はじめに
前回は、ASP.NET MVCアプリケーションによる実用的なアプリケーションの便利な機能を紹介しました。今回はメジャーな開発パターンであるリポジトリパターンについて概要とメリットを紹介し、実際にリポジトリパターンを利用したサンプルアプリケーションの開発を行います。現在Web上で公開されているASP.NET MVCのサンプルアプリケーションのほとんどはリポジトリパターンを利用して作られているので、本稿を読んでリポジトリパターンをマスターしてください。
必要な環境
次の環境が必要です。
- Visual Studio 2008
- Visual Studio 2008 SP1
- ASP.NET MVC RTW版
Visual Studio 2008(以下、VS2008)のインストールは、『Visual Studio 2008入門 第1回』を参考に行ってください。
VS2008 SP1のインストールは『簡単なデータ編集はお任せ! ASP.NET Dynamic Dataアプリケーション』を参考に行ってください。
ASP.NET MVC RTW(Release To Web)は、Microsoftダウンロードセンターから入手できます。インストールはウィザードに従って進めるだけです。
今回触れる部分
今回触れるのは、以下の部分です。
- リポジトリパターンの理解
- リポジトリパターンを利用したアプリケーション構築
- リポジトリパターンにおける単体テスト
ASP.NET MVCそのものについては過去の内容も併せて参照してください。
Repository(リポジトリ)パターンとは?
前回までのサンプルではすべてControllerの中に処理を記述していました。確かにControllerもクラスなので単体テストを行うことはできましたが、Controllerクラス内で直接EDMにアクセスを行った場合、テストを行うのも煩雑になっていました。ASP.NET MVCのウリの1つテストの優位性をより際立たせるために登場するのがRepositoryパターンです。
リポジトリパターンを使った場合のアドバンテージ
前述した内容を掘り下げてみます。今までのサンプルではアプリケーション(Controller)から直接EDMに接続し、データのやり取りを行っていました(図1)。この場合、ActionResultなどからViewDataを取りだしてテストを行うのと変わりなかったため、テストコードも煩雑に、そして分かりづらくなっていました。では、リポジトリパターンを利用した場合のアドバンテージとは何でしょうか? リポジトリパターンの紹介もしつつ、アドバンテージについても触れていきます。
1. Controllerとデータアクセスロジックの分離
リポジトリパターンはアプリケーション(Controller)からデータアクセスロジックの部分だけを抜き取ったリポジトリインターフェイスを実装したリポジトリクラスに接続します。こうすることで、アプリケーション側はEDMやDataSetなどのデータプロバイダを意識することなくデータのやり取りを実現できます(図2)。
これを突き詰めると、Controllerからデータアクセスのロジックを完璧に分離できるので、Controller上では要求に対して返すオブジェクトのテストを、リポジトリクラスでは、データアクセスのロジックだけを単体テストすることもできます。関心の分離によりアプリケーションもスッキリするのは最大の魅力でもあります。
2. モックテストを簡単に実現
インターフェイスを一枚被せることで、単体テストの容易さも実現できます。アプリケーションプロジェクトでは、インターフェイスを実装したクラスを作成します。テストプロジェクトでは、インターフェイスを実装したモックリポジトリクラス(擬似クラス)を作成することで、モックデータを用意し、DBに対するデータアクセスを行わせずに、モックデータへとアクセスさせることができます。
これによりDBに対するデータアクセスメソッドをテストする場合にモックデータで指定したデータが返るので、DBにテストレコードが追加、編集、削除などが行われることなく安全にテストができます。