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開発現場インタビュー(AD)

ユーザー6500万超「TimeTree」の進化を支える組織論──ニックネーム文化がAI時代のプロダクト開発を加速する

エンジニアの「声」がAI機能になるまで:イベントアシスト機能とAI駆動開発の最前線

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ボトムアップで生まれたAI「イベントアシスト機能」開発秘話

──TimeTreeでは、現在AIを活用したプロダクト開発を推進していると聞いています。まずはTimeTreeとしてAIの活用方針を教えてください。

Scott:AIは今非常に面白いフェーズにあると捉えています。TimeTreeとしてのAI活用の観点は大きく2つあります。一つはより良いプロダクトづくりへの活用。もう一つは普段の業務への活用です。AIの業務への活用については、AI開発ツールをどんどんメンバーに試してもらい、何ができて何ができないのかなど、知見を溜めているフェーズです。

Vicke:プロダクトづくりへのAI活用は、まさにこの「イベントアシスト機能」に象徴されます。これは、ユーザーさんが特定の予定を作成すると、AIが関連するToDoを自動で生成し、提案する機能です。現在、ToDoを作成できるのは引っ越しや結婚式、出産、キャンプ、旅行などカテゴリーを絞っていますが、予定に対して煩雑なToDoが付随するようなカテゴリーであれば、それらを対象に機能が働くようにしていく予定です。

 具体的には予定のタイトルと日付、予定に付随するユーザーさんが入力した情報をLLMで解析して、最適なToDoを返すというものです。今年の3月、引っ越しシーズンに合わせてリリースしました。

──冒頭でもお話いただいた「イベントアシスト機能」がAI活用の象徴的な事例なのですね。この機能は、どのような課題意識やビジョンから生まれたのでしょうか?

Vicke:TimeTreeではプロダクトビジョンが定義されており、その中には「未来発見価値」を提案していくことも謳われています。共有カレンダーで考えると、ユーザーさんが将来の予定について、より良い選択ができることを可能にするためのものを作る、という流れで生まれた機能です。

 そこで、チームでは「ユーザーさんの意識にはないが必要になるであろう情報を顕在化してあげる」というテーマを掲げ、そのテーマのもと予定に対するToDoを提案する機能を開発することになりました。僕はバックエンドエンジニアとしてチームに関わりました。

 TimeTreeの開発現場では、企画を考える段階からエンジニアが議論に参加することは珍しいことではありません。企画を考えるのが好きな僕は、ずっとそのようなことがやりたいと思っていました。なので、イベントアシスト機能の現場では、エンジニアと企画者の双方の視点から機能を考え、エンジニアと企画者の認識のズレをうまく埋め、チームを一体化させることを意識しつつ、みんなの意見をすり合わせていくためのサポートをするという動きをしていました。

──その後はどのような流れで開発が進んでいったのでしょうか。

Vicke:テーマが決まったのが2024年12月。そこから企画が動き、どういう提案をするかという議論が始まりました。最終的にはToDoを提案する機能に決まりましたが、ToDoではなく情報を提供する形式の方が良いのではという意見もありました。また最初にリリースするカテゴリーやリリース時期についても議論しました。最終的にリリース時期を3月の引っ越しシーズンまでにしようと決まったのは、リリース直前の2月半ばだったと思います。

 したがって開発にかけられた時間は3週間弱。僕はバックエンドエンジニアとして生成AI周りのサービスについて調べたり、どういうAPIを使えば何ができるのかなど、社内ですでにAIを活用していたメンバーにヒアリングしながら、やりたいこととできることを埋めていく作業を同時並行で進めていました。

──リリース後の反響についてはいかがですか。

Vicke:まだリリースしたばかりですが、生成されたToDoについてはユーザーさんが手動で作成されたチェックリストと同程度の割合で使ってもらえています。さらに価値を提供するため、データを元に改善策を考えているところです。

──エンジニアも率先して企画に携わっているのが印象的です。ボトムアップの動きを推進するために、経営側やマネージャーとして意識していることはありますか。

Scott:プロダクトのことを考えて提案してくれたものに対して、CTOとしてはそれをどう実現できるかを常に考えています。開発コストやリソースなどの制約に加え、会社としての優先順位があるので、すべての提案が実現できるわけではありません。そのため、優先順位は会社のビジョンやミッションを基準に決めていくことが多いですね。

Vicke:プロダクトマネージャーはどんなプロダクトを作るかという意思決定の責任を負う役割です。先述したように、元々プロダクトマネージャーとエンジニアチームの間の認識のズレを埋めていくという役割を担っていたので、プロダクトマネージャーに就任以降は、自分の考えをメンバーやチーム外の経営陣に適切に伝えられるよう、意識して会話しています。

──Vickeさんは、プロダクトに貢献していこうという考え方、いわゆる「プロダクト視点」をどのように身に付けていったのでしょう。

Vicke:すべてのエンジニアがプロダクト視点を持つ必要はないと思っています。ですが、プロダクト視点を身につけたいなら、まず実装のことは忘れて、何でもできる前提で「あるべき姿」を考えること。そして、思いついたアイデアを「自分ならどう使うか」と自問する。常にアンテナを張り、ユーザーさんを観察し、想像を広げることが重要です。

 企画によっては、自分がペルソナとずれているケースもあります。そのときは、その身近にいるペルソナを観察したり、必要ならインタビューをして、想像を広げていく。そういうことができるよう、常にアンテナを張っておくことも大切です。

 僕もついついエンジニア脳になり、開発視点で考えてしまうこともあります。難しいことですが、プロダクト開発の本質を置き去りにしないよう、常に意識しています。

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個人の「やってみたい」を組織の力に。全社で取り組むAI駆動開発

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この記事の著者

中村 仁美(ナカムラ ヒトミ)

 大阪府出身。教育大学卒。大学時代は臨床心理学を専攻。大手化学メーカー、日経BP社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランス編集&ライターとして独立。現在はIT、キャリアというテーマを中心に活動中。IT記者会所属。趣味は読書、ドライブ、城探訪(日本の城)。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

ミヨグラフィ(ミヨグラフィ)

フットワークが窒素よりも軽いフリーランスフォトグラファー。ポートレート、取材、イベントなど主に人物撮影をしています。英語・中国語対応可能。趣味は電子工作・3Dプリント・ポールダンス。 Webサイト

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