資格認定制度などTRON/T-Kernelにおける“人づくり”に注力
組込み用プラットフォームの今後に向けても、坂村氏は積極的に取り組んでいる。その大きな成果の一つが、T-Engineフォーラムと社団法人トロン協会が主催する「トロン技術者認定試験」だ。この試験は、組込みリアルタイム技術者の技術力を客観的に評価・認定する試みとして発足。2007年12月12日からの「TRONSHOW 2008」で模擬試験が実施され、翌2008年4月に本試験を開始、2009年1月24日には第3回目が予定されている。
「世界各国でTRON/T-Kernel技術者は増えつつあるが、将来プラットフォームが世界規模で拡がっていけば、人手不足が生じるのは確実だ。また、海外のコストの安い国や地域に発注するといった機会も増えてくる。問題はそうなったときに、どうやって相手の腕前を見きわめるかだ。人材育成にしてもオフショア開発にしても、客観的な指標にもとづいて技術力を確実に評価できる仕組みを、今から整備しておかなくてはならない。その具体案が、今回の認定試験だ。このハードルをクリアできれば、日本にも、またTRON/T-Kernelの技術を使って働きたい海外の人にもメリットがある。いわば組込みエンジニアにとっての“TOEFL/TOEIC”として、この制度を作ったと思ってもらいたい。現に私の主催する研究所で仕事を発注する際も、この試験に通っていない相手には出さないようにした。その結果、能力のある技術者に対するインセンティブ付けという効果が出て、本人の士気も品質も非常に上がり、納期もより短縮されるといった成果が得られた。今後もTRON/T-Kernelにおける“人づくり”に注力していきたい」。
マルチプロセッサ対応OSの「MP T-Kernel」も順調に展開中
この他には、マルチプロセッサ対応リアルタイムOSである「MP T-Kernel」も順調に展開を進めている。マイクロプロセッサがマルチコア化を急速に進めていることに加え、組込みシステムでは使用するCPUもさらに多様なものになる。MP T-Kernelは特定のマイクロプロセッサのアーキテクチャに依存しないため、こうした状況に柔軟に対応できる。またNaviEngineやSH7786など異なったマルチコアプロセッサで動作し、AMP(非対称型MP)やSMP(対称型MP)にもそれぞれAMP T-Kernel、SMP T-Kernelとして対応している。さらに、T-Kernelの機能を拡張する『T-Kernel/Standard Extension(SE)』によって、プロセス管理、ファイル管理なども実現した。2009年初旬には、MP T-Kernel CPUリソースを一般に公開する予定だという。
世界で拡がるオープン化に日本から打って出る気概を持とう
「オープンアーキテクチャへの指向は、世界的規模で加速している。不況と言われているが、そんなものは歴史の上で繰り返し起こっているし、大きな視点で見ると一貫して成長は続いている。停滞している時にこそ、イノベーティブな者がその状況を突破していくものだ。今日ご紹介した例を見てもわかるように、日本の技術力は高い。そう考えれば今は、ここから世界に出ていくんだという気持ちで眼を開くよい機会だ。ぜひ技術者の皆さんは頑張ってほしい」と坂村氏はエールを送り、組込みプラットフォームのオピニオンリーダーとしての気概を示した。
