HTML5の今後を占う上でのポイント
このように、Yahoo! JAPANの新たな取り組みの中で重要な位置を占めているHTML5だが、是井氏はなおHTML5にはいくつかの点で課題があると指摘する。
「W3Cの仕様策定作業のスピード感には、正直言って不満がある。標準仕様がなかなか固まらないと、どうしてもベンダー独自の実装が増えてくるが、これも標準化という観点では問題をはらんでいる。またセキュリティ面でも、HTML5はどうしてもクライアント側の処理が増えるため、懸念が拭いきれない。さらには、これまでのWeb開発の中で培われてきたナレッジやリソースを、どの程度HTML5に流用できるか。これも難しい課題だ」
こうした課題が解決されることを期待しつつ、今後もYahoo! JAPANではユーザーに価値を届けるための手段の1つとして、HTML5への取り組みを続けていくという。そこで重要になってくるポイントとして、是井氏は4点を挙げる。
1つ目は「スマートフォンやタブレット以外のデバイス」、例えばテレビやゲーム機など、幅広い種類のデバイスへHTML5の適用が広がりつつある「デバイス種別を超えた標準化」の動き。
2つ目が「パフォーマンスの向上」。スマートフォンのユーザーが爆発的に増え、回線の帯域が圧迫されてきている中、パフォーマンス向上の取り組みはこれまでになく重要性を増している。
そして3つ目が「開発フレームワーク」だ。HTML5による開発のためのフレームワークを整備することで、実装のスピードが上がるだけでなく、何かあったときに確実にロールバックできるため開発リスクが大幅に低減する。
そして最後が「ネイティブアプリとWebアプリの棲み分け」。ネイティブアプリとWebアプリを併用したハイブリッド構成にするのか、それともWebアプリのみに傾注するのか。このどちらの方針を選択するかは、サービスの性格や戦略によって異なってくるが、Yahoo! JAPANでは当面は前者の戦略をとると述べた上で、是井氏は次のようにセッションを結んだ。
「先ほども述べた通り、我々は適材適所でネイティブアプリとWebアプリを使い分けていく。玉虫色でつまらない戦略のように聞こえるかもしれないが、とはいえ我々はやはりWeb企業なので、ある程度はWebアプリの方に重点を置いていきたいと考えている」(是井氏)