it, you can do it:私にできるなら、あなたにもできる」だ。佐々木氏はこれを聞いて、「自分にもできるし、もっとスキルアップしていきたい」と思ったという。

 佐々木氏は、「自分ができたように皆さんにもできるはず。ぜひ、互いに切磋琢磨していこう」と語り、セッションを終えた。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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