フィードバックを行動に移せない原因とは?
前回は、1on1での伝え方について掘り下げて解説しました。1on1での伝え方を工夫することで、より効果的なコミュニケーションが取れるようになります。しかし、せっかく1on1でフィードバックを受けたとしても行動に移せなければ意味がありません。
「1on1 で『設計をもっと意識して』と言われたが、結局いつもの書き方に戻ってしまった……」。こんな経験が、あなたにも覚えがあるはずです。私自身も若手の頃、「チームとのコミュニケーションを増やそう」と助言をもらいながら、忙しさを言い訳にDMを閉じたまま一週間を終えた苦い経験があります。
その経験から学んだのは、フィードバック(FB)を“行動”の形に翻訳する設計図がないと、人は動けないということ。
本記事では、のべ30人・1000時間以上の1on1に同席しながら私が磨いてきた「受け手向け」のノウハウを「“頭(ロジック)”と“心(感情)”を同時に消化する5ステップ」にまとめました。
このノウハウがあれば、「1on1でもらったけどなかなか行動に移せていないFB」を面白いほど行動に移すことができます! みなさんも、FBを行動に移して結果に繋げられるようになりましょう。

原因を言語化しよう!「行動を阻む3つの壁」とは?
1on1でメンターからいろんなフィードバックをもらった後、「確かにその通りだ」「よし、やるぞ!」と思っていても、気づいたら一週間経ってしまっていた……ということありませんか? また「言っていることは正しい気がするけど、なんかモヤッとする」というようなことはありませんか?
それらの背景には、たいてい次の3つが潜んでいます。自分に当てはまるものがないかチェックしてみてください。
行動を阻む壁 | ありがちな状況 | なぜ起きるのか? |
---|---|---|
抽象ワードの霧 |
「もっと俯瞰して」 「プロダクト視点を持とう」など 手順が見えないPythonで プログラムを書くための 準備をします |
“何を・いつ・どこで”が曖昧 |
感情のブレーキ |
「読みにくいコード」と 言われ落ち込む |
自己防衛モードで思考停止 |
タスクの山 | 緊急案件に追われFBを放置 |
重要だが緊急でないタスクは 埋もれる |
◆ 行動に移せない原因をチェックしてみよう
ふせんに「抽象」「感情」「タスク」と書き、壁に当たったら印を付けてみましょう。印が増えるほど行動のための“設計図不足”のサインです。
FBを行動に変える5ステップ+感情ケア
原因を理解したら、それらの壁を超えるための5ステップを意識して行動してみましょう。ここでは頭(ロジック)と心(感情)を一緒に整える五つのステップを紹介します。大切なのは豪華なツールより「小さく・早く・振り返る」の習慣です。

ステップごとのポイント
ステップごとに意識すると良いポイントを下記にまとめています。なれないうちは1〜3までを1on1の中でメンターといっしょに実践してみると良いでしょう(その際はこの記事をメンターに見てもらい一緒にやってみましょう)。
1.受け取る
フィードバックを聞いたときに、メモ帳にキーワードをメモしながら、その場で疑問を解消しましょう。「具体例を教えてください」「類似事例はありますか」と質問を重ねることで、抽象的なフィードバックがだんだんわかる言葉で置き換えられていきます。同時に、自分が感じた戸惑いや悔しさを絵文字1つでいいので記録しましょう。後で感情の変化を追跡しやすくなります。
2.内省する
1on1を終えたらすぐに、メモを「Keep/Problem/Try」の3区分に振り分けます。仕分けが終わったら「今はちょっとモヤモヤしている」「肩が少し重い感覚」「もう少し準備できたかも」と感情を3行で書き留めます。一度自分の気持ちを客観視すると、次のステップで建設的に考えやすくなります。
3.計画する
仕分けしたメモの「Try」を眺めながらゴールを1文にまとめます。その後、ゴールを実現するための行動を30分以内で終わる粒度に砕きます。
例えば「設計レビューで質問を3つ投げる」をゴールにしたら、「クラス図を描く」「観点リストを作る」「質問をPRに添える」と小分けにし、それぞれ日時を決めてカレンダーに登録します。このときのポイントとして、友人に助言するように自分自身を励ますと、自己否定感が薄れて、行動しやすくなります。
4.試してみる
計画を立てたら、完璧さより「まず1回やってみること」を優先します。同期やチームメンバーに「今週このPRで試します」と宣言し、実行するとよいでしょう。実行後は結果の成否にかかわらず、コンビニのスイーツなど小さなご褒美を用意してください!成功でも失敗でも行動の事実が残り、次の学びにつながります。
5.振り返る
1〜4のステップを終えたら「日付・試したこと・結果・気づき・感情変化」をアクションログに記録します。「レビュー時間が20%短縮」「不安 4→1」と数値を残しておくことで、効果が可視化され、次回1on1で具体的な議論がしやすくなります。
テンプレートを作成して定期行動に対するコストを下げよう
テンプレを作っておくことで、定期の行動に対するコストが低くなり、行動しやすくなります(PRテンプレなどと同じですね)。余力があれば、少しずつテンプレートをカスタマイズして自分が使いやすい形にしていきましょう。まず、リフレクションシートとアクションログのサンプルを作って、行動してみましょう。
リフレクションシート(1on1直後/3分)

アクションログ(週1行以上)
日付 | 試したこと | 結果 | 気づき | 感情変化 |
---|---|---|---|---|
6/10 | クラス図+質問3点 | レビュー -20% | 図で迷いも整理 | 不安 4→1 |