なぜ? MCPサーバーをOSSとして公開
fincode byGMOをMCP対応させたことも決済サービスとして際立つ取り組みだが、それ以上にユニークなのが、GitHubでMCPサーバーをOSSとして公開したこと。エンジニアフレンドリーな思想があるとはいえ、かなり思い切った取り組みだ。なぜ、OSSにしようと思ったのか。
「AI×決済を考えたときに、社会がどこまでAIを信頼し、どのようなユースケースでAIに決済をゆだねるか、状況は刻一刻と変容するだろうと考えた。従って、この時点では、OSSとして提供することでいかようにも変更できるという余地を残しておきたかった」と駒井氏は率直な思いを吐露する。
もう一つの理由が、提供スピードの問題。「今この時点でMCPサーバーを使ってAIエージェントで何か構築しようと考えている人は、我々が開発して提供するのを待つのではなく、OSSを使って必要な部分は自分たちで改変していくDIY精神を持った層ではないかという仮説がありました。そのため、改編する余地があるOSSとして提供し、開発者やAIエージェントをつくる人たちの反応を速やかに見たいと思いました」(駒井氏)
GitHubで公開することについても、意思決定をしたプロダクトマネージャーの中谷氏、駒井氏らは、「特に議論することもなく、OSSとしての公開は最初からごく自然な流れで進んでいったと思う」と振り返る。
自然言語でfincode byGMOの決済機能を実装できるようになるとは言え、本当に簡単にできるのか。駒井氏は「必要なアセットは、Claude DesktopなどのMCPホストとMCPサーバーの基本的な考え方の理解ぐらい」と話す。MCPサーバーを提唱しているAnthropic社の公式ドキュメントを確認することは前提として、あとはZennなどのエンジニア情報共有サイトの記事などを見るだけでも十分、理解できるという。そして一番大事なことは、「とりあえず、触ってみること」と駒井氏は言う。
先述したように、fincode byGMOはメールアドレス一つでテストアカウントが取得できる。あとはClaude DesktopにMCPサーバーを設定し、「1,000円の決済するURLを生成してください」と呼びかけるだけで、クレジットカード決済の仕組みができる体験ができるというのだ。
すでに活用したユーザーからは「自然言語のプロンプトで決済につながるところがいい」「簡単に作れて感動した」など、好評の声が届いているという。またGitHubで公開したことについては、AIエージェントを開発している企業から、「MCPサーバー自体はポピュラーになってきているので、インターネット上では様々な開発者によるMCPサーバーが公開されているが、公式が公開していること自体に価値がある」「公式のお墨付きなので、安心して使える」という声が届いているという。
「私たちのOSSを参考に、AIでやりたいことを実現してほしい」
現在はクレジットカード決済だけに絞っているが、今後、どのような展開を考えているのか。「今のところ明確なロードマップは決まっていません」と駒井氏。今は反響を見ている段階だからだ。「フィードバックが集まってきてから、次の一歩を決めようと思っています」と話す一方で、「例えば、決済ではなく、請求書機能をMCP提供して、支払を延滞している方に特別な請求書を出すみたいな処理にもマッチするかも」と可能性を語る。
これらはfincode byGMOのロードマップだが、駒井氏の頭の中ではfincode byGMO以外のプロダクトのMCP対応という展開も考えうるという。その背景には、「将来的に、AIが決済領域を担当するのは当たり前にしたいという」という駒井氏の思いがあるからだ。
というのも、今はまだAIエージェントを活用したシステム開発は、市民権を得た段階だが、今後は主流になっていくことが予想される。「fincode byGMOをエンジニアフレンドリーという観点に加え、AIエージェントの観点からも使いやすくしていかなければならない。AIネイティブ時代に選ばれる決済サービスにしていくことが重要」と駒井氏。そのための第一歩が今回のMCP対応だという。「ぜひ、自由な発想で触っていただき、感想を寄せてほしい」と駒井氏。
またOSSで公開しているので、その仕組みのシンプルさも見てほしいという。「RESTful API(REST API)が整備されているのであれば、MCPは非常に身近な世界。AIに習熟したエンジニアでなくても、AIエージェントと親和性の高いサービスの提供が可能になる。私たちのOSSを参考に、MCPの世界に触れ、AIエージェントによってやりたいことを実現する。そういうきっかけになればとても嬉しいですね。」(駒井氏)

