順調に進化を続けるT-Kernelに海外からの研究・開発参加も
続いて坂村氏は、みずからが会長を務めるT-Engineフォーラムが普及のリーダーシップをとってきた組込みOS「T-Kernel」について、着々と開発が進んでいる状況を紹介した。
「ワンソースで、なおかつ完全オープン、フリーのリアルタイムOSであるT-Kernelは、現在Version 1.02.04が公開中だ。これは前バージョンから仕様変更のないマイナーバージョンアップであり、バグフィックスによる品質向上を主眼として、2008年3月に一般公開されたものだ。同時に、小型組込み機器用リアルタイムOSのμT-Kernelもバージョンアップされ、Version 1.01.00として一般公開されている。またITRONに比べてT-Kernelでは、移植性の向上や高レベルのAPI標準化を実現し、ミドルウェアやアプリケーションの流通性を高めている。この結果、あるターゲットにOSを載せてちゃんと動くかどうかのテストプログラムの存在が重要になってきた。そこで今回T-Engineフォーラムでは、そうしたテストシートもあわせて公開するようにした」
海外からのT-Engineフォーラムへの注目も高まってきており、先だってはフィンランド政府の参加があった。同国の企業や研究機関の技術研究プロジェクトに資金を提供する公的機関であるTekes(フィンランド技術庁)が、自国の企業の競争力向上に向けた支援活動の一環として、T-Kernel開発に参加していくという。
世界中から注目される「オープン化・組込み・ユビキタス」
坂村氏は、世界の話題は「オープン化・組込み・ユビキタス」に集まっており、これはまさにTRONプロジェクトが長年にわたって行ってきたことだと主張する。そうした自負のもとでT-Engineフォーラムもオープン化に貢献するための情報提供を進め、ホームページ上で適合CPUの一覧表を公開したり、さまざまな改修情報もいち早く公開している。
「オープンソースはオープンにするほどユーザーが増えていき、その結果バグフィックスのスピードも加速していく。現在では、なぜオープンソースを使うのかという問いに、『タダだから』と答える人は少なくなり、『安定しているから』を理由に挙げる人が増えてきている。タイ、シンガポール、インド、そしてヨーロッパなどの非英語圏でのドキュメント作成が拡がっている事実も、そうした信頼性向上の何よりの証だろう」
そうしたユーザーの拡大に対して、T-EngineフォーラムではT-Kernelの解説書を会員に配布したり、開発手法のガイドブック発刊なども行っている。
「もっとも大事なのは、“今までのものの完成度を上げる”ことだ。コンピュータそのものはある程度完成を遂げているのだから、無理に新しいことを行うよりも、既存のものを磨き上げて行く方がより品質を上げやすい。また教育という点でも、今までにある知識やノウハウをきちんと伝えることができれば、ゼロから始めるよりもはるかに早く成果が出せる」
