「保守性」こそがクリエイティビティ、エンジニアの価値とは?
セッション終盤、尾髙氏はあらためて「いま、エンジニアに何が求められているのか」という問いに立ち返った。バイブコーディングの広がりに象徴されるように、アイデアさえあれば高度な技術を持たずともソフトウェアを形にできる時代が到来している。そうした状況において、エンジニアが介在する価値はどこにあるのか。後進に何を伝えるべきなのか。この問いは、もはや先送りできない段階にある。
そもそも、ビジネスの価値そのものについては、業務エキスパートのほうが高い解像度を持つ場合も多い。バイブコーディングを活用すれば、彼らが直接プロトタイプを量産することも可能だろう。しかしその帰結として選ばれやすいのは、スコープ優先、スピード優先、品質は最低限という判断。構造化されない大量のコードで、いたずらにシステムが肥大することも容易に予測できる。
「だからこそ、これからのエンジニアは、言われた通りに機能を作る『フィーチャーファクトリー』に甘んじることなく、まず業務の「WHY」を問い、WHYに見合ったWHATやHOWを提案しなければならない」。尾髙氏はそう警鐘を鳴らす。
さらに、エンジニアが守るべきクリエイティビティとは何か。尾髙氏の答えは「保守性」と明快だ。拙速に作られたシステムは保守性が低く、やがて大きな問題を巻き起こす。一方で、熟考された構造は変化に強く、長きにわたって事業とシステムの安定性を支えられる。業界各所で問題が顕在化しているからこそ、保守性の高さを中心的な価値に据えることが大切だという。
「WHY」を問い、保守性にすぐれたWHATやHOWを提案する。それができる次世代を育成するには、やはりモデルとナラティブの伝承が欠かせない。尾髙氏は「我々エンジニアが提供する価値が、どのような源泉から生まれているのかを探り、それを後進に伝えていこう」と語り、生成AI時代においてもエンジニアがエンジニアであり続けるための指針を示した。
