開発効率とセキュリティを両立させるMCP対応
生成AIの伸展により、さまざまな業務領域でAI活用が進んでいる。GMOペイメントゲートウェイやGMOイプシロンでも同様でAIエージェント経由で決済機能を活用できる仕組みの開発に先駆的に取り組んで来た。駒井氏はその旗振り役でもある。
今年6月、fincode byGMOがAIエージェントと連携可能な決済サービスとしてMCPに対応した。MCPとは2024年11月にAnthropic社から発表されたAIエージェントと外部サービスを連携するためのオープンプロトコルだ。
今回のMCP対応では、次の2つのMCPサーバーを提供している。一つが開発ドキュメント検索のMCPサーバー。「fincodeのリダイレクト型決済を組み込むにはどうしたらいいですか」と入力すると、仕様書やAPIリファレンスを含むfincode byGMOの開発ドキュメントを高速検索し、AIが自然言語で回答してくれる。
これまで開発シーンで何か困ったことが生じると、開発者は自らfincode byGMOのWebサイトにアクセスして、ドキュメントを検索していた。しかしMCPに対応したことで、開発者はAIエージェントに入力するだけで、技術情報を得られるようになる。「効率的に自己解決できるようになり、開発スピードも上がり、開発者の開発負荷も軽減できる」と駒井氏。
もう一つが、リダイレクト型決済URLを作成するMCP。「1,000円の決済URLを作って」と入力すると、AIエージェントがfincode byGMOのAPIを実行し、リダイレクト型決済URLを即座に発行する。
MCP対応がエンジニアにもたらす最大のメリットは、「AIエージェントからfincode byGMOの決済機能を自然言語で操作できるようになること。それにより従来必要だった詳細なAPI仕様の理解やコーディング作業が不要になる点だ。開発コストや学習コスト、管理コストの大幅な削減が期待できる」とfincode byGMOのプロダクトマネージャーを務める中谷氏は語る。中谷氏は、2022年に新卒でGMOイプシロンに入社。元々は営業職だったが、開発やUIデザインの知識があったことから、今のポジションに転身。現在は、プロダクトマネージャーとして営業とエンジニアリングの架け橋的な役割を担っている。
例えば月謝制のサービスを提供している小規模事業者であっても、AIエージェントをハブにして、顧客リスト、電子メール、fincode byGMOを連携させることで、未払いの人だけに支払リンクを埋め込んだメールを送信する仕組みを簡易に実現できるようになるという。「ビジネスのバックオフィス処理と言えば決済や請求はつきもの。fincode byGMOのMCPを使えば、高価で時間のかかるバックオフィスシステム構築をすることなく、エージェントという形で容易にバックオフィスシステムを実現する助けになる。まだリリースして間もないのですが、今後、そのようなユースケースが多数、登場してくると想像しています」(駒井氏)
このようにMCPサーバーでは決済リンクを作成する一方、決済の内容には影響を及ぼさないようにしているという。その理由について駒井氏は「セキュリティやコンプライアンスに関する機密性の高い処理は、プライバシーマーク認証やPCI DSSの取得、ISMS準拠のセキュリティ基準を満たし堅牢性が確保されているfincode byGMOのサーバーサイドで完結させたいと考えたため」と言う。というのもAIエージェントが決済処理までを担うことは、まだ社会に受け入れられていないからだ。「現時点では、実際に決済行為を行うのは人にやってほしいというのが、社会が受容している範囲だと思う」と駒井氏は語る。

