夏の暑さも真っ盛りといった8月9日、名古屋市立大学山の畑キャンパス(愛知県名古屋市瑞穂区)で「オープンソースカンファレンス2008 Nagoya」が開催された。
OSC(オープンソースカンファレンス)が名古屋で開催されるのは初めてだが、中京東海地区のオープンソース系コミュニティや勉強会などを中心に400名近くが集まった。午後に行われた「CMS大決戦」と題された2時間のセッションでは、数多いオープンソース系CMS(コンテンツ管理システム)の中から、オープンソースで地域振興を図る島根の「島根県CMS」が「Best CMS in OSC Nagoya 2008」の栄冠に輝いた。
大決戦に参加したのは、10のオープンソース系CMSプロジェクト(別表参照)。日本でも導入事例が多くコミュニティ活動が盛んなCMSから、これからの普及が期待されるものまで、幅広くセレクションされている。大決戦では、まず各プロジェクトがそれぞれショートプレゼンで自らの特徴や利点をアピールし、最後に聴講した参加者がどれか1つを選んで投票するという形で行われた。
CMS | 得票数 | 開発言語 | 関連サイト |
Plone | 0 | Python(ZOPE) | plone.jp |
XOOPS Cube Legacy | 18 | PHP | XOOPS Cube日本サイト |
Joomla! | 7 | PHP | Joomla! じゃぱん |
Geeklog | 14 | PHP | Geeklog Japanese |
MODx | 6 | PHP | MODx Content Management System |
Nucleus | 6 | PHP | Nucleus CMS Japan |
TYPO3 UsersGroup JAPAN | 2 | PHP | TYPO3 UsersGroup JAPAN |
島根CMS | 23 | Ruby on Rails | 島根県CMS |
DotNetNuke | 3 | VB.Net | DotNetNuke.jp |
InkType | 4 | PHP(CodeIgniter) | InkType |
見事1位に輝いた島根CMSは、島根県公式サイトを構築するために作成されたCMSで、Ruby開発者のまつもとゆきひろ氏も在籍するネットワーク応用通信研究所が島根県の委託で2005年に開発し、オープンソースとしては今年2月にGPLで公開されたばかりだ。
自治体のウェブサイトで使用されるため視覚障害者の便宜を図り、オープンソースの擬人化音声対話エージェント「Galatea(ガラテア)」を利用した読み上げ機能を備えている。島根県ウェブサイトで実際に使用されはじめた2006年には、アクセシビリティとクリエイティブを両立したウェブサイトに与えられるアックゼロヨン・アワードで総務大臣賞を受賞している。
「Best CMS in OSC Nagoya 2008」を獲得したことについて、プレゼンを行ったネットワーク応用通信研究所の長井英夫氏は「取れないと思っていたので、たいへん嬉しい。がんばって開発したことが通じたのではないか」と語る。島根県CMSには副賞として、ユーザーと開発者を“つなげる”という意味を込めて、ノリ(デンプン)の化学化合物が贈られた。島根では9月にOSCが開催されることもあり、その前哨戦としても嬉しい結果となった。
写真の長井氏(左端)が手にしているのが副賞の「CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)」(主催者によると「CMS(カルボキシメチル澱粉)」にしたかったが用意できなかったそうだ)。中央のTシャツには、まつもとゆきひろ氏と並ぶ島根のヒーロー「秘密結社 鷹の爪」の蛙男氏のイラストが添えられている。
なお、この結果はあくまでショートプレゼンを観覧して評価であり、各CMSの機能比較などをベースにしたものではないことには留意されたい。限られた時間での総花的なプレゼンが多い中、松江市の花火大会など地域情報もふんだんに盛り込んだ島根県のプレゼン力による勝利ともいえるかもしれない。
10プロジェクトのプレゼンを聞いていると、CMSというプロダクトの性質にもよるのかもしれないが、どうしてもアピールポイントが似通ってしまうようだ。例えば、テンプレートやテーマ(スキン)などによるデザイン変更の手軽さ、プラグインやエクステンションなどによる機能拡張性といった機能はほとんどのCMSがアピールしている。また多言語化・UTF対応や、携帯端末対応といった日本環境へのアレンジもほぼ実現されているし、インストールからサイト立ち上げまでの手軽さを強調したCMSも多かった。
できれば同程度の機能における実装の違いや、逆にそのCMSならではの機能が強調されるとより面白く、また違った投票結果になったかもしれない。相互比較や討論、全体的な質疑応答の時間が取れなかったことが残念だ。各プロジェクトともウェブや書籍などで日本語の情報がかなり公開されているそうなので、気になったCMSをいくつかの自分でインストールして比較してみるのも、夏休みの過ごし方としては一興かもしれない。
【関連サイト】
・オープンソースカンファレンス2008 Nagoya
・島根は鳥取の左側です!
この記事は参考になりましたか?
- この記事の著者
-
CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)
CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です