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組織での成長を最大化するための1on1完全攻略術

1on1で受けたフィードバック(FB)を「行動」に移す5つのステップ

組織での成長を最大化するための1on1完全攻略術 第3回

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 上司と部下が1対1で気軽なミーティングを行う「1on1」は、人材育成や組織育成の観点から重要とされています。この連載では、30人以上のエンジニアと1000時間以上1on1を重ねてきた株式会社ウィルゲートの池添 誠氏(ZOE氏)が、組織での成長を最大化させるための1on1の受け方について解説します。第3回は、1on1でもらったフィードバック(FB)を行動に移す方法を説明します。

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フィードバックを行動に移せない原因とは?

 前回は、1on1での伝え方について掘り下げて解説しました。1on1での伝え方を工夫することで、より効果的なコミュニケーションが取れるようになります。しかし、せっかく1on1でフィードバックを受けたとしても行動に移せなければ意味がありません。

 「1on1 で『設計をもっと意識して』と言われたが、結局いつもの書き方に戻ってしまった……」。こんな経験が、あなたにも覚えがあるはずです。私自身も若手の頃、「チームとのコミュニケーションを増やそう」と助言をもらいながら、忙しさを言い訳にDMを閉じたまま一週間を終えた苦い経験があります。

 その経験から学んだのは、フィードバック(FB)を“行動”の形に翻訳する設計図がないと、人は動けないということ。

 本記事では、のべ30人・1000時間以上の1on1に同席しながら私が磨いてきた「受け手向け」のノウハウを「“頭(ロジック)”と“心(感情)”を同時に消化する5ステップ」にまとめました。

 このノウハウがあれば、「1on1でもらったけどなかなか行動に移せていないFB」を面白いほど行動に移すことができます! みなさんも、FBを行動に移して結果に繋げられるようになりましょう。

原因を言語化しよう!「行動を阻む3つの壁」とは?

 1on1でメンターからいろんなフィードバックをもらった後、「確かにその通りだ」「よし、やるぞ!」と思っていても、気づいたら一週間経ってしまっていた……ということありませんか? また「言っていることは正しい気がするけど、なんかモヤッとする」というようなことはありませんか?

 それらの背景には、たいてい次の3つが潜んでいます。自分に当てはまるものがないかチェックしてみてください。

状況チェックリスト
行動を阻む壁 ありがちな状況 なぜ起きるのか?
抽象ワードの霧

「もっと俯瞰して」

「プロダクト視点を持とう」など

手順が見えないPythonで

プログラムを書くための

準備をします

“何を・いつ・どこで”が曖昧
感情のブレーキ

「読みにくいコード」と

言われ落ち込む

自己防衛モードで思考停止
タスクの山 緊急案件に追われFBを放置

重要だが緊急でないタスクは

埋もれる

◆ 行動に移せない原因をチェックしてみよう

 ふせんに「抽象」「感情」「タスク」と書き、壁に当たったら印を付けてみましょう。印が増えるほど行動のための“設計図不足”のサインです。

FBを行動に変える5ステップ+感情ケア

 原因を理解したら、それらの壁を超えるための5ステップを意識して行動してみましょう。ここでは頭(ロジック)と心(感情)を一緒に整える五つのステップを紹介します。大切なのは豪華なツールより「小さく・早く・振り返る」の習慣です。

頭(ロジック)と心(感情)を一緒に整える五つのステップ
頭(ロジック)と心(感情)を一緒に整える五つのステップ

ステップごとのポイント

 ステップごとに意識すると良いポイントを下記にまとめています。なれないうちは1〜3までを1on1の中でメンターといっしょに実践してみると良いでしょう(その際はこの記事をメンターに見てもらい一緒にやってみましょう)。

1.受け取る

 フィードバックを聞いたときに、メモ帳にキーワードをメモしながら、その場で疑問を解消しましょう。「具体例を教えてください」「類似事例はありますか」と質問を重ねることで、抽象的なフィードバックがだんだんわかる言葉で置き換えられていきます。同時に、自分が感じた戸惑いや悔しさを絵文字1つでいいので記録しましょう。後で感情の変化を追跡しやすくなります。

2.内省する

 1on1を終えたらすぐに、メモを「Keep/Problem/Try」の3区分に振り分けます。仕分けが終わったら「今はちょっとモヤモヤしている」「肩が少し重い感覚」「もう少し準備できたかも」と感情を3行で書き留めます。一度自分の気持ちを客観視すると、次のステップで建設的に考えやすくなります。

3.計画する

 仕分けしたメモの「Try」を眺めながらゴールを1文にまとめます。その後、ゴールを実現するための行動を30分以内で終わる粒度に砕きます。

 例えば「設計レビューで質問を3つ投げる」をゴールにしたら、「クラス図を描く」「観点リストを作る」「質問をPRに添える」と小分けにし、それぞれ日時を決めてカレンダーに登録します。このときのポイントとして、友人に助言するように自分自身を励ますと、自己否定感が薄れて、行動しやすくなります。

4.試してみる

 計画を立てたら、完璧さより「まず1回やってみること」を優先します。同期やチームメンバーに「今週このPRで試します」と宣言し、実行するとよいでしょう。実行後は結果の成否にかかわらず、コンビニのスイーツなど小さなご褒美を用意してください!成功でも失敗でも行動の事実が残り、次の学びにつながります。

5.振り返る

 1〜4のステップを終えたら「日付・試したこと・結果・気づき・感情変化」をアクションログに記録します。「レビュー時間が20%短縮」「不安 4→1」と数値を残しておくことで、効果が可視化され、次回1on1で具体的な議論がしやすくなります。

テンプレートを作成して定期行動に対するコストを下げよう

 テンプレを作っておくことで、定期の行動に対するコストが低くなり、行動しやすくなります(PRテンプレなどと同じですね)。余力があれば、少しずつテンプレートをカスタマイズして自分が使いやすい形にしていきましょう。まず、リフレクションシートとアクションログのサンプルを作って、行動してみましょう。

リフレクションシート(1on1直後/3分)
リフレクションのテンプレート
リフレクションのテンプレート
アクションログ(週1行以上)
アクションログの例
日付 試したこと 結果 気づき 感情変化
6/10 クラス図+質問3点 レビュー -20% 図で迷いも整理 不安 4→1

次のページ
FBの意図がつかめないときに切る4枚のカード

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この記事の著者

ZOE(ゾエ)

 2015年に株式会社ウィルゲートに新卒入社。2021年にSREチームを新設して開発全体のSRE課題の改善活動や啓蒙活動、開発メンバーの開発効率アップのためのツール開発などもしていた。2022年10月には新設したCRE(Customer Reliability Engineering)やSRE、イン...

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