「とりあえずやってみよう」の精神から見えるものとは?
2つ目に大事なのが「とりあえずやってみよう」の精神だ。「やれるかやれないかじゃなく、『1ミリでもいいからやってみたいかどうか』で決断してきたことが多い」と南風原氏。
その結果、南風原氏のエンジニアとしての経験は多岐にわたる。EMからスクラムマスター、プロダクトマネージャー、副業、フリーランスなど多様な立場を経験した。立候補したものもあれば、上司や同僚に背中を押されて携わった職務もある。
「とりあえずやってみよう」の良い点は、やってみた結果、自分の強み・弱み、得意・不得意、興味関心の範囲などがわかることだ。また、新しいコミュニティや環境に一歩踏み出すことで、人とのつながりも増える。
「振り返ると、私はキャリアアップを意識して選択してきたわけではないと思っています。自分自身の強みや得意なことがよくわからなかったので、いろいろやってみて、その度に自分の強みや得意、あと自分らしく働ける環境を見つけてきました。興味が湧いたことは少しでも挑戦してみる姿勢を大切にしよう、とお伝えしたいです」
そして、最後に紹介された3つ目のポイントは「強みを生かせる場所を見つける」だ。
ここまでに紹介した「やりたい」「なりたい」にフォーカスし、とりあえずやってみようの精神を実践していくと、自分の強みや得意を発見することができると語る南風原氏。
この時「自分のこれまでの経験を定期的に振り返ることがすごく大事」だと強調した。振り返る方法は自由だが、南風原氏は「職務経歴書を定期的に更新する」ことで自身の経験値やスキルを振り返っている。さまざまな役割やプロジェクトに関わり、それらを振り返ることで、自分の仕事のスタイルが見えてくるのだ。
例えば南風原氏の場合、EMの経験とPdMの経験を通して、「ピープルマネジメントよりももの作りに直接関われるPdMの役割の方が、自分自身に合っている」と気づいたという。
「これまでのエンジニアリングの経験も、PdMの方が生かしやすい。また、私はリスクヘッジを考えることが得意なため、その視点で要件定義を行うことでPdMの業務に強みが生かせると感じました」
また、強みを生かせる場所を見つけるためには、柔軟に環境を変えるという選択肢を持つことも重要だ。環境を変えるといっても、そのやり方は転職だけではない。社内の部署や職種、役割を変えることや、社外コミュニティへの参加も「環境を変える」ことの1つだ。
会社員時代から副業や外部コミュニティを通じてさまざまな人と出会ってきたという南風原氏。フリーランスエンジニアと交流する機会があり、その交流を通じて自分自身のキャリア観を見つめ直すきっかけになったこともある。
南風原氏は、石倉秀明著の書籍『CAREER FIT 仕事のモヤが晴れる適職思考法』(宝島社)の内容を引用し、「自分に合う場所」を見つける重要性を強調した。
「『目指すべきはキャリアアップという発想ではなく、その都度、自分に適した環境・場所を求めていく「キャリアフィット」ではないかと思う』という言葉が書かれています。私が大事にしている『強みを生かせる場所を見つける』とつながる考え方だなと、しっくりきました」