実際に1on1を始めてみよう
いきなり完璧な1on1を目指す必要はありません。最初の一歩は、小さく・身近に始めるのがコツです。
まずはピア(同期)と1on1の練習。その後、後輩へ
最初は同じチームや同期と1on1を試してみましょう。気心の知れた相手とのやりとりなら緊張も少なく、「こういう進め方が自分に合いそうだな」と感覚を掴めます。慣れてきたら、徐々に後輩との1on1へと広げていきましょう。
先輩メンターの1on1に同席して学ぶ
会社にメンター経験が豊富な人がいるなら、「見学させてください!」と頼んでみるのもアリです。実際の進め方や雰囲気、声かけの仕方など、本や記事ではわからないリアルが学べます。
汎用テンプレートを使う
1on1で話すネタが思いつかないときは、あらかじめ用意されたテンプレートを使うのも手です。「最近困っていることある?」「今後チャレンジしたいことある?」など、シンプルな質問でも立派なきっかけになります。
ケーススタディ:Yさんが“する側”になってみた3か月
ここでは、実際に「する側」にチャレンジしたエンジニア・Yさんの事例を紹介します。Yさんは入社2年目のタイミングで、インターン生のメンター役を任されることになりました。
最初は「自分に務まるのか…」と不安だらけでしたが、もともと受け手として1on1に真剣に向き合っていた経験もあり、「まずは自分がされて嬉しかったことをやってみよう」という方針で始めました。
Yさんが工夫した3つのポイント
- 初回の1on1で「自分もまだ勉強中ですが、一緒に成長できたら嬉しいです」と伝え、対等な関係性を築いた。
- 毎回、1on1の前に話したいことをメモしてもらい、お互いの準備を促進。
- フィードバックを伝えるときは「自分も昔同じところでつまずいた」エピソードを交えて、共感から入るように意識。
実際、インターン生との関係性も良好に育ち、最終的には「1on1があるから安心して試行錯誤できました」と感謝されるまでに。Yさん自身も「教えることで、自分の理解や視点が明確になった」と振り返っています。
1on1を“する側”として過ごした3か月は、Yさんにとっても自信と学びにあふれた貴重な経験となりました。
まとめ
教える経験は自分自身の成長にもつながります。1on1を「受ける側」から「行う側」へと移行することは、自分の理解を深め、後輩との信頼関係を築く貴重な機会になります。経験を通じて得られる学びは、今後のキャリア形成やチームへの貢献にも大きく寄与します。
自分が1on1する側に回ることを想定して、事前準備を始めてみましょう。まずは自身の過去の1on1経験を振り返り、どんな進め方が良かったか、どんな点が改善できるかを考えてみてください。
もしできそうであれば、同期やチームメンバーと1on1を実施してみたり、あるいは配属予定の後輩との初回1on1を仮で設定してみたりすることも良いでしょう。そのうえで、本記事や過去の経験を参考に、どのようなテーマで話すか、どのように進行するかをあらかじめ考えてみてください。最初の一歩を踏み出すことで、少しずつ自信がついていきます。
1on1を通して成長するために大切なこととは?
この連載「成長するための1on1完全攻略術」では、1on1をどう活用すれば自身の成長に繋がるかを、受ける側・行う側の両方の視点から丁寧に解説してきました。
第1回では、1on1の意義や位置づけについて整理し、第2回ではその準備と伝え方、第3回ではフィードバックの受け止め方と実践方法、そして今回の第4回では、いよいよ「する側」へのステップアップに焦点を当てました。
読者の皆さんの中には、1on1という言葉に馴染みがなかった方や、漠然と参加していた方も多かったかもしれません。しかし、この連載を通じて1on1が単なる雑談や報告の時間ではなく、成長や信頼を育むための貴重な機会であることが伝わっていれば嬉しく思います。
また、「良い1on1」は一方的なスキルだけで成り立つものではなく、お互いの歩み寄りや意識によって少しずつ育っていくものです。だからこそ、今回の記事を読んで「自分も誰かの成長を支える存在になってみよう」と思っていただけたなら、それだけでこの連載の価値があったと感じます。
1on1は一人ひとりのちょっとした工夫で、もっと良くなる余地があります。ぜひ、みなさん自身の現場で、自分なりの1on1スタイルを少しずつ築いていってください。